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幕間 ~?~
目を閉じると、おれの瞼にはあの夜のことが浮かぶ。
一発、殴ったら吹っ飛びそうな小さな体。
そんなガキがビニール傘を奮った途端、生き物のようにおれに襲いかかった風の渦が。
「力が欲しい? あの子と同じ『力』が欲しい?」
そう言うと、知らない女は真っ赤な唇を三日月みたいに動かし、おれにカプセルを一錠差し出した。
※
「炎の牙」
「うっ……うわぁあっ!」
カプセルの名前は『マジックシード』。これを飲めば、魔法が使えるようになるらしい。
現に今、おれの声――呪文に応えて、風ならぬ炎の渦が目の前の男を襲う。
薄汚れたコートを燃やす炎を消そうとしているのか、ホームレスの男は悲鳴を上げながら、ゴロゴロと地面を転がった。
滑稽だと思う一方で、昔の自分を見ているようで――反吐が出る。
(でも、今のおれは違う)
今のおれはMSのおかげでアイツと同じ、いや、アイツ以上の『力』を手に入れたんだから。
そう思い、おれは昔の情けない自分を思い出させる男を焼き尽くす為に、手を伸ばした。