終わり、始まり2
女の子の説明によると、こうだ。
俺の心を読める彼女は、この世界――テルスの神(女の子だから女神か?)で。時折、さっきみたいに降臨してるそうだ。
ただ、今回は運悪く暴走馬車の前に出現してしまい、庇った俺が死んでしまったらしい。
「冷静ですね、アンリさん」
「……まあ、死にかけたことは何度かあったから?」
「ですよね……ただ、あなたは今回も死ぬ運命じゃなかったんです。あたしが介入したから……神なんで死ぬことはないですし、魔法で助けて貰えると思っていたから」
そりゃあ、普通はそうだ。さっきは急展開過ぎて、周りも反応出来なかったみたいだけどな。
テルスでは、大小の差はあるが誰でも魔法が使える――俺以外は。
生まれつき魔力がなくて、親に捨てられた俺以外は。
「ごめんなさい、アンリさん」
「気にしなくていいって……神様なら解るだろ? 義父さんに助けられて、何とかこの年まで生きてられたし……ギルドの仕事も終わった後だったから、まあ、うん」
殺す気満々で森に捨てられた俺を、ギルドマスターだった義父さんが拾ってくれた。
料理や掃除、子守や洗濯くらいしか役に立たない俺を、本当の息子みたいに可愛がってくれた義父さんだから、俺の死を知ったら悲しむだろうけど。
だからってこの子まで悲しませて良い理由にはならないから、俺はまた泣き出しそうになった女の子の金色の頭を撫でた。
そんな俺の前で、不意に女の子が勢い良く顔を上げる。
そしてグッと拳を握ると、女の子は口を開いた。
「転生しましょう、アンリさん!」
「…………は?」
女の子の話によると、こうだ。
死んだ人間は、生き返れない。それは、世界の絶対の理らしい。
ただし、彼女はテルスの他にもう一つ、別の世界を管理していて。そこに、俺を生まれ変わらせることは出来るらしい。
「その世界は、テルスとは違って皆、魔法は使えません。代わりに、科学が発達している世界です」
「かがく?」
「そうですね……鉄の塊が空を飛んだり、たくさんの人を運んだり出来るんです」
「へっ!?」
俺は、思わず間の抜けた声を上げた。いや、だってどうやって魔法が使えないのに、物が浮いたり動いたりするんだよ?
そんな俺に、女の子がニコニコ笑いながら言葉を続ける。
「でも、アンリさんは魔法が使えるようにしますね」