ヒーローになりたい
「あの、宝生君……好きです! わたしとつき合っ」
「断る」
放課後の、誰もいない教室で。
告白をぶった切られ、女の子がペコリと頭を下げて走り去る。幸い、ゴミ捨てから戻って遭遇し、ドアに張りついていた俺には気づかなかったみたいだ。
(本当にモテるよな、椿……ってか俺、魔法が使えりゃああだったのか?)
「何をボサッとしてる、帰るぞ」
凹む俺にそう言うと、慌てる俺を余所に椿はさっさと歩き出した。
あれから一週間経ったが、いっそ拍子抜けするくらい平和だった。黒城が転校し、それが椿のせいだって噂が流れたが(実際は俺のせいなんだが)しばらくしたら消えた。
「いっそ、定着した方が雑魚や女避けに良かったんだがな」
「何だ、その黒い台詞!?」
いつもみたいに一緒に帰りながら、俺は思わずツッコミを入れた。
全く、相変わらず容赦のない――そこまで考えて、俺はふと引っかかった。
「前にお前、俺のことヒーローだって言ったけど……それなら、お前もそうだろ?」
「……俺が?」
聞き返されたのに、俺は頷いた。救いを与えてくれるのがヒーローなら、宮藤とか黒城の時の椿だって十分、当てはまると思う。
そう言った俺に、何故か眉をしかめながら椿が口を開く。
「嫌味か? 俺にはお前みたいに、そんな恥ずかしいことを真顔では言えんぞ」
「って、何でそんな喧嘩腰!?」
「……甘んじて受けろ」
「理不尽だっ」
照れてるにしても、ツンがすぎるぞ椿!
訴えた俺にため息をつくと、不意に椿が俺の顔を覗き込むようにして目線を合わせてきた。
「ヒーローを守りたいのなら……対等になりたいなら、俺もヒーローになるしかなかろう?」
……前言撤回しろとしか思えない、恥ずかしいことを言う椿に。
不覚にも俺は見惚れてしまい――次いで、そんな自分が信じられなくて頭を抱えることになる。
第一部完結。第二部に続きます。ここまで読んで頂き、ありがとうございました!




