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四十四話 革命前夜③


苦節三カ月。…の割には内容がアレですが。

今までの中では最長の一話になっています。

 


 革命の手はずは整っている。僕が考えうる限りは、ほぼ万全に。

 すでに計画は僕の手から離れて全てはジルヴァやレヴェッカ…たくさんの人々の手にゆだねられている。…神様なんか、かけらほども信じていないけれど、文学的修辞を用いるのであれば"神のみぞ知る"といったところだ。それでも、不安に駆られて何度も何度も計画を見直してしまう。…その行為には何の意味もないというのに。


 ――いや、意味はあるか。


 革命までの時間をどう過ごすか…長い夜をどう明かすか。

 そのための暇つぶしだ。どうせ今晩は眠れそうにもないから。


 明日。

 いや、たぶん日付は変わってしまっているだろうから今日のことか。

 今日で僕がこの世界に王として召喚されてちょうど三年になる。

 そのめでたい日を祝して、国中の主だった貴族を集めて大々的な祝賀会を行うことになっている。…いったい何がめでたいのかは置いておくとして。

 この三年間続けてきた無能な王としての演技は少なからず意味があったのだろう。国をしっかりまとめてくれている貴族の皆への礼だと言えば、誰も反対はしなかった。僕としては、この祝賀会を実際に開くところまでこぎつけるのが一番困難な課題であると思っていたのだから、少し拍子抜けした感じですらあるのだけれど。まあ、なんでもかんでも壁にばっかりぶちあたらなくて大変結構なことだと思う。

 そして、このめでたい日に。

 この大変な記念日に。

 この国は大きな変換期を迎える予定になっている。

 明るい将来か、あるいは血みどろの混乱へか。この革命が成功すれば、前者。もし失敗すれば国民と貴族の間で壮絶な内戦へと発展するだろう。…どちらにしても、この国は変革を余儀なくされる。革命という手段が、自分たちの力で国家をひっくり返すことができるということを国民が知ってしまえば、今までのような抑圧的な手段をとることは難しくなるだろう。

 曙による情報収集によれば、革命の動きが貴族側にばれているというような兆候はないらしいが、仮に貴族連中の情報収集能力が曙を上回っており、革命が潰された場合には僕の命はもちろんない。ばれていなくても、革命が失敗した場合には首謀者の追及が進み、僕にまで間違いなく手が伸びるだろう。その先は言わずもがな。

 三年前の僕なら逃げ出してもおかしくないような状況だけれど、もうすっかり"当たり前"のことになってしまって悲観するのさえ馬鹿馬鹿しい、無駄な労力に思えてしまう。


 計画ではこの祝賀会を、王都に住む市民たちが襲撃し、参加している貴族たちを一斉に捕縛してしまうというもの。革命に協力的な貴族ももろともに、である。

 一斉捕縛にはきちんと意味があるのだ。国民の間には貴族への不信不満が山よりも高くそびえたっている。今まではそのエネルギーは発散することも拡散することもなく蓄積されてきたわけだが、"革命"という方向性を与えられれば、濁流のごとき勢いで全てを飲み込んでしまうだろう。こうなってしまえば、貴族側がいくら武力を以て抑えつけようとしても数がモノを言う。止められない流れとなる。革命の成否――僕の生死はともかくとしても、遠からずこの国はひっくり返るだろう。

 しかし、そのエネルギーは負の属性を強く帯びている。つまり、憎悪や怨恨といったマイナス感情からくる暗い情熱だ。それらのエネルギーはとても強いが酷く扱いが難しい、攻撃的なものだ。無理に制約をかけようものなら革命の先導者である僕たちまで呑み込まれかねないほど危険なものなのだ。故にその濁流の如き力を一度受け流すために敢えて自分たちの身を危険に晒す必要があるのだ。事が成った暁には当然、その自由を回復するつもりだけれど。

 もちろん、僕も貴族の一員であるから一度は縛につくことになっている。…どんな空恐ろしい目に遭わされることになるかは考えないでおこう。

 しかし、革命を起こす上で必要な武力という要素が僕たちには欠如している。ジルヴァが中心となって地方貴族たちを口説き落とすことには成功したものの、元々中央ーー今権力を握っているレーベレヒト・マース伯を筆頭とした三貴族体制から弾き出された者たちばかりで、当然のように監視がついている。兵力を動員などしようものなら即座に事態が発覚してしまうという有様で、頼りにすることができなかったのだ。これは今思えば当然のことなのだけど大変な誤算だった。

