求めるもの
「左衛はずっと、どうやったら力が手に入るかって探してた。悪いことに使うとかじゃなくて、ただその方法を知りたがってるの」
超能力では俺が止められないと解ったからか、今度は説得が始まった。まあ、車の中でも聞いてはいたが。
だから俺は、車では聞かなかった質問を投げかけた。
「悪用しないにしても、あんたらみたいな超能力者を生み出す方法に問題があるだろ?」
「問題なんてない。あたしや永愛は親に捨てられたし、亮は借金を返すのに、自分で引き受けたから……逆に、左衛に拾って貰った今の方が幸せよ」
キッパリとそう答えた明珠の目に、嘘はない。本気でそう思ってることが解るし、明珠にとって左衛が絶対の存在だってことも解る。
(俺にとっての義父さんが、そうだったからな)
それに調べられるのが俺だったから、さっきまでは話を受けても良いかって気になっていた――ただ、今は事情が変わった。
「……ゴメンな。椿が嫌だって言うなら、俺は引き受けられない」
「椿?」
「あ、えっと、決めたのは俺だから」
俺が答えた途端、椿を睨みつけた明珠を慌てて止める。って、おい、コラ、睨み返すな椿。
「あんたも、この世の中が面倒だって言ってたじゃない。何で、左衛の邪魔をするの?」
「何で、はこっちの台詞だ。ここを離れる時に言っただろう。『興味深いものが見つかったから、やめる』と」
睨んだまま問い詰める明珠に、しれっと椿が言い返す。
……この場合の『興味深いもの』って言うのは、俺なんだろうな。世間を面倒って思う幼児もすごいが、俺との出会いは相当、椿に大きな影響を与えたみたいだ。
「彼女がこちらにくれば、やめる必要はないだろう?」
「お前とこいつを、共有する気はない」
そう思っていた俺の耳に、安曇の声が届く。そして、キッパリと椿に言い返されたのにクスクスと笑う声も。
「じゃあ、椿だけに研究をさせるなら首を縦に振るのかい?」
「そもそも、前提が違う。俺がしたいのは、こいつの研究じゃない。知りたいのも、データじゃない」
「……目に見えない心が欲しいって? むしろ、僕がそれを欲していないと思うのかい?」
笑いながら尋ねてくる安曇が、優しく明珠の頭を撫でる。
……恋愛なのか、保護者愛なのかは解らないけれど。
その仕種と、明珠の表情からは確かに安曇の『愛情』が感じられて――それは、椿にも伝わったんだろう。珍しく一瞬、躊躇した後、口を開いた。
「比較したのは、悪かった……だが俺は、お前みたいにはなれない」
「……椿、随分と馬鹿でお人好しになったんだね」
哀れむような言葉とは裏腹に、安曇の笑みが深まる。
「今の君じゃあ、世界は変えられない。彼女は欲しいけど、今回みたいに施設を壊されるのも面倒だ」
「……左衛」
「ただ、君達の子供に魔法が使えるかは気になるな……ねぇ、椿? 彼女は諦めるから、子供が生まれたら僕達の子供との交際を考えてくれるかい?」
「はっ!?」
「いいぞ」
「椿、何勝手に請け負ってんだ!」
と言うか、そもそも何で俺が椿の子供を生む前提なんだ。
さらっと告白(プロポーズ?)された明珠は、目キラキラさせているけど! 俺まで巻き込むんじゃない!
「話は、終わりましたか?」
「……っ!?」
そんな俺達にかけられた、聞き覚えのない声。
驚いて振り向くと黒髪の、中学生くらいの女の子が、冷ややかにこちらを――いや、俺を睨みつけていた。




