異世界?
「おい、鈴鹿。起きろよ。勉強しなくていいのかよ。期末明日だぞ?」
重い頭を上げるとそこには金髪で肩までロン毛の学ラン姿の大和の顔があった。試験は明日のなのはわかりきっているが勉強するつもりはない。そもそも勉強したことはなかったし、頭のなかはいつも車のことでいっぱいだった。
俺は児玉鈴鹿。渡瀬大和は中学からの友達だ。自分は大和とは反対で髪も染めず黒髪のままでいるつもりだ。当時は自動車部の同級生だったが今となっては放課後いつもつるむやつだ。18の時に免許を取ってからはいつも二人で首都高を爆走している。
「そんなにムズイかよ今回の試験」
「そりゃお前にとっちゃ簡単だろうけど高3だぞ?受験どうすんだよ」
「何とかするよ」
適当にごまかしながら再度寝ようとする。
だが大和はそれを妨げるようにして体を揺らしてくる。
「だから何だよ!」
「期末終わったら走りに行こうぜ!湾岸線。一昨日新しくチューニング終わったし、今回はおまえに負けてらんないからな。あ、でも今あのR35は修理に出してるから今は家族用のチェイサーだ」
実は俺らは根からの走り屋である。あえて言うのなら本気組?かな。あいつはこの間大黒PAでダッシュしようとしたら縁石にぶつけてそのまま壁に頭から突っ込んでしまったらしい。だからGTRは修理工場にいる。そんで今は親のチェイサーを代わりに使っているというわけだ。
「おう」
だるそうに答える。
いくらフルチューンだからと言ってチェイサーなんかでカマロに勝てるわけないのに
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3時半の昇降口はいつも下校の生徒で混雑する。うちの学校は上履きってのがないから当然下駄箱も無いけどなぜかただ広い昇降口がある。
校門を出て駅に向かって歩く。うちの学校は高級住宅街という立地柄、道を走る車は外車が多い。
ーでもこの前のやつ何だったんだろう。明らかに目の前にトラックが迫ってたのにあのときなんで生き残ったんだ?衝突する寸前なんか女の人の声が叫んでたよな。。。
「鈴鹿ーー」
名前を呼ばれたので後ろを振り返ると大和が全速力で走ってくる。
ドンッ
大和が思いっきりぶつかってくる。
「なんだよぉ」
「勝手に帰るなよ!お前のことずっと探してたんだぞ!」
「いやだって大和自習だろ?」
「やっぱやめた」
「お前のほうこそ試験大丈夫なのかよ」
「何とかなるって」
俺と同じこと言ってやがる。
「なぁ。お前って神っていると思う。」
「なんで?」
「じゃあ質問変えるか。異世界って信じる?」
「なにっ!お前異世界転生経験してるのかよ!?まあどぉせ鈴鹿のことだから夢でした~とかもしもの話~とかなんでしょうけどー」
「いや。特に何も。」
「何か言いたそうな顔してんじゃん。」
大和に土曜の一連の流れを説明する。
「まじ~それ。薬物やってねぇか?」
「やってねーよ。ほんとだったんだから。」
「にわかに信じがたいな」
「ほんとだって!まぁ俺も今だに信じられないけど」
話してるうちに駅に着く。小田急線の成城学園前駅だ。周辺には何個か学校があるので下校時はたくさんの生徒でごった返す。
登戸に住んでいる逆方向の大和とは別れて新宿方面のホームへ向かった。
ーーーお待たせいたしました。3番ホームに急行新宿行がーーーーーーーー
男性の声で放送が流れる。青い帯の車両がホームに流れるように入ってくる。
人込みをかき分けて電車に乗る。運よく端っこの席が取れた。
明日の試験は英語からなので英単語を勉強するとした。