 国を挙げての祭りであるから、軍が警備に出張ってくるのは避けられないし、城に詰めている衛兵の数だけでもかなりの数になる。対する我々はといえば、せいぜい棍棒やら投石といったレベルで戦力とはとてもいえない。しかも、これでは仮に革命が成功したとしても、どれほどの犠牲がでるのか想像すらしたくない。

 なので、搦め手でいくことにした。幸いなことに大陸から排斥されるほど危険視された暗躍組織「曙」はこの革命に全面協力してくれることになったからこそできる裏技だが。…後世からどれほどの批判を受けることに成るやら、という手段を執らせてもらうことにした。非道外道邪道…と三拍子そろった禁じ手だからだ。現代風にいうならば都市一つを対象とした大規模無差別テロ。

 正直、心が痛まないでもないが背に腹は代えられない。それに、無差別に人々を巻き込むことにはなってしまうが、最大限の配慮はしたつもりだ。"それ"のにあたっては。


 そう、毒だ。


 連綿と受け継がれてきた暗殺術の一角を担う薬物知識の大部分は粛正を経て尚ほとんどが失われておらず現存している。

 極微量で獰猛な獣を即死させるような強烈なものから、注意力を散漫にさせる程度の軽微なものまで、おおよそ僕が必要としているものが揃っていた。


 非致死性の遅効性麻痺毒。

 およそ暗殺に用いるには不確実で、不向きなものであり価値を微塵も見出されることなく死蔵され、名前すらない毒だ。当然、効能実験以上の使用実績はなく暗殺に用いられたことは一度もない。まあ、それも当然なのだが。

 暗殺とは基本的にいきなり起こせる性質のものではない。綿密にすぎる調査と計画の上に成り立つものだ。僕がこの身で体験したそれにしてもそうだ。対象にそれと悟られることなく即行・確実、一撃必殺を以て成されるのが暗殺術の神髄だ。毒にしても、実力行使にしてもだ。

 僕が望んだ麻痺毒に関していえば、彼らの常識の対局にあるシロモノといえるだろう。

 安全性については身を以て確かめた。不確定多数の人間を巻き込む後ろめたさを振り払おうとしてのことだったが、意外なことに試験に参加した人数は革命メンバーの過半数に上った。"実験データは多いほうが確実だろう"とか、"主にだけそんな目には会わせられない"とか。いろいろ理由はあったけれど。…今思えば、僕が決めたことに反論こそでなかったとはいえ、それなりに皆思うところがあったに違いないのだ。革命の困難さに関しては、くどいくらいに言い聞かせたし自分たちの不利な立場も徹底的に叩きこんだ。だからこそ、反対意見は出なかったのだ。でも…心は別だ。無関係の人々を巻き込んでしまう危険性を許容するには、贖罪ともいうべき行為が必要だったのだ。

 ともあれ、僕たちが必要としていた情報は手に入った。安全性は極めて高く(毒に安全性云々という言葉を用いること自体がナンセンスだが…)、長期に渡って継続する後遺症の類も確認されなかった。相性の悪い者で数日手足にしびれが残る程度のものだそうだ。

 製造に関してはエルフやフェザーフォルクたちが協力してくれたこともあって難なく調達できた。今頃は製造された毒を持って担当する地域でその時を待っていることだろう。衛兵の詰め所、王城各所の厨房、水汲み場、式典会場の給仕、それこそ列挙するのが困難なほど様々なところに協力者たちがいる。


