表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

プロローグ :首都高を行く

日付が変わった土曜の午前2時。雲一つない快晴だ


「きっもちぃぃぃぃーーー」


芝浦ジャンクションからレインボーブリッジに向かう。普段から時速300キロオーバーの速度で走っているからこんなスピードじゃなんとも感じない。自慢のV8エンジンが唸っている。日々の鬱憤を晴らすのに峠では物足りず、高速道路にも手を出してみた。4速、5速、素早くギアを変える。


「今日も夜景綺麗だな」


黄色のカマロはレインボーブリッジを時速200キロで通過していく。

左を見るとタワマン群が見える。東京タワーもちょっと見えたかもしれない。

右の海では何かデカい船が通っていく。

メーターを見るとすでに時速250キロを指している。もはやこの速度まで来ると聞いたことないような場所から風切り音がする。


「えぐいえぐい」


レインボーブリッジを降りると今度は湾岸線辰巳方面に入る。この時間帯は誰もいない。思いっきりアクセルを踏む。ギアはもう上限の6速まで入ってる。時速は300キロにまで達する。

辰巳ジャンクションから首都高9号深川線に入る。ここはコースの中でもカーブが多少ある。気を抜かなければ大丈夫だ。


チカッ、チカッ


オービスか?いや、気のせいか。

左車線を走っている車を爽快に追い越していく。

30秒もしないうちに最初の左コーナーに差し掛かる。

減速して5速で走る。なんせ車重が2トン近くある。ハンドルも曲がんないし車が重力で外側に引っ張られる。アンダーステアだ。なんだかフロントタイヤのグリップが減っているような感じがした。ちなみにカーブを曲がる基本はアウト・イン・アウトだ。外側、内側、外側へとカーブを通過するやり方である。


ハンドルを切りこんだ瞬間、


チカッ、チカッ、チカッ


なんだこの光は!

だんだん腹が立ってきた。イライラしてきた。幻覚でも見えてるというのか。さっきまでの冷静さが保てない。コーナーを抜けた瞬間から床が抜けそうなまでにアクセルを思いっきり踏む。

箱崎ジャンクションに近づく。ここはカーブへの入りがきつい。さっきよりもスピードを落とす。うまい具合にアクセルを調節。そのままカーブへ突入。ほかのカーブと比べちゃ全然緩いカーブだがそれでも若干ドリフト状態になる。路面には赤い滑り止めみたいなのもある。おそらく雨の日なんかはスリップする人が続出するのだろう。新幹線の速度のドリフトなんて冷や汗が出る。

そうこうしてるうちに江戸川ジャンクションを目前にする。箱崎と同じ要領で曲がる。

が、


「しまった!」


集中を切らしてカーブ直前の緩やかな勾配で右車線を走っている2トントラックを見落としていた。ハンドルを曲げてもなぜかステアリングが効かない。すでに時速180キロで半ドリフト状態に入っている。もう逃げ場はない。


「助けてくれぇぇぇ」


もう誰も止められない重い車体が華麗に滑っていく。

サイドウィンドーから見えるトラック。スローモーションで見える。衝突まで5メートルも無いか。

トラックの後部に描かれているパンダがこちらを悪魔みたいに微笑んでくる。

さっきまでスリルを味わってたのが恐怖に感じた。

目を瞑る。もう終わりだと悟った。


ピカッーーーーー


なにか思いっきり光った。核爆発でも起きたのかと思うくらい明るい。


ーーーーなさい、

ーーーフフフーー


闇夜に囁く風のような声がする。悪魔のような背筋がぞっとするような何かに吸い込まれるような。

なんだろう。

別の声も聞こえてきた。


ーーーめて!

こっちはなんか静かな森に響くフクロウの声のような声だ。こっちは天使見たいだ。

急に体中がしびれる。全身を雷で撃たれたような感じ。


ドンッーー


銃声のような音がしたと思ったら急に静かになった。


あれまだ死んでない。。。?


恐る恐る目を開く。

手はハンドルを握っている。

足はアクセルに乗っかっている。

先ほどまでいたトラックが見えない。

頭の中が混乱してきた。車ごと天国か。。?


とりあえずバックミラーを見る。


さっきのトラックらしきものが小さく映っている。

ということは死んでない?

いまだに結論おろか考察も考えられない。

そもそもあの二つの声が何だったかも気になる。


とりあえずは生きていると仮定しよう。

前を見る。まだ道がある。直線だ。

減速する。多分時速60キロくらいだろう。シフトダウンするのも忘れた。

今のは何だったんだろう。とりあえずは命が救われたということか。

横を先ほどのトラックが追い抜いていく。相変わらずあのパンダが微笑んでいる。でも今回はなんか優しく感じてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