Whatever
フォォォォン……フォォォォォン……フォン、フォォォォン。
遠くで汽笛が柔らかく響いている。
チカ、チカ、チカ。
懐かしい音だ。時計の音だ。
んん……。
ゆっくりと瞼を持ち上げる。体の下は柔らかい。常識が通用するなら、これはベッドだろう。
ぼやけた視界の中、木調の天井からぶら下がったシーリングファンが静かに回っていた。真ん中にオレンジ色に光る淡いライトに照らされている。
まだ目をしっかり開けられない。意識は霞んだままだ。夢か現実か、区別もつかない。ただ、生きていることだけは確かだろう。
考えているうちに、また睡魔が襲ってくる。
もう一度、目を閉じかけたその時——。
ベシッ!
頬に鋭い痛みが走った。平手打ちだった。
「ひゃっ!?」
驚いて勢いよく半身を起こす。隣を見ると、そこには薄い水色のエプロンをした女性が立っていた。整いすぎた顔立ち。まるで人形のように美しく、そして冷ややかに、こちらを見下ろしている。
あたりを見回す。部屋は薄暗く、壁紙は柔らかな白色。天井は高く、暖炉では小さな炎が揺れている。
すぐにまた女性の方へ視線を戻した。
「どうして——」
今の状況がまるで飲み込めない。生きているのかさえ疑わしい。だが、その問いは遮られた。
「あなた、誰?」
「……え?」
「なぜ、あの倉庫にいたの?」
「いや、それよりここはどこなんですか?」
「君はどこから来たの?」
質問が次から次へと押し寄せる。
「僕は……東京から来た児玉鈴鹿です。まだ高校生で……」
おびえた声で答えると、女性は呆れたように眉をひそめた。
「……なんだ、それ。」
「と、ところで、あなたは? それにここは——」
「フン。」
そっぽを向いて、踵を返す。
「あ、ちょっと——」
その声も届かず、女性は扉から出て行ってしまった。




