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リバース!  作者: 渡里あずま
第一部
22/73

きっかけ1

 昼休みはのんびり、おふくろの弁当と晴香さんのおかずを食べて。

午後からの授業は、体育だった。しかも、男女揃ってマラソンって――初っ端からキツいな、おい。

 そう思ったのは俺だけじゃないらしく、生徒からはブーイングが起こる。まあ、でも、俺らみたいなガキが文句を言っても教師には通用しない。

 だから、邪魔にならないように髪を首の後ろで束ね、俺は他の同級生達と一緒にグラウンドを走り出したんだが……。


「きゃっ!」


 いきなり聞こえた悲鳴に、俺はギョッとして顔を上げた。

 見ると、俺の前を(周遅れで)走っていた娘が、派手に転んでいた。どれくらい派手かって言うと、顔面からグラウンドに突っ込んだくらいだ。

 放っておけなくて、俺は転んだ同級生に肩を貸した。

 それから、保健室に連れていくと教師に言って、二人でその場を後にした。


「失礼しますー……って、いないのか」


 ノックをしたが返事はなく、保健室のドアを開けても養護教諭はいなかった。


(まあ、鍵かかってなかっただけいいか)


 そう結論づけると、俺は同級生を椅子に座らせて薬や包帯の入っている棚を物色した。当然、こちらは鍵がかかっていたがその辺りは魔法で何とかなる。


「ちょっと、ごめん」


 一応、断ってジャージの裾を捲くった。

 それから、擦りむいている膝を手当てした後、顔も擦りむいてないかと思って顔を上げた。

 ……そして、ジッと見つめられていることに気がついて、軽く目を見張った。


「ご、ごめんなさい! 何だか、夢みたいでっ」

「……えっと」

「あっ、陸谷さんが薄情とか、そう言う意味じゃなくて……いや、あの、本当にごめんなさいっ」

「落ち着いて……ってか、謝らなくていい」


 目の前で必死に言い募る同級生に、俺はそれだけ言った。そんな俺に目を丸くしたかと思うと、同級生はふにゃっと笑った。

 ツインテールに、大きな目。

 クルクルと言うか、コロコロ変わる表情――髪型が耳に見えるせいもあるかもだけど、何か犬みたいな娘だな。


「あの、あたし、黒城真央くろきまおって言います」


 ほのぼのした気持ちになっていると、同級生――黒城さんはそう名乗って、ペコリと頭を下げた。

 ……名前まで何か、犬みたいだって思ったのは内緒な?

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