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言わなきゃ、恋は育たない

作者: K

エリシア・ウィンレットには、最近ひとつ悩みがあった。

それは、王太子付きの騎士ダリル・グラントの視線だ。


今日もまた、学園内のカフェにて幼馴染のリディア・べルフォートとお茶を楽しんでいたら視線を感じ振り返ると、奴はいた。


無言で、ジッとこちらを見つめる眼差しは鋭く、重い。

エリシアはそっとカップを置き、声にならないため息を吐いた。


「……なんだか犯罪者になった気分だわ」

その言葉に、リディアがエリシアの後方へと視線を向け、そして一瞬で空気が変わった。


「はあ?」

彼女の低く不快に満ちた声と共に、鋭い視線がダリルを真っ向から射抜く。

無言のまま、だがその睨みは堂々として、容赦がなかった。

さすがに王太子の婚約者に睨まれては分が悪いと思ったのかダリルは渋々、その場を離れていった。


「私……何かしたかしら」

「エリシアが何をしたっていうのよ。悪いのはあいつよ、完全に」

「でも……あの人、ずっとあんな感じで……」

「ずっと“あんな感じ”のまま黙って睨むなんて、ただの無礼者だわ、関わる気がないなら石像にでもなってればいいのよ」

リディアはカップを口元に運び、冷めた紅茶をひと口含んでから言葉を続けた。


「言いたい事言わないで、こちらを睨むだけなんて迷惑なだけよ」

その強い口調に、エリシアの胸に溜まっていた重たいものが、ほんの少しだけ和らいだ。


「……ありがとう、リディア」

「なによ、改まって。エリシアが気味の悪い男に怯えてんのよ?黙って見てるわけないでしょ」


その言葉が、何より心強かった。




学園の図書室はいつも静かで、規律正しく、エリシアのお気に入りの場所の一つだった。

今日はちょうど、新しく入荷された小説があると聞き、誰よりも早く手に入れようと足を運んだ。

目当ての一冊を手に取ったときは、ほんの少し浮かれてすらいた。


手続きをしようとカウンターに向かおうとしたその瞬間、道を塞ぐ影があった。


「グ、グラント、様?」

「………」

ダリルは無言のまま、ジッとエリシアを見下ろしている。

鋭く、重く、刺さるような視線。

声もなく、ただ見つめてくるその眼差しに、彼女の背筋が自然と凍る。


「な、なにかご用ですか……?」

恐る恐る声をかけたものの、それが返答の代わりなのか、ダリルの眼力はさらに強まった。

あまりの迫力に、カウンターの司書ですら視線を逸らし、周囲の生徒たちも見て見ぬふりを決め込んでいる。


逃げ道がない。

足がすくみ、手の中の本がかすかに震えたそのときだった。


「ちょっと、ごめんね」

背後から聞こえた穏やかな声に、空気が一変する。

自然な仕草でエリシアとダリルの間に手を伸ばし、棚の本を取った。

微かに漂う紙の香りに誘われるように、エリシアは顔を上げると柔らかな光をまとうような笑みの彼が見えた。

その人はまるで今気づいたかのように、エリシアの手にある本を見て、優しく笑う。


「その新作、僕も気になってたんだ。先に読まれちゃったな」

軽やかな会話、その一言にエリシアの緊張が少しずつ解けていくのがわかった。


「……いえ、今から借りるので、まだ」

「今からなんだね、なら早く手続きをしようか」

エリシアの肩を自然にかばうようにして体を傾け、そのまま彼女を導いた。


「……おい」

が、ダリルの声が二人の背に投げられる。

エリシアはその声の低さに恐怖で肩が竦んでしまうも彼は一度だけ振り返り、ダリルへ穏やかな笑みを浮かべたまま問い返す。


「なにか?」

ダリルは言葉に詰まり、無言になる。

言いたいことがあるのは明白だったが、エリシアを見ては言葉を詰まらせてばかりで、その沈黙を答えとみなした。


「……うん、じゃあいいよね」

