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パラレル∞ヒロインズ ーこれは世界《ヒロイン》を救う物語ー  作者: 藤平クレハル


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第八章 新たな事件

「たっ、大変だ! 誰か、誰か冒険者はいないか!!」


 陽子と協力することを決めてから一週間ほどが経った。


 時には喧嘩しながらも、俺たち三人は街で色々と問題を解決しながら毎日を過ごしていた。いわゆる冒険者の真似事で、今日もいつもみたいに依頼をこなした後、大衆酒場で昼飯を食べていたところだった。


 そんな時だ、ひどく青ざめた顔の男が飛び込んできたのは。


 腹のあたりからひどい出血が見られるし、片足を引きずっているところを見るに重傷のようだ。これは厄介ごとの雰囲気だな。


「大丈夫、アンタ?」

「あ、あァ。いや俺のことはいい。それより、た、大変なんだ。商店街に魔物が!!」

「魔物…!」

「ついに街中に出たんですね」


 唐突な展開だが、実はこれは俺たち三人が望んでいたことでもあった。依頼の一つで、街でおかしなことが起きているらしいと聞いて調べていたのだが、それが頻繁に出現する魔物だった。


 男の話によれば、商店街のど真ん中に巨大な魔物モンスターが現れ、今は自警団がどうにか取り囲んで抑えているらしい。


「でも暴れてはいないんだろ? だったら、このままプロに任せていた方が…」

「ダメなんだ…! 俺は知っている、あの魔物は…うっ」

「おいしっかりしろ! くそ、気絶してる…」

「どうしますか、兄さん」

「どうするったって…」


 じっとしていても始まらないし、ここは現場を見に行くしかないだろ。


「ひとまず、商店街に行こう。できることがあるかもしれない」

「そうね。行きましょう!」


 酒場を後にして、俺たち三人は商店街へ急ぐ。場所に関しては、人が逃げてくる方向に行けば一発で分かった。地球でいうところのアーケード街のような少しさびれた通りに、そいつはいた。


「なんだアレ…?」


 その魔物は、わかりやすく誰もが思い浮かべるモンスター然とした姿ではなかった。


 数えきれないほどの棘を生やした真っ黒な球体、とでも言えばいいのだろうか。地面にめり込んでピクリとも動く気配はないが、そんな球体を、緊迫した表情で鎧を着こんだ男たちが囲んでいた。


「なにがあったんですか。アレは一体…」

「く、一般人は逃げろと言っただろう! 正体はよくわからんが、いきなり現れたんだ。しかも一定の距離近づくと」

「近づくと?」

「危ないわよ、蓮!!」

「っ」


 うっかり片足を進めた俺の前に、陽子が飛び出して鞘を構えた。何が起きているのかわからないまま、硬直する俺の目の前で構えられた鞘の腹になにかがぶつかり、鋭い金属音とともに弾き落された。


 改めて魔物の方を確認すると、棘が一本体表から生えてきている。そうか。アレを発射し、距離に反応して攻撃してくるわけか。


「一定の距離から囲むしかできていないのは、そういう…」

「うむ。故に長距離から矢を射かけてみたが、それも無駄だった。外殻が硬すぎるんだ」


 ふぅむ。となると、俺にできることはあるな。


「真耶、頼めるか?」

「ええ。なんにします? 弓矢か、槍か」

「弓矢の方がいいかな。槍だと多分狙いつけるの難しそうだし」

「ちょっと、蓮。アンタ…」


 陽子がもしかしてというジト目を向けてくる。おそらく彼女の予想通りだろうけど、これしか今はできないからな。


「『万召サモン』、“大弩アーバレスト”」


 真耶のスキルにより大きな弓、クロスボウと呼ばれる武器が召喚される。サイズは攻城兵器とされるレベルで、普通なら鍛えてもいない人間には弦を引き絞ることすらできない。細かい作りのことは知らないが、そもそも個人で撃てる代物ではないのは確かだ。


 だが、俺の『異能リィンフォース』なら…!


「矢はこれでいいか」


 落ちていた魔物の棘を拾い上げて、待機状態のクロスボウに装填。


「き、君。どうするつもりだ。そんな武器、扱えるわけが…」

「大丈夫だから、周りのみんなを下がらせてください」


 腰を低く落とし右足を半歩下げることで軸にして、自分自身を固定杭の代わりに。照準を球体上の魔物に合わせると、トリガーは無視して弦をレバーごと右手で掴み全力で引き絞った。


 ギリリッと、弦が細かく軋み震える音が、徐々に大気へ波紋を広げる。俺の超人的な腕力によって弦が限界のさらに限界まで張り詰めていく。


 緊張が最大になった瞬間に、掛けた指を離した。


「いっ、けぇえええええええええええええええええええ!!!」


 破裂音を鳴り響かせて空気が逆巻き、弾道となる。


 その只中、空気抵抗などものともしない棘の矢の疾駆が。


【ℊi、aaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!】


 ―――目にも止まらぬ速さで魔物の外殻をぶち抜いた。


 断末魔を放ちながら、魔物が衝撃によって外殻の破片をまき散らしながら砕け散る。余波で一帯の地面や建物にヒビが入ったが、大事には至らなかったようで一安心だな。


「よっし」

「よくないわよ!?」

「いったぁ!? なにするんだよ」


 会心の一撃にガッツポーズを取っていると、呆れ顔の陽子に思い切り後頭部を叩かれた。


「なにもこうもないわよ、バカっ! 外れたりしたらどうするつもりだったの!?」

「ちゃんと当たったんだからいいだろ」

「そういう問題じゃないでしょ! アンタ武術ができる脳筋か、ただの脳筋かハッキリしなさい!?」

「どっちも一緒だろっ」

「二人とも、言い争っている場合ではないみたいですよ……!」


 言い合う俺と陽子に向かって、真耶が警戒を促してくる。


 同時に。


 魔物の爆発跡から、どす黒い闇が天を貫く柱となって立ち昇った。

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