水曜日の水溶液
水曜日に水溶液を持ってやってくる。
「おりゃあ」
と、オレンジ色のウサギのカチューシャをしたバニーガールが自転車で住宅街の坂を下っていった。
自転車のカゴの代わりにバケツが取り付けられていた。
「今日も水溶日!やってやるぜ!」
と、高校へ続く坂を上った。
「誰か来た」と高校生の一人が窓からバニーガールを見下ろした。
バニーガールは自転車のバケツから透明な液の入ったバケツを取り出すと学校の中へ入っていった。
ドンドン、ガラッとバニーガールは教室へ入った。
「水溶性の若者め!これを食らえ!」
と、生徒の一人にバケツの液をかけた。すると溶けながら魚へ変わった。
「あの、水溶性じゃなくて、融解だと思います。」とある男子がつっこんだ。
「それを言うなら融解の誘拐でしょ。」
とバニーガールは言い、魚をバケツに入れ、水道水を入れた。
「私、バニーガールはウラックよ、よろしく」
と、急に女子の手を握りあいさつをした。
「あ、はじめて」
女子ははずかしそうに言った。手に生臭いにおいがうつった。
「あなた魚にする価値ないわ」とウラックは高校から去っていった。
「ここはどこ?」
と魚になった高校生がウラックに話かけた。
「水槽の中よ」
とウラックは答えた。
「魚なの、オレ」
「きれいなディスカスよ」
ウラックの部屋は壁一面が大きな水槽になっていた。
「おはよう、魚たち、今日の水曜日は特別に冷凍アカムシを用意したわ」
ウラックは魚にエサを与えるといつもの様に自転車に乗り高校へ向かった。
「君、何の用かい?」
と職員がウラックに話かけた。
「私は妖怪ではありません、今日は何の日か知ってますか。」
「いつも君、水曜日に来てるだろ、生徒が一人ずついなくなるだろ、魚から人には変えれないのか」
「あなたは大きなピラルクよ、とても飼いきれないわ」
「困ったものだ」
ウラックは自転車を学校の前に止めて学校の中へ入っていった。
「私の家へ案内するわ」とバケツに入った魚に話かけた。
「私まで、何をするつもりですか」
「食べちゃ悪いですか。」
魚はだまりこんだ。
「うそよ」
すると交差点の横から警官がやってきた。
「ちょっとお話をうかがってもよろしいですか」
と話しかけてきた。
「ええ」
「逮捕しようにも魚になってちゃねえ、バケツの液を調べてる最中でして」
「魚と話せますよ」
「おーい、名前は山田ゆうきかい」と警官は魚に話かけた。
「はい、山田ゆうきです」
「はい、どうもすいませんでした、ちゃんとした服を着て下さいね」
警官は去っていった。ウラックは家へと帰った。
″絶対に溶けない水性ボールペン″
学校の前に男子二人が横に並んでバニーガールが二人の頭に水をかけた。
すると一人の男子の髪の毛が溶けてきた。
″従来品と比べて一目瞭然、ハイパーリキッドボールペンラブラから″
と夕方のCMで放送されていた。ウラックの噂はテレビにも広まっていた。
「いまいち釣れないなあ、中学生辺りは、うーん、税込8000円でなんとか、除毛クリームだよねやっぱり」
とウラックはテレビを見ながら独り言を言っていた。
ピンポーンとウラックの家に配達が来た。
「FBIでフィッシュボーイイル」
「サインお願いします」
荷物を受けとると箱を開けた。
「いやーん、ビキニじゃなーい、えーとこれはネコ耳?迷彩のショートパンツにしっぽがついてブラトップ?」
「それとキタキタ、フィッシュボーイイルから水溶液が届いたわ」
もう一つの箱には水溶液の入ったボトルが入っていた。
「世界を魚で埋めつくしたいわ」
フィッシュボーイイルという団体に入っているウラックは人類をなくし魚の世界にする活動をひそかにしている。表向きは魚保護団体である。
ん、今日の飯はマスを塩焼きで食べるか、あともずくにざるそば、えっとマンゴー。
もう、みんなクローンだもの、でも私は違うのさ、という妄想を抱くほど人に対して軽々しく見ているってどうなのよ、ねえ、FBIさんよ、本当のFBIは動いているのかは知らないけどね。
「よっしゃあ!今日もはりきって仕事へ行くか」
火曜日、ウラックは水族館へと向かった。
バスに乗り座席に座ると周りからの視線が集まった。そりゃそうだ、私、ポップアート革命か?というくらい目立つ水玉模様の服を着ていた。
「はい、回ってもう一回」
ウラックはイルカの調教師を見ながら掃除をしていた。
「ちょっとウラック、私の缶コーヒー飲んだでしょ」
「何なら私はイルカになりたい」
ウラックとルミは休憩室で話をした。
「イルカにならなくていいから120円ちょうだいよ」
「もう1000円あげるから」
「いいよ、そんなに。」
「シーラカンス委員長に申し訳ないね、魚の未来のためにご協力を」
ウラックはカバンの中からCDを取り出した。
「FBI?」
「CDあげるから、エンゼルフィッシュの曲が入ってるからどうぞ」
「前、グッピーのCDもらったけど本当に魚が歌ってるの?」
「そうだよ、フィッシュボーイイルよ」
「フィッシュボーイイリュージョンじゃなかった?」
「いやあ、私は裏の顔でしてねえ」
「そうなの」
「はああ、今日は疲れたー」
ウラックは布団の上で寝転んだ。
「おーい、戦争が始まるぞー」
「ええ、何?」
とウラックが起き上がった。
「何よ、グラミー」
「シーラカンス委員長によると水溶液をネットで売ってるが近頃、会員数に伴い売り上げが急に伸びているらしい、君の活動のおかげだよ」
「明日は海水浴場で戦争を開始します」
とウラックは宣言した。
「はいよろしい」
海水浴場にてウラックは海水魚用の水溶液をに入れ、寝ている人にぶちまけた。
「あなたはカサゴね、まあブサイク、水曜日は人がまばらですなあ」
「あんた、融解止めを飲んでいるな?」
と後ろから男がやってきた。
「そうです」
「オレにもくれないか」
「いんや、会員カードを持ってないですよね?」
「まあ、持っていないが」
「何に惹かれたの?ネコ耳かあ?」
「いや、違う似合ってはいるがな」
「水着があるけどそっちがいいのかあ?」
「ダメなのか?」
「いや〜NONO、ここに電話すれば電話すれば会員になれるぞ、Seeyou」
とウラックは電話番号の書いた紙を男にわたし、バス停へと向かった。
「誰も居ない」
と男は海水浴場を見回した。
″行方不明者が相次ぎ日本はどうなっていくのか″
ニュースはFBIのことを何も伝えなかった。
「もうブレインウォッシュきたねえ、ヒャッハ、食糧も少なくなってきたわ、スリムハイってやつか、戦争は米が命」
とウラックはテレビを見ながらはしゃいでいた。
「イルカになる準備は私がするわ」
魚になれ、我は魚の子、人類はみな無。
そうだ、イルカになれる薬を飲もう。
夜になると雨が降り始めた。
上空に飛行機の音が鳴り響いた。
「投下準備OK?」
「OK」
海水浴場にいた男は空軍の一人であった。
ウラックはその男に水溶液の投下を希望した。
ドッパン、と音が鳴り響くと家や街を破壊し、住民はみな魚になりウラックはイルカになって仲間のイルカと合流し水の流れに乗って海へと向かっていった。