勝っても負けても1
「アンリさーんっ、何、また無茶なことしてるんですかーっ!?」
召喚した途端、涙目と握り拳で訴えるポモナにギョッとする。
あぁ、でも、確かに怪我ではないけど火傷も十分、心配かけるよな。
「えっと……悪かった」
「謝って済めば、警察と創造神はいりませんよ!」
「……えぇ?」
「あぁっ、もう玉のお肌に火傷とか……治します! 元のツルピカお肌にしますからねっ」
仮にも神を、警察と同列に扱って良いのかと思ったけど。そんな俺の疑問を余所に、ポモナはあっという間に俺の火傷を治してくれた。
「あと、この方からお話を伺いましょうか……一時的に、超能力使えなくしますね」
そしてポモナが、その指で骸骨野郎の額をつつくと――俺達が見ている前で、骸骨野郎が目を覚ました。どうやらチョンとつついたのには、封印と気つけの意味があるらしい。
「ん……んっ?」
格好には少々不似合いな丸い目が、俺を見て更に真ん丸く見開かれる。
「え、ちょっ、女!? しかも無茶苦茶、上玉じゃん……あの野郎、知ってて黙ってやがったな!」
「黙れ」
一気にまくし立てた相手の頭に、椿は容赦なく手刀を叩き込んだ。うん、まあ、煩いから仕方ないか。
「痛っ! 暴力反対っ!!」
そして頭を押さえた骸骨野郎は、叩かれても煩かった。
「じゃあ、さっさと吐いて貰おうか……あんたも、早く帰りたいだろう?」
人気のないビル裏とは言え、いつまでも長居するつもりはない。そう思って言うと、骸骨野郎は丸い目を更に真ん丸くして俺を見てきた。
「帰してくれんのか?」
「あぁ、超能力については時間を置いて解除させて貰うけどな」
隣にいるポモナの頭を撫でながら、俺は骸骨野郎に答えた。
単なる高校生の俺らには当然、隠れ家なんてない。強いて言えば椿の神社の敷地内だけど、話さえ聞ければそれで良いしな。
「望めば、ずっと封印することも出来ますけど……骸骨野郎さんには、必要ないみたいですしね?」
「ポモナ?」
喚く骸骨野郎をスルーし、意味ありげな言葉に目をやるがポモナはにっこり笑うだけだった。そう言えば、心が読めるんだったよな。そうなると、俺が聞いちゃプライバシーの侵害か。
……とは言え、そうなると骸骨野郎の名前も解るだろうに。あえて俺の心の声の通り呼んでいる辺り、ポモナもなかなか良い性格してるよな。