 全ては"来るべき時(革命)"のために。




 ひとつ大きなため息をついて、かなりの厚みになった計画書を机に放り出した。

 ばさっと音を立てて、机に着地したソレは僕にしか読むことのできない。翻訳魔術を以てしても、解読されることのない暗号だ。…といえば聞こえはいいが、要するに日本語で書いた僕のお手製というだけの話。翻訳魔術も人間同士の意思疎通を可能にさせるための魔術であって、それを通じて言語を習得する類のものではない。正確には通訳魔術であるらしい。ふとした思いつきから、実験してみたものの僕にグラーフ王国の文字は読めなかった。ストラトも同じように、僕の書いた文字の意味を読み取ることはできなかった。そんなこともあって、自分でつらつらと書いては修正してを繰り返した計画書はそれこそ思いつく限り全てのことを書きつけてある。改善することのできた課題、最後までどうにもならなかった課題、不安要素、あまり考えたくない未来のことも…その全てを記録している。どうしようもない不安の捌け口として。

 もうひとつ、大きなため息をつきそうになったその時。控えめなノックの音が聞こえてきた。


「ミノルさま。起きてらっしゃいますか?」


 こんな時間に僕の部屋にやってくる人物は一人しかいない。この世界で最も僕のことをよく知っている女性。


「ああ、起きてるよ。入ってきて」


「…失礼します」


 時間を考えてのことか、小さな声で断ってドアをくぐったのはリディリシア・ロートリンゲン―――僕に仕えてくれているメイドさんだ。

 この三年、筋力のほかに成長らしいものがなにひとつなかった僕とは違って彼女は大きく成長したように思う。僕より頭一つ小さかった身長は今や僕と同じくらいにまで迫っているし、体つきも丸みを帯びてぐっと女らしくなった。ずっと近くにいたからこそ妙に意識したりせずに済んだが、外見とは裏腹に失われていない少女らしい素直さやあどけなさにドキリとさせられることが何度もあった。

 僕はと言えば、ずっと同じ場所で足踏みしたままだ。

 頻度こそ稀になったものの、未だに突如として不安に駆られて蹲ってしまうときがある。悪夢にうなされ、リディアに揺り起こされることがある。

 そんな情けない自分とは別に、冷静な判断で革命計画を進めてこられたのは僥倖だと言えるだろう。

 まあ、それも数日のうちに終わる。革命の成否はともかく、僕もこの国も大きな変化を迎える。リディアの成長を見るたびにちょっとした嫉妬を覚えずにいられなかった日々も終わる。なにもかも、全てが。


「で、どうしたんだ?こんな真夜中に」


 僕は背後を振り返り、そばまでやってきていたリディアに静かに問いかける。


「…驚かれないのですね」


「まあね。僕のことをよく知っているリディアならこんな大事を控えた前日に、のうのうと寝ていられるはずがないと思ったんじゃないのかな?」


「…大体、合ってます」


 座っている僕と、立ったままのリディア。

 自然、見上げる形になる僕からは前髪で隠れた目元を少しだけのぞき見ることができる。なんとなく、釈然としない複雑な表情を浮かべる彼女に得意げに言ってやる。

 実際には結構残念な自己分析の結果だ。

 ヘタレでチキンで根性無しの僕みたいな人間が、今日には自分が死ぬかもしれないという状況で眠れるはずなんかなくて、優しさと善性の塊みたいなリディアが僕を放っておくはずもなくて。そうすれば彼女が訪ねてくるのは極めて自然なこと。ただそれだけの単純な推測だ。

 しかし、ほんの少し陰りを帯びた暗い反応が気がかりだった。どこか覚えのある思いつめた感じ。

 いつのことだったか、彼女がヒロイニズムに酔って身体を差し出してきたことがった。自分のことばかりで頭がいっぱいで考えも及ばなかったのだが、革命準備のためとはいえ皆が相当なストレスを受ける状況にあったのだ。多かれ少なかれ、そのストレスを革命の準備に向けることで精力的に活動を行ってきた背景もあるが、それだけでは収まらないことのほうが多かったのも確かなのだ。リディアのことだってそう。僕という大変に厄介な人物の面倒をみなければならず、本来の仕事もあって忙殺されていたとはいえ、革命の及ぼす影響から無縁ではいられなかった。―――その真綿で首を絞めるかのような緩やかな重圧は、ただの少女でしかないリディアの精神を徐々に侵していったのだろう。その恐怖を、彼女は僕でごまかしていた。"自分よりももっと恐ろしい思いをしているミノルさんを差し置いて、自分が弱音を吐くわけにはいかない"と。いつの間にか、僕は彼女の中で悲劇の英雄にようになっていたのだ。ストレスからくる、思いこみ。そのときは一日中リディアと自分たちの在り方を話し合って事なきを得たのだった。…今度はそういうのとは違うようだけど。