そのままエリシアを連れて、廊下を抜ける。

そして、誰にも気づかれぬように、図書室奥の準備室の扉をそっと開け、彼女を中に招き入れた。


「ここなら、さすがに追ってこないと思う」

静かに扉を閉め、息を整えた先輩の横顔に、エリシアはようやく安堵を覚える。


「急に連れ出してごめんね。あんな状況だったから、強引にでも逃げたほうがいいと思って」

「……いえ、助かりました。本当に」

エリシアが小さく頭を下げると、彼は少しだけはにかんで、ふっと微笑んだ。


「僕はエリアン・フェルグレイ。困ったときは、また声をかけて。大したことはできないけど……それでも、君が困ってたら放っておけないから」



エリアンとの邂逅以来、エリシアの学園生活はどこか穏やかな色を帯びるようになった。

ダリルの圧に怯えるたび、さりげなく間に入ってくれるエリアンの存在は、エリシアにとって救いだった。

年も一つしか違わないのに、彼の柔らかな雰囲気がとても心地よかった。


その日も、エリシアが一人で廊下を歩いていたときのことだった。

不意に曲がり角からダリルと鉢合わせてしまい、息を呑む。

ダリルの視線はいつものように鋭く、強張った空気が肌を刺した。そのとき、背後から軽やかな足音がして、まるで風のようにエリアンが現れる。


「エリシアさん!探してたんだ、この間の件だけど」

そう言って何事もなかったかのように自然にエリシアの隣に立つ彼の姿に、ダリルの目がわずかに動いた。

けれど何も言わずにそのまま背を向けて去っていく。

エリアンの存在が、まるで無言の楯のように彼女を守ってくれていた。


その様子を遠くから見ていたリディアは、微笑を浮かべながら小さく頷いた。

親友がようやく安心できる誰かに出会えたことを、心から嬉しく思っていたのだ。


だが、穏やかな空気はそう長くは続かなかった。

放課後、リディアが廊下を歩いていると、声をかけてきたのは婚約者であるレオンハルトだった。


「最近、ウィンレット嬢と親しげな男がいるようだけど、あれは、誰かな?」

レオンハルトは一見親しみやすい雰囲気を持っているが、やや偏りな思考がある。

リディアは「フェルグレイ」とエリアンの姓を告げれば、レオンハルトの眉がわずかにあがる。


「辺境伯の子息か……だがダリルも負けてはいない。

あいつなりに必死で……なに、睨んでるように見えるかもしれんが、あれは緊張してるだけなんだ。昔から、ああいう奴でな」

彼は自身の親しい者にだけ好意的に評価する内集団バイアス思考な所がある。

それは次期国王として、あってはならない致命的なことでもあった。

リディアの冷ややかな目に気付かないのか、レオンハルトは続ける。


「明日の宮廷舞踏講義、知っているだろう?ちょうど良い機会だ。ダリルとウィンレット嬢が組めるよう手配しておいた」

「…は?」

「協力してくれ、リディア。あいつの背中を押してやってくれ」

「……検討します」

無表情のまま返すその言葉には、肯定も否定も含まれていなかった。

だがレオンハルトはそれを都合よく解釈したのか、嬉しそうにその場を後にしたのだった。


そして、迎えた翌日の舞踏講義。

教室に入ったエリシアの足が止まった。目の前の掲示板に書かれたペアの名簿。

彼女の名前の隣には「ダリル・グラント」の文字があった。


血の気が引くのが、自分でも分かった。

恐る恐る視線を上げれば、教室の向こうに立つダリルが、例によって凄まじい眼力でこちらを睨んでいた。

あれは緊張ではなく、どう見ても敵意そのものだった。


周囲の生徒たちはその様子にざわつき始める。

「可哀想……」

「怖くて踊れないでしょ……」

そんな囁き声がエリシアの耳にひどく残った。


先生の合図で講義が始まっても、ダリルは一向に動かなかった。リードを取るべき男性が誘わなければ、女性は何もできない。

だが彼は、ただ突っ立って、相変わらずエリシアを見下ろしている。

