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FRONTIER

頭の中が混乱している。

パンパンと手を叩いてみる。ちゃんと音は出た。

いやさっきまで首都高にいたはずだが?しかもなぜか路上に人がいてそれを避けようとしたらそのまま壁に激突して事故るはずであったが…。それにここはどこだ?天国か?にしても手の感覚もあれば、おまけに、車ごと一緒に来ている。衝撃のせいか、車のエンジンも切れている。

なにか手がかりを得るべく窓の外を見渡すが見る限り旧式な建物しかない。それとたまに歩行者と馬車を牽いた馬や牛のような動物が行き来しているだけだ。


トントントン…


不意に助手席側の窓をノックされた。

ぱっと見てみるとそこにはにこやかに微笑んでいる大和が立っていた。


ブィーーン。


窓を開けると同時にこっちから話しかける。


「お前、ここ、どこか知ってるか?どこだよここ。」

「しらないね。俺もここは初めてだ。」

「なんだよ。他は行ったことあるみたいな言い方だな。」


大和の微笑んだ顔を疑うような目で見る。


「…いや知らねぇよ。」

「じゃあなんで俺はここにいるんだよ。いや、お前もか。」

「知らん。俺はただお前の後ろを走っていたらいつの間にかここにいる。まぁ、人生ってのはいろいあるから、これを前の人生の続きとするか、2度目のスタートとするかだな。」

「なんだお前。大和はこんな所に急に来て、何も驚かねえってのかよ。」

「……」

「おい!」

「……」

だんまりを決め込んでしまった。すると、どこで入手したのか、大和が煙草とジッポーライターを取り出して、ふかし始めた。そしてふらふらとどこかへ行ってしまった。どうも大和じゃ話にならないようだ。


「はぁ…」


疲れてため息が出る。まず大体ここがどこかもわからないままじゃ困る。


「そうかスマホがあった!」


思いついたようにポケットの中を探る。

ん?

両方のポケットを確認してもない。

右の助手席のほうを見た。スマホはそこにポンと無造作に置かれてあった。事故の衝撃でポケットから吹っ飛んだのだろう。

スッと電源をつけてマップのアプリを開いてみたがそこには電波が無いとの表示しかなかった。右上の電波状況もなにも表示されていない。


「はぁ…」


画面の状況に絶望した。再びため息が出る。


「これじゃあどうにもならないじゃんか!」


ドアを開け、車を降りてみた。

辺りを見回すと、街中をパカパカと馬車を牽いた馬が走っている。風景的には砂漠の中というのだろうか、遠くには山が見えていて、あまり緑がない。建物はというと、西部劇に出てきそうな建物ばかりだ。店のような建物の前には、30、40代と思われるガタイの良い男たちが何かジョッキから飲んでいる。おそらく酒だろう。


「まったくもうどこだ?ここは。」


すると後ろからしわがれた男に声をかけられた。


「坊や。」

「はいっ!」


急に話しかけられ、驚いて振り向いた。


「それにしても変わった車だね。あんたここら辺の者でないだろう。」

「はい。そうなんです。首都高走ってたら急にここへ飛んできてしまったらしくて…」

「しゅとこう?」


老人の男は謎めいた目で見ていきた。


「あ!そうじゃなくて!車で走っていたら急にここへきてしまって。」

「なんだぁ。ただの迷子か。そして車ということはどうやら金持ちの坊やかね?」


結構グイグイ質問をしてくる。


「まぁ、そんなところです。」


どうやらここの世界では車を持っていることが金持ちのアピールになるらしい。

老人は、頷いて、そのまま立ち去ろうとする。

何か思い出したように振り返ってきた。


「それじゃあ、道を見つけて早く帰るんだよ。一応注意しておくが、ここは夜、危険な場所に変わるからね…最近あまり情勢がよくないもんで。」


「あっ!爺さんここら辺に泊まる所ってないですかね?」


思い出して叫んだが、相手は気づかず老人はそのまま、街に消えていった。


はぁ…。


再びため息が出る。ここまでで分かったことは夜までには泊まる場所を探さないといけないことだ。

ということは最初は宿を探さねばならない。


何もわからないまま、車に乗り込みエンジンをかける。


ガタガタブォォォォォーーン


ヒヒヒーーン!

極端に大きいエンジ音のせいで、馬たちが驚いてしまったらしい。


最初はゆっくりめに走った。馬車の後ろをついていけば何かわかるかもしれない。

走っている最中に車窓からの景色をみながら宿らしき建物を探す。想像するにここはダウンタウンなのだろうけどやけに田舎っぽい。道路は舗装されていないし、人々は農民のような格好をしている…。しかも建築物はアメリカの西部開拓時代に放置されたゴーストタウンにあるような建物ばかりだ。

走っていると視線を感じる。そりゃ、よくわからない世界から明るい黄色の車が走っていたら何事かと思うだろう。

しばらく、10分くらい走ったところだろうか。なにやら建物の前に馬が何頭も集まったところを見つけた。大きな茶色い木造の建物だ。江戸時代でいうところの問屋場だろうか。ここならなにか手がかりが得られるかもしれない。

車を入口の所に止め、降りた。

ヒヒーーン

馬が騒いだ。

一目見渡すとおそらくウエスタンサルーンのような感じだった。

ポーチに上がりウエスタンドアを開ける。


「すいませーん、誰かいますかー」


入るとウィスキーとたばこの混じった匂いがふわりと漂った。


…。


カウンターには客はおろか奥に店員もいない。人がいる気配も無い。もぬけの殻だ。


「どうなってんだよ…まったくよォ」


入った入口を引き返し、誰かいないか探しに外へ出た。


「困ったもんだよ……あれ?」


建物の隙間からちらっと見えたところにもう一つ大きな倉庫のような茶色い建物があるのに気付いた。その建物は年季の入った外観で、まるで長い間誰にも見向きされていないかのようだった。どこか神秘的な雰囲気を漂わせている。

どうしても気になる。もしかしたらそこに人がいるのかもしれない。鈴鹿の好奇心がふつふつと湧き上がり、足が自然とそちらへ向かってしまった。

不法侵入かもしれないが仕方ない。覚悟して建物の間をそぉっと忍び足で進む。

ギクッと体が硬直した瞬間、鈴鹿の口から思わず「あ!」という声が漏れた。

次の瞬間、ドンッという音とともに、鈴鹿は地面にひざをついた。

木の根っこに引っかかって躓いたようだ。

「いってぇぇ」と、痛みをこらえながらも、鈴鹿は周りを見渡した。

先ほど隙間から見えた建物が目の前にたたずんでいる。その姿は、古びた石造りで、苔が所々に生えていた。鈴鹿は息を飲み、まるで時が止まったかのような静けさに包まれる。

立ち上がり、鈴鹿は慎重に扉に手をかけた。冷たい木の感触が指先に伝わり、心臓が高鳴る。

「誰かいてくれ」と心の中で願いながら扉を押し開いた。


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