「それで、夜も眠れないミノルさんは何をしていらしたのですか?」


「ん、ああ。落ち着かなくて、計画を確認していたんだ。今更、変更も利かないってのにね」


 僕は机の上を指さしながら苦笑い。

 さほど大きくない机、その真ん中に鎮座している分厚い計画書を指さす。


「…いよいよ、明日ですね」


「長かったような、短かったような。待ち遠しいような、いつまでもやってきてほしくないような…複雑な感じだな」


 式典まではもう丸一日も時間がない。

 この国にやってきてから三年。今まで過ごしてきた時間からすればほんの短い時間でしかない。


「…意外と、落ち着かれているのですね」


「ン?」


「もっと、緊張されているものだと思っていましたけど」


「緊張は、しているけどね。慌てても、嘆いてももうどうしようもないだろう?」


「…それは、あきらめですか?」


 リディアの声音が硬くなる。俯きがちになり、下から見上げる僕にも表情はうかがえない。

 …でも、彼女の気持ちは分からないでもない。彼女も恐れているのだろう。革命によって起きる決定的な変化を。僕の感じる不安とは違うだろうけれど、本質的には同じ恐怖。

 僕が眠れないのと同じように、リディアもまた眠れないのかもしれない。


「思いつく限りの手は打った。だけど、それ以上に相手が上手だった場合は仕方ない、と考えているよ」


「それだけ、ですか?」


「…どういう意味だ?」


「本当に、それだけですか?

 ミノルさんが考えているのは、本当にそれだけですか?

 …わたくしは、心配でたまりません」


 小さく握られたリディアの拳が小さく震えている。スカートを強く握りこんで、必死に震えを抑え込んでいる。

 なんというか。彼女が心配しているのは自分ではなくて、僕のこと。革命の成否ではなくて僕のこと。一人の人間としてここまで心配されるのはとても嬉しいことだが、同時にとても心苦しいことだと思う。未だ二十歳にもならないような少女が、しなければならない心配ではないはずなのだ。そんな世界に彼女を連れ込んだのは間違いなく僕だ。そのように仕向けたのも僕。…そう、僕には責任がある。


「正直、覚悟だけはしている。僕の手元に集まってきている情報が正しければ、革命は九割方成功する。

 でもね、リディア。一割近い確率で失敗もするんだ。僕にとって十に一つは十分過ぎるくらいにありえる可能性なんだ。覚悟の一つくらいは、しておかないといけない。…できる限り考えないようにはしているけどね」


「ミノルさん…」


「怖いよ。

 革命が成功したって、全部が思い通りにいくはずもない。血が流れないなんてことはあり得ない。誰も死なないなんて都合のいい話はないんだ。ただ、多いか少ないかだけの話だ」


「ミノルさん」


「その責任は、全て僕にある。

 流れる血の一滴、散る命の一片、新たに生まれる怨恨も憎悪も――全部僕の責任だ」


「ミノルさん」


「暴力性の否定も、争いの回避も、全部詭弁だ。全て、僕が負わなければならない責任を軽くするための方便だ」


「ミノルさん!」


「いいかい、リディア。よく覚えておきなさい。

 王というのはそういうものなんだ。誰が何をして、結果的にどうなろうと全ては王(僕)の責任になる。全ての責任を取らなければならない存在だということだけは、忘れてはいけない。それが、僕の役割だ」


「――それが、覚悟ですか」


「うん。二年かけて、やっとできた覚悟。

 まあ、僕のことだからアテにはならないけどね。多分、そんな場面に出くわしたらまた酷い姿をさらすことになるだろうけど」


 そう、薄っぺらい覚悟だ。所詮は頭の中で"理解"しているだけでしかなくて、心も身体も拒絶反応を起こすことは間違いない。しかしまあ、そんなものはどうにでもなるだろう。今までだってどうにかなってきたのだから。


「やっと、分かったような気がします。ミノルさんは…自分をあきらめていらっしゃるんですね?」


 引き結ばれていた唇から零れおちた言葉は、驚くほどに静かだった。


「……バレたか」


「口ではいろんなことを言いながら、どこか他人事で。まるで遠い国のお話を聞いているようです。ミノルさんにとって、自分とはそこまで遠い存在なのですか?貴方の"考え"ではない、"心"はいったいどこにいるのですか」


