気持ち、交差2
「ポモナ……」
「とは言え、話し合う場所は選んだ方が良いですけどね。椿さんが人質にでもなれば、結局、アンリさんが危なくなりますから」
「……解っている」
見た目は幼女だが、ポモナの言い分はどこまでも正しかった。
流石は女神と言うべきか。顔は笑ってるが、妙に迫力があった――俺が逆らえず、椿が素直に頷いたくらいに。
※
(まあ、確かに前にも椿は捕まってるからな)
俺達にしっかり釘を刺して、ポモナが戻った後――何となくだがいつもみたいに話せず、黙ったまま俺達は家に帰った。パジャマに着替え、ベッドに潜り込んだところで俺はため息をついた。
(ポモナの言うことは解るし、椿も心配してくれているのは解る)
ただ、解るのと納得出来るのは違うんだよな。
結局、モヤモヤした気持ちのまま、俺は目を覚ました。
そしてそのまま、着替えて朝飯を食べ――いつものように家を出て、しばらく歩いたところで不意に声をかけられた。
「おっはよ、杏里ちゃん」
名前を呼ばれはしたが、声の主は俺の知らない相手だった。
年の頃は、現世の俺と同じくらいだろうか。大きな目と人懐っこい笑顔。柔らかく波打つ黒髪の片方をシュシュで結い、白いブラウスを着ているがネクタイやリボンはつけていない。
(……って言うか、あの校章)
上着は着ていないが、ブラウスのポケットに刺繍されているのは、安曇のブレザーと同じ校章だ。となると、もしかして安曇の関係者か?
「あったりー。あ、あたしは明珠。よろしくねー?」
考えていたことが顔に出たのか、あるいは骸骨野郎と同じ超能力者なのか。
弾んだ声でそう言ったかと思うと、初対面の女の子――明珠は、明るい口調で自己紹介をしてきた。何て言うか、ますます超能力者疑惑(同じ軽いノリって意味で)が深まる。
「杏里ちゃんを、迎えに来たの。大人しく、ついて来てくれる?」
にこにこ、にこにこ。
笑いながらそう言った明珠の周りで、彼女の能力を示すようにふわり、と風が巻き起こり、その黒髪を揺らす。
(水、じゃないのか……炎に風に水、超能力者は最低三人か)
前の事件を思い出しつつ、俺は明珠に頷いて見せた。
……うん、相手からご指名されたら断れないからな。




