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京朔  作者: しゅん
3/3

登校初日、天然勃発

「...はい!助けてください!」

僕、榊京は東都麓縁高校の登校初日、名も知らぬ少女、通称“あの人"を見つけるために、数少ない希望に賭けて、下駄箱前で待っていたところついに再開を果たしたー。

とはいえ、助けると言ってもどう助けよう...あ、もしかして、これはチャンスなのか...?逃すわけにはいかない。な、名前くらい聞いてみるか......。

「あの、名前、教えてくれませんか。」

「え..?」

や、やばいミスった。明らかに不自然だ。

「あ、あ、その、ぼくがその背がたか、くてその...」

くそ、いざ会えたとなると緊張して全然話せない….。

「ふ、あはははは!ちょ、カタコトすぎだよ!く、苦しい!あはは」

「そ、そんなに笑わなくてもいいじゃん!」

「ごめん、ごめん、つい、ね。あ、タメロなったね。へんに敬語使おうとするからだよ。タメなんだし、タメロでいいよ。」

笑い声も、初めて聞いた。こんなにも美しかったっけ。

敬語のせいだと思われてたのか。よかった。僕だけ緊張してて恥ずかしすぎる。

「そのさ、名前を教えてもらえたら、俺のが背高くて掲示板見えるからさ、代わりに見てあげようかなって...言おうとしたんだけど」

「あぁ、そいうことね、なら言ってよ!私、神栖朔かみすさく。言い忘れてたけど私あなたに会いたかったんだ!」

うえ?!す、すごい。この人、神栖..か。は、なんというか人懐っこい、フレンドリー?なんだな...

「そ、それってどういう.….」

「私、何クラス?」

ガン無視したぞ、この人自分から振っといて。

「え、えと、Cクラスだ。よかった、僕と一緒だ。」

これは言いすぎたか...?なんとなくこっちだけドキドキしてんのが嫌で少しアタックしてみたが...

「え、えとその…」

神栖はなぜだか僕から顔を背けるようにする。

「あ、の、あ!さっき会いたかったって言ったのは、お礼、言いたかったの。試験会場で。」

すんごい話転換したな。まさか何か気に触るようなものでも言ってしまったのか....?

考えても仕方がない。とりあえず僕は、今の神栖との会話に集中する。


「あぁ、いいよ気にしなくて。…良かった。受かれて。」

「う、うん。ありがと…ね、。」

神栖はまた僕に顔を見せない。さっきからどうしたんだ?

「教室、行こっか、榊くん。」

さ、榊くん、て。いや、おかしくないんだけど!当たり前なんだけど!なんというか、15年も付き合ってきた名前が、いざ、好きな人に呼ばれると、こんなにも嬉しいなんて思わなかったなぁ。なんて。

やっばい。この状況。僕は今黒板に貼ってあった、座席表を見ながら悶絶していた。

「隣だね!榊くん」

「え、う。うん。」

「登校初日からイチャイチャなんてお熱いね~」

髪を先の方だけ金髪に染めた斜め前の席の男子が急に話しかけてきた。いや、だれ。

「あ、ごめん。紹介が遅れましたっ。俺、安藤喜代って言います。よろしく」

ちゃ、チャラい。僕のこれからの充実した7年間の学校生活にこの要素は要らんぞ!ここは慎重に断るべきだと僕は判断する。

「よろしくねっ!安藤くん。」

かかか神栖さあん!?くそ、彼女がこの安藤と友達になろうというのならそれはまずい。

仕方なく僕は苦渋の決断をする。ただし、僕の精一杯の気持ちを込めて。

「よろしくな!あ、んど、う!」

「お、おおよろしくな...?」

「おいお前ら、うるせえぞ。友達作りは休み時間にでもやってくれ。

これから、ガイダンスを始める。」

女性教員なのに淑女の心得のかけらもないような言動で教室に入ってきたのはどうやら僕らのクラスの担任の教師らしい。

「そうだな...まず初めに自己紹介でもしようか。私がしたあと出席番号順にお前らも立ち上がってしろ。」

「え。まじかよ」「何いえばいいんだ...?」「アンクソ教師」「ガチャ外したな」

クラスがざわめき始めた。

ふっふっふっ。残念ながら、リセマラはできねえぞ、同胞諸君。僕は対策済みである。わかっていたのである。自己紹介のことくらい。簡単なことだ、前のやつのテンプレを使ってしまえばいいのだよ、ざまあだ、1番。

「私はお前らのクラスの担任教師。日下部真琴だ。まっちゃんって呼んでね。」

いや、きついてぇ!?なにこの教師ギャップ萌え狙おうとしてんねん!?お前どう見たって実は格闘技経験ありますいつもポニテです教師側だろ!?

もう気づけば5番まできている。

僕は一度深呼吸をして、冷静になる。僕も前半側だ、いったん前を見てテンプレを覚えないと。

「俺は、東京都目黒区出身。安藤喜代だ。きょって呼んでね。」

いや、教師のノリ続けんなよぉ!?全員ギャップ萌えみたいになるやんけ!?そしてきょってなんだよ、一音に凝縮すんなよ。

「まずい、このノリ」

「楽しくていいな、このクラス。」

神栖が微笑む。天然かこいつ。

しかし、まずい。このノリ途絶えない。このままだと僕もする感じになってしまう。しかしらなかったらやらなかったでクラスのやつに「なんだあいつノリわる」とか思われて友達作り失敗してしまう…。

「次。15番。」

なっ...。まっずい。いつの間に。仕方ない、やるしか。

担任のせんせーに言われて私たちは今、自己紹介の時間だ。ふつーの自己紹介というと、みんな初めての人たちの前で緊張しながら、というものだが、担任の先生の計らいで面白いノリができている。私は、いい先生にあたれたことを素直に喜ぶ。

そんな中、次は榊くんの番だった。

「ぼ、くの名前は榊京です。」

緊張しているのかな、少し可愛いなんて思ってしまう。

「あ、大田区出身です。、気安く京って呼んでぬ。」

ぬ?!か、かんじゃった。可愛いい!い、いや、というか顔真っ赤だ。あらら〜。よし!

ここは私が救おう!

「次。16番。」

「はい!神栖朔です!出身は大田区です!朔って呼んでぬ!」

よしこれでOKだ。私も間違えることで仲間を作ってあげよう作戦!


...あれ、なぜだかさっきよりも榊くんの顔が赤い。

…私..何か間違えちゃった…?

その後なぜだか榊くんは口を聞いてくれなかった。

【三話終わり】

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