教室のあちこちでペアがダンスの練習を始めるなか、彼女たちだけが取り残されていた。


この場から逃げ出したい。

そう思った矢先、レオンハルトが突然現れ、挨拶をする間もなくダリルの背中をどんと叩いた。


「こいつ、照れ屋なんだ。ウィンレット嬢、悪いがそっちから誘ってやってくれないか?」


一瞬、教室が静まり返った。

女性から男性を誘うなど、はしたないとされるこの宮廷文化の中で、王太子自らがそれを求めるなど前代未聞だった。


エリシアは羞恥と怒りで全身が熱くなるのを感じた。

だがレオンハルトに声を荒げるわけにもいかず、かといってダリルは微動だにせず、誘いの言葉を待っている。


なんて、屈辱。

震える唇を押さえ、エリシアは意を決して先生のもとへ歩み寄った。


「申し訳ありません、体調が優れなくて」

先生は驚いた表情を見せたが、すぐに理解を示してくれた。


「分かりました。無理はしないでください」

そう言われた瞬間、エリシアは頭を下げ、そのまま教室を後にした。


廊下に出たとき、ようやく呼吸が戻ってくる。

怒りは内に煮え、羞恥はまだ頬に残っていた。

それでも、教室を後にしたその一歩は、彼女のささやかな抵抗だった。


教室に残された生徒たちの間に、微妙な沈黙が流れる。

その中で、講師がちらりとレオンハルトとダリルの方を見やり、小さく、しかし確かな声で呟いた。


「……女心も知らずに」

誰にも届かぬような独り言だったが、その声音には呆れと怒りが滲んでいた。

そしてその一部始終を見ていたリディアもまた、冷えた視線でレオンハルトとダリルの背を見つめていた。

「……最悪」

そう呟いて、その場を静かに立ち去る。

その背中には、親友の尊厳を踏みにじられた怒りと、まだ何もできない自分への痛みが滲んでいた。



あの講義の一件以来、エリシアはダリルを避けるようになった。

学園の廊下で姿を見かければ踵を返し、講義で席が近くなれば用事を装って移動する。

それは怯えというより、あの時に味わった耐えがたい屈辱と怒りが、彼女の中で深く根を下ろしてしまったからだった。


だがその一方で、エリアンとの関係は静かに、しかし確かに距離を縮めていった。

ある日、実習帰りに二人で温室の裏手を歩いていたとき、領地での作物栽培について語っていた。


「ウィンレット領の土壌は、水はけが良いのに湿気が残りやすいんですね。珍しい環境だ。豆類との相性が良さそうだな」

「はい、最近は薬効のあるハーブも育てていて……。あ、でもフェルグレイ領ほどの気温差はないので、そちらのような寒冷種は難しいかもしれません」

エリアンは頷き、口元に静かな笑みを浮かべる。

理知的で穏やか、けれどどこか楽しそうに会話を重ねる彼といると、エリシアの胸は少しずつ、でも確実に柔らかく温まっていった。


春の兆しが芽吹く季節、卒業を間近に控えたある日。

エリシアは、ふとした拍子にその胸の想いをこぼしてしまった。


「その……卒業舞踏会には、もうどなたかとお約束が?」


言ってしまってから、全身が熱くなる。

はしたない。貴族の令嬢が自ら相手の有無を訊くなど、礼節にも矜持にも反する。

自分らしくない、と恥ずかしさにうつむいたエリシアを、エリアンは穏やかな眼差しで見つめていた。


「……ごめんなさい。今のは、なかったことに」

「なかったことにはできませんよ」


思わず顔を上げると、エリアンが柔らかく微笑んでいた。


「僕の方こそ聞こうと思っていました。ずっと……どうしても」

彼は一歩近づき、そしてそっとエリシアの手を取る。


「エリシア・ウィンレット嬢、もしよければ、卒業舞踏会のパートナーになってくれませんか?」


その言葉に、息が止まりそうになる。

ずっと胸の奥に灯っていた微かな火が、ぱっと光を増したような感覚をエリシアは忘れられないだろう。


「……はい。喜んで」

