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リバース!  作者: 渡里あずま
第一部
16/73

魔法のコトバ2

 そんな俺に、キッパリと椿が答えた。


「ならば、使い続ければいつかは魔力切れしてあの文様も消えるな……反撃したくないんなら、相手を消耗させろ。それなら、お前にも出来るだろう?」


 ……確かに、それはその通りだ。

 だから椿に頷くと、俺は蔦の内側から外側へ風の刃を振るった。それから同じ要領で、椿の蔦も切り裂いてやった。

 いきなり拘束を解いた俺達に、晴香さんはまた首を傾げた。そして、額の文様をまた光らせる。


「やっぱり、僕から離れるんだ」

「いや、縛られて一緒にいるのは問題ありますから!」


 言いながら、俺は持っていたビニール傘を離した。いくら魔法が使えるとは言え、丸腰の女の子相手に武器は不公平だ。

(魔法は、俺も使えるんだし)


「緑の呪縛!」


 再び、巻きついてこようとした蔦を今度は魔法の炎で焼き尽くす。ちなみに、俺の魔力なので近くで使っても焼かれはしない。

 それが癪に障ったのか、晴香さんは数回、同じ魔法をくり出してきた。その度、風や炎で振り払う俺に、無表情ながらもムキになったのか蔦の動きが変わる。


「緑の鞭っ」

「うぉっ!?」


 呪文通り、鞭のように蔦がしなり、俺の足元を狙う。

 置いていくのも何なので、ビニール傘を手に取り、俺は椿へと放り投げた。そして地面を蹴り、近くの広場を目指して走り出す!

(夜回りが役に立ったぜ)

 幸い、この辺りの地図は頭に入っている。縛られるだけならまだしも、攻撃されるなら路地裏より広い場所の方が良い。それに今更ではあるが、この魔法合戦を誰かに見られる訳にもいかない。

(えっと、あとは……)

 ポモナを呼ぶ気はない。もしもの時(対魔法って仮定はなかったが)の為の力と知識を、俺は貰っているからだ。

 だから、頭の中でこういう時の対処法を探しながら、俺は目的地に駆け込んだ。晴香さんと椿は、ちゃんとついて来てる。


(よし!)


 そして俺はクルリと振り返り、咄嗟に止まれなかった晴香さんの肩に手を置いた。


「……っ!?」


 そんな俺と、晴香さんを中心に渦巻く闇。

 無表情だった顔に、戸惑いの――そして、驚きの表情が浮かんだ。


 今、俺がくり出したのは『闇のうず』って魔法だ。

 ブラックホールみたいに光すらって訳じゃないが、魔力は確実に吸い込む。縋るように見つめられたのは、宿っていた魔力が消えていくのを感じたからだろう。

 その目を真っ直に見返して、俺は言った。


「晴香さん。俺は物じゃないし、Mじゃないから縛られたり叩かれたりしても、心はあんたのものにならねぇよ」

「嘘をつくな」

「空気を壊すな、椿」


 全く、あいつはどれだけ俺をどMだと思ってるんだ。

 直ぐ様、ツッコミを入れてきた椿に言い返し、俺は言葉を続けた。


「俺達、やり直さないか?」

「……えっ?」

「しっかり腹割って話さないと、お互いのことなんて解らねぇよ。だから、最初から……もっと、心が近づくように」


 ……そう、心は力ずくじゃ手に入らない。

 親に疎まれ、捨てられた俺は心を凍らせてしまってた。そんな俺の心を溶かしてくれたのは義父さんの言葉だった。


「お前といたら楽しそうだ……なぁ、俺と一緒に暮らさないか?」


 魔法じゃなくて誰でも、この世界でも使える『力』だったんだ。



「本当、に?」

「あぁ」


 否定じゃなくなった言葉に俺は渦巻く闇の中、長い髪を揺らしながら晴香さんに頷いて見せた。

 そんな俺の見ている前で、晴香さんの額から緑の文様が消える。

 それから目を閉じ、その場に崩れ落ちた晴香さんの体を受け止めて、俺は闇の魔法を解除した。

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