魔法vs魔法2
俺ん家から徒歩十分くらいのとこに椿の家があり、更に十分くらい歩くと学校がある。
そんな訳で俺を乗せてまもなく、とっても静かに(運転手さんの技術の賜物だな)車は宝生神社の前に停まったんだが。
「あ、本題は部室でね」
そう言って、制服のスカートを翻した晴香さんに俺は首を傾げた。
本題って、ニュースの話……だよな? 運転手さんがいたら出来ないのか? 不思議に思ったが、とにかく学校に着くまでは、と思って口を閉じる。
しばらく経つと、晴香さんが椿を連れてやって来た。気を使ってくれたのか……下心か、とにかく俺の隣に晴香さんが座り、逆の窓側が椿になった。
そして、七時五十分に学校に着いた俺達はそれぞれの教室にではなく、真っ直に昨日、晴香さんが手に入れた部室へと向かい。中に入り、ドアを閉めたところで、晴香さんが振り返って口を開いた。
「今朝のニュース、あの焼死体って……魔法で、焼かれたんじゃないかな?」
「えっ?」
「可能性は高い。全身、黒焦げになるくらいの高温の炎。しかも、周りに燃え広がっていないからな」
驚いて声を上げた俺の代わりに、椿が答えた。黒焦げって……確かに、火事にでもあったならともかく、普通ありえないよな。
「炎なら、水の魔法で対抗すれば良いのかな?」
「高温の場合、水をかけても消えないからな……だが、風系も逆効果か」
そんな俺を余所に、晴香さんと椿が対抗策を話し合っている。何だ、この二人、いつの間に仲良くなったんだ?
(あ、でも)
そこで俺は、昨日の二人のやり取りを思い出した――その後の、椿の衝撃の告白のせいですっかり頭から吹っ飛んでたけど。
(昨日も、ちゃんと話してたか)
確か、晴香さんも相当な高性能だ。俺の魔法にも興味があるみたいだし、その辺りでも話が合うのかもしれない。
(俺似のくせにリア充とか、ムカつくけど)
だけど、椿と晴香さんが並んでいるのは本当にお似合いで。
……何て言うか、こう、見てたいなって思ったんだ。
たとえば子供がお伽話の本を読むような、そんな近くて遠い距離感で。
「……今夜から、また夜回り再開しようぜ」
ただ、今回の事件は凶悪すぎる。だからさっさと解決し、いつもの細々とした犯罪に戻す為に俺はそう提案した。
「そうだな」
「僕は、ついて行けないけど……気合入れて、お弁当作ってきたから! 二人とも、頑張ってねっ」
そして二人が頷き、また昼休みに集まることを約束して俺達はそれぞれの教室へと戻っていった。
※
……俺は、知らなかった。
「魔法が使えるだけじゃなく、恨みが半端じゃないわよね? 簡単にはやられないわよね?」
そんな俺達が映っているパソコンを眺めながら、呟いている女がいたことを。
「今度は、あなたを捕まえられるかしら?」
彼女の指が液晶に映る、俺の顔を撫でていたことを。