涙が滲み、彼に見られぬようそっとうつむくけれど、頬の熱は隠しきれなかった。



それからしばらくして、エリシア宛に二つの荷が届けられた。

一つはフェルグレイ家から。

丁寧に包まれた箱を開けると深い緑のドレスが顔を出す。

まるで森の中に射す月光のような、静かで凛とした気配を湛えていた。

スカートは滑らかなシフォンの重なりで、歩くたび葉擦れのような揺れが想像できる。

胸元には翡翠色の刺繍が繊細に施され、腰には銀の紐が一筋だけ結ばれていた。


エリアンが送ってくれたことも、彼の纏う空気を思わせる色も、全てが嬉しくて、胸が温かくなる。

彼が自分のために選んでくれたのだと思うと、それだけで心が満たされていくのが分かった。


《貴女の瞳に似合う色を選びました。

卒業の節目に、誰よりも貴女が輝きますように》


エリアンからの手紙に、自然と微笑みがこぼれる。

けれどもう一つの箱を開けた瞬間、その笑みは凍りついた。


王宮からの正式な封蝋がされた箱。

中には、濃い紅茶色のドレスが収められていた。

深紅に近い、気品ある大人びた色合い。

裾には重厚な金糸の飾りが広がり、明らかに高位貴族の意匠であった。

また中には、一通の手紙も添えられていた。


手紙の送り主は、よりによってダリル。

手紙の筆跡は硬く、ぎこちない。けれど、そこには誠実な懺悔と、彼なりの想いが綴られていた。


《ウィンレット嬢へ


あの日、貴女に不快な思いをさせてしまったこと、深くお詫びします。

不器用で、口にできぬ想いばかりが募ってしまいました。

もし許していただけるなら、卒業の夜、どうかこのドレスを着て、私に踊る機会をください。》


手が、震える。


「今さら……何を……」

唇を噛む。悔しさと、あの日の記憶が蘇る。

言葉をかけるべき時に、何もせず、ただ睨みつけるばかりだった男が――この期に及んで、何を。


エリシアは静かに手紙を畳み、ドレスを箱へと戻した。

そのまま、何も言わずに箱の蓋を閉じる。


「……論外、ですわ」

それだけ呟いて、彼女は自室の鏡台に向かった。

もう一方の箱を開き、エリアンからのドレスを両手に抱きしめた。


「わたしが選ぶのは、あなただけ」




卒業式当日。

エリシアが選んだのは、深緑のドレス。

鏡に映る自分の姿は、気品と優しさに包まれたその色が、彼女の中の迷いを一つずつ消してくれて、より誇り高く、そして美しかった。

不器用な後悔ではなく、優しい確信に満ちた選択が、彼女の心に凛とした芯を与えていた。


「行ってきます」

今度は、誰かに守られるだけの少女ではなく、

自ら望む未来を掴もうとする一人の女性として、彼女は式の会場へと向かっていった。


学園の大広間は、すでに人で賑わっていた。

卒業生たちが晴れやかな衣装に身を包み、それぞれの未来へと旅立っていく準備をしている。

その中でエリシアが現れた瞬間、周囲の空気がわずかに変わった。


彼女が纏うのは、深い森の静けさを思わせるドレス。

月光を映すように柔らかく輝くシフォンの裾が揺れ、胸元には翡翠色の刺繍が清らかに咲いている。

腰に結ばれた銀の紐が、彼女の歩みをそっと支えるようで気高く、そして優しく。

誰もが目を奪われたのは、ドレスの美しさだけではない。


「エリシア……!」

人混みを抜けて現れたのは、親友リディアだった。

彼女はエリシアを見て、すぐに微笑むと、抱きしめるように手を取った。


「やっぱり、そのドレスを選んだのね。とても、よく似合ってるわ」

「ありがとう、リディア……」

だが二人の会話を遮るように、慌てて駆けてきた人物がいた。


「ウィンレット嬢!そのドレスは……!まさか、ダリルのドレスは届かなかったのか!?」

レオンハルトだった。

王太子としての威厳も忘れたように声を上げ、エリシアをまっすぐに睨みつけてくる。


「……届きました。でも、私はこれを選んだのです。自分の意思で」

