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リバース!  作者: 渡里あずま
第二部
49/73

ハプニング××2

(何なんだお前ら、椿みたいに心を読んで会話してるのか?)


 それでも、俺の口調には軽く目を見張っていたが――すぐに笑顔に戻った辺り、イケメンの紳士力なんだろうか?

 とにかく、そんな訳で俺は転校生の校内案内に同行していた。

 そのまま、晴香さんと合流する為に弁当は持ってきているが――転校生こと安曇の手には、パンや弁当の類はない。

 このまま放り出すよりは一緒に食堂に行くか、晴香さんに連絡して同好会の教室に連れて行った方がいいんじゃないだろうか?

 そんなことを考えていたら、椿に無言で睨みつけられた。


(だからお前、何でそんなに鋭いんだよ。お前がエスパーか)


 と言うか、一緒に食うの嫌なのか? 確かに安曇は親しげだけど、椿はずっと仏頂面だよな――どうも、この二人の関係性がよく解らない。

 そんなことを考えていたせいで、俺は一瞬、反応に遅れた。

 ……不意に安曇に腕を引っ張られ、俺はそのまま引き寄せられた。


「陸谷さんを人質に取れば、言うこと聞いて貰えるかな?」

「左衛!」

「えっ……うわっ!?」


 あまり上手くない冗談に、けれど椿は笑わず逆に鋭い声を上げ――そのまま反対側の腕を引っ張られ、俺は今度は椿に引き寄せられた。

 ……だが、安曇より強い力で引き寄せられたせいで体がふらついてしまった。

 更に間の悪いことに、上げた顔のすぐ近くに椿の顔があり――慌てたが、止まることも出来ずに俺は椿とぶつかった。


「「…………」」


 正確には、俺の『唇』が椿の『唇』に一瞬、けれど確かにぶつかってしまったんだ。

 ……男、しかもかつての自分と同じ顔とのキスに、目の前が真っ暗になる。

 とは言え、ここは学校で。周りには、他の生徒達がいる。

 だから、俺は何とか気力を振り絞り――倒れそうになるのを堪え、片手を上げて椿に言った。


「悪い、奪っちまった!」

「「「…………」」」


 椿から、そして居合わせた面々から返されたのは重い沈黙だった――えっ、やっぱり俺なんかが(多分だが)椿のファーストキス奪うとか、許されないってか?


「……まあ、想定内だな」


 そんな沈黙を破ったのは、ため息共々吐き出された椿の言葉で。


「覚えておけよ、左衛」

「えっ、むしろ貸しじゃないの?」

「思い上がるな」


 俺の肩を引き寄せ、安曇を残して歩き出した椿を合図に、周りの生徒達も我に返ったみたいだった――何か、悲鳴が聞こえたが気のせいってことにしておこう、うん。

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