理由と決意2
地球に飛ばされてきたテルス人は、魔法や己の才覚でこの地球で財を成した。
そして、同様に飛ばされてきた仲間を保護しつつ(その頃はテルスで戦があり、魔法の衝突で複数回、転移されてきたらしい)元の世界に戻る方法を模索した。
……かくして、当時の科学を駆使してテルスに戻った者もいたが。
地球に残ることを選んだ者もいて、それが安曇のご先祖様なんだと言う。
「それにしても……まさか地球で、魔力について研究してたなんてな」
元々のきっかけは、地球に残る理由の一つ――地球人と恋に落ち、結ばれて子供が生まれたことだった。
テルス人と地球人との子供には、魔力が全く引き継がれない。
財産や知識は得ていたので、魔力がなくても十分、暮らすことは出来る。だが魔力を子孫に残したい、引き継がせたいと思い、彼らは地球人の協力者を引き込みつつ、研究を始めたそうだ。
……結果、遺伝子レベルの問題で地球人との間ではどうしても魔力が相殺されると解り。
その研究の中で、黒城の父親のようにテルスから魔力を奪おうとする者、そして安曇のように別の存在――超能力者を生み出す者が、現れたらしいが。
「そりゃあ、俺みたいなのがいれば興味持つよな」
ついつい他人事のように言ってしまうが、本当にそう思う。
転生というイレギュラーの為、俺は遺伝子的には地球人だが生まれつき魔力を持っている。それ故、魔力が子供に引き継がれる可能性は十分あるそうだ。
「黒城達みたいに『世界を我が手に!』って感じじゃないし。まあ、実感はまるでないけど……いつかは、俺も子供が出来るかもしれねぇし」
男を恋愛対象として見られない限り、可能性は限りなく低いが――それでも、ゼロじゃない。明珠の話を聞いて、そう思ったのは事実だ。
「……椿も、戻って来いって言われたんだろう?」
だが、俺が気になったのは椿のことで。
(今は、ポモナに贔屓されてる俺がいるから、目立たないが)
十分、常人離れしてる椿が今の環境より、安曇達といた方が好き勝手やっても浮かずに、自由にやっていけるって言うことは解る。
……安曇達については『椿の知り合い』くらいの認識しかないが。
もし椿が、ここに戻るって言うんなら。
「ここでなら、お前ももっと俺の『力』について色々、調べられるよな? だったら、俺……」
「……冗談じゃない」
「椿?」
そう思っての提案は、けれど椿の低い声と据わった目によって遮られた。