「なぜだ。あれほど心を込めて準備したのに…ダリルの気持ちを知っていながら……!」


信じられないといった風に、まるで裏切られたような視線を向けて言い募る彼に、横にいたリディアがついに声を上げた。


「いい加減にしてちょうだい、レオンハルト殿下!」

その声には、これまで押し殺していた怒りと失望がにじんでいた。周囲が静まり返る。


「エリシアはグラント様に何度も怯えていた。あなたはそれを見て見ぬふりをして、“仲を取り持つ”と称して何度も追い詰めて!王太子として、人を見る目を養うべき立場で、あんな露骨な内輪贔屓……恥を知りなさい!」

「……リ、ディア?」

「……ウィンレット嬢、すまなかった」

静かな声でそう言ったのは、レオンハルトの後ろに付き従っていたダリルだった。

彼はエリシアの前に立ち、深く頭を下げる。


「本当にすまない。あのときの俺は、どうかしていた。

君のことが、ずっと好きだった……でも、恐怖を与えてしまっていたなんて、気づけなかった」

「ダ、ダリル…お前まで」


困惑するレオンハルトを置いて、エリシアはダリルの言葉を聞き、ゆっくりと頷いた。


「気持ちは……受け取りました。グラント様、ありがとうございました」

「エリシア、大丈夫かい?」

ざわめきに気づいたエリアンが姿を見せた。

彼は迷いなくエリシアの傍に立ち、その身で庇うようにダリルたちと向き合う。

どこまでも穏やかな瞳が、エリシアの心を静めてくれる。


ダリルはエリシアの横顔を悲しげに見つめつつも、口元を引き結び、エリアンへも頭を下げた。


「……フェルグレイ先輩。これまで、数々の無礼を働きましたことを、深くお詫び申し上げます」

エリアンは少し驚いたように目を見開いたが、すぐに穏やかな表情で頷く。


「いいえ。謝罪の言葉を口にされるだけで、十分です。あなたも……自分と向き合おうとしているのですね」


ダリルはわずかに肩を落とし、深く頭を下げた。

レオンハルトはリディアとダリルにそれぞれ腕を取られ、押し黙ったまま連れて行かれた。


その背に、エリアンがそっと囁くように呟く。


「……ようやく、皆が自分の足で立ち始めたのかもしれないね」


やがて始まった卒業舞踏会。

エリシアはエリアンに手を引かれ、中央の舞台へと立った。


音楽が流れ、二人がゆっくりと踊り始める。互いの目を見つめながら、言葉では言い尽くせない想いを確かめ合うように。

その姿は、誰の目にもこれから始まる未来を、堂々と歩み出す恋人たちそのものだった。




数日後、フェルグレイ家に嫁いだエリシアのもとへ、一通の手紙が届いた。

差出人は、リディア。

柔らかな筆跡で、こう綴られていた。


「王宮では相変わらず騒がしいけれど、レオンハルトはようやく反省の兆しを見せ始めたわ。

これからは私が責任を持って“教育”していくつもり。


……だから、あなたはもう安心してご自分の幸せを追いなさいね」


手紙を読み終えたエリシアは、小さく笑った。

辺境では王都の事はあまり流れて来ないけど、リディアならやり遂げるに違いない。

窓の外、庭園ではエリアンが見習い執事と何やら真剣に話し込んでいる。

その姿を見ながら、彼女は深く、静かに息を吐いた。


新しい季節が始まる。

これからは、愛しい人(エリアン)と共に自分の意志で選んだ未来を、歩んでいくのだ。



――Fin.


****

最後までお読みいただきありがとうございます。

数ある小説の中からこの小説をお読み頂き、とても嬉しいです。

少しでも本作品を面白い、と思っていただけましたら・・

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エリアンに裏がなくてホッとした
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