The nights
バタンッ!!扉が、まるで世界を拒絶するみたいに思いっきり閉まった。
「……は?」
鈴鹿はハッと我に返り、慌てて辺りを見回す。
……ない。窓、ないじゃん。どこだここ?マジで?ベッドから飛び降りるや否や、先ほど女が出て行った扉へ全力ダッシュ。ガチャガチャガチャッ!ドアノブ、固っ!
全力で捻る。ビクともしない。
「開けよって……!」
――ドンッ!!力任せに体当たりしたら、扉が逆に勢いよく開いてしまった。
ドカァァンッ!!
「……いたたたたっ……!」
床に盛大に転がってしまった。
顔をしかめながら這うように起き上がる。左右を見渡すと、廊下の両側に扉が並んでいる。
右側の扉の隙間から、チラチラと暖色系の光が漏れ、ワイワイとした笑い声と軽快なジャズ系のBGMが微かに聞こえてくる。
「……こっちか?」
勘に従って右の扉へ向かう。――ドンッ!勢いよく開けた瞬間。シーン……時間、止まった。目の前に広がるのは、カウンターと色とりどりのボトルが並ぶバー。
客は10人以上。いや、もっとか?
全員が、一斉にこっちを見てる。明るい音楽だけが虚しく流れ、店内は水を打ったように静まり返っていた。
(……え、なにこの空気……)
客たちの視線が、まるでスキャナーみたいに鈴鹿を舐めるように移動していく。顔→服→手→足元→そしてまた顔へ。
「……なんやこいつ」
「……誰だよ」
「……新しいキャストか?」
ヒソヒソ声があちこちから聞こえてくる。
誰も歓迎してない。それが痛いほど伝わってくる。視界の奥、カウンターの向こう側に別の扉が見えた。
――あそこだ!鈴鹿は迷わずカウンターに両手をつき、バンッ!そのまま飛び越える!
「お、おい! 何だテメェ!」
「ちょっと待てよコラ!」
怒鳴り声が背中に飛んでくるけど、もう止まらない。
客の肩と肩の間を縫うようにして一直線。そして…
――バシーンッ!外へ、飛び出した。
……夜だった。しかも、めっちゃ寒い。真冬の氷点下特有の、刺すような冷たい風が容赦なく吹き付けてくる。
「ううぅぅ~~~~寒っ……!」
両腕で自分を抱きしめながらガタガタ震える。
昼間に意識を失ったときはまだマシだったのに、
今はもう息が白いレベル。寒暖差エグすぎだろ……。
「どうすりゃいいんだよぉ……マジで……」
震えながら、よろよろと歩き出す。すると、前方に黄色い大きな塊が。
「……ん?」
近づくにつれて、だんだんそのシルエットが分かってきた。あれって――心臓が、ドクンッと跳ねた。