 いつになく強い意志の篭った言葉は、僕に対する静かな弾劾だった。


「心は、確かにこの胸の内にあるよ。それを表に出すつもりはないけどね」


「どうして、ですか?」


 リディアが一歩、僕へと踏み出す。


「今は、失敗できない時だろう?感情的になってしまったら、思考が乱れてしまったら、全てが終わってしまうかもしれない。僕の気持だけのために、今日までに築き上げてきた全てを危険にさらすことはできない」


「…それは、確かにそうです。でも、今はなにもできない。今、ミノルさんがどれだけ泣き叫んだとしても聞いているのはわたくしだけ…それでも、心を隠さなければならないのですか」


 一歩。


「それでも、だ。全てをさらけ出すわけにはいかない。今は、ね」


「今は、ですか」


「そう、今は、だ。正直、いろいろなことをぶちまけたいんだよ、僕は。でも、今はそうするわけにはいかない、ということさ」


「今は聞くな、と。そうおっしゃりたいのですね?」


「うん。今は話せない。でもね、リディア。秘密を抱えているのはとても疲れることだから、早く楽になりたいと思っているよ。…これは本心から」


「その言葉は、信じてもいいのですか?」


「革命の結果がどうなるかは分からないけどね」


「確約は、していただけないのですね」


 また、一歩。


「…どうにも、自信が持てなくてね」


 どうしようもない、自己不信。

 この三年、曲がりなりにも計画を牽引し実行寸前までなんとかこぎつけることができたのだから、少しくらいは自信を持ってもいいだろうと自分でも思うのだが、どうにもいけない。苦笑するしかない、ひねくれた性格。

 頭上でクスリ、と含み笑いが漏れる。すぐ傍までやってきていたリディアの笑い声。


「やっと、ミノルさんらしくなったように思います」


 先ほどまでの問い詰めるような空気は消え去り、穏やかな口調でリディアは言った。


「なんだ、嫌味か?」


「いいえ、本心です。自信満々のミノルさんも、妙に落ち着いた感じのミノルさんも、不気味でなりません。…いつもどこか自信なさげで、心配そうにそわそわしているほうが、わたくしは落ち着きます」


「不気味て…そいつは、あまりにも酷い言い種じゃないか?」


「"わたくしは"と申し上げましたよ?そのほうが、飾らないミノルさんの心が、身近な気がして、いいです」


「そうか…?」


「はい。わたくしの勝手な都合ですけどね」


「…リディアがそうなら、それでいいか」


「ミノルさんは、革命が無事に終わったらどうされますか?」


「正直、"たら""れば"の話はしたくないんだが…そうさなあ」


 この国をどうするのか、ではなく。僕がどうしたいのか。本当のことを言えば、全く考えていない。革命の後始末も大変だろうし、そのあと国をまとめ上げるのもまた大変な作業になるだろうからだ。しかし、それでも…やってみたいことというのはある。


「王様らしいことをやってみる、とかいいかもな」


「王様らしいこと…って」


 呆れたようにリディアが笑うが、僕は結構本気だったりする。


「無理難題を吹っ掛けて、みんなが右往左往しているところとか、見てみたくないか?我儘気ままな王様、やってみたいんだけどな」


「そうですか…。それは、とてもいいことかもしれませんね」


「だろう?」


「ですが」


「ン?」


「その前に、全部話してくださいね?抱えているもの、全て」


 笑みを深くしていたリディアは、変わらぬ笑顔のままきっぱりと言い放った。

 僕は嘆息する。どうにも、逃げ切れそうにない。


「承知いたしました、女王陛下マイ・マジェスティ


 おどけて見せる僕に、リディアは笑顔で返答。


「よろしい。では、夢語りの続きとまいりましょうか」


「ああ、夜は長いからな。語り明かすとしよう」




 夢現の物語を。








どこかぐだぐだな感じがするのはどうにかならんものだろうか。…ごめんなさい、聞き逃してください。


次は革命本番!…何ヶ月後だろうなあ(遠い目)

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