第三十五章 決着/暗転
「桐立流剣技・落花!」
「この一発に鋭き祈りをッ、"斬撃"。さらに上書け、猛き願いを、 “迅雷”!!」
紅炎と緑雷の刃。異なる属性がぶつかり合い、衝撃で大気が震える。交錯するたびに互いに確実な一撃へと近づいてるのを感じた。
「ハッ…。力は認めてやるよ、女剣士。だがまだ足りねェな」
「うるっさいわね…! エラそうに言って、アンタもバテてきてるじゃない!」
「んなわけ!」
金属が擦れ合い、刃が頬を掠め、銃弾が髪を撫でる。こちらの直剣とマリアの銃剣。形は違えど、込める信念は同質。誰かを守る為のツルギ。
伝わってくる、マリアの持つ "熱" が。いや、彼女の場合は "風" とでも言うべきか。
「惜しいけど…そろそろ終わりにしましょうか」
「そりゃこっちのセリフだ。ド派手なのいくぜェ!」
体が触れ合うほど近距離での鍔迫り合いから一転、大きく距離を取って武器を構える。踏みしめた左足から炎が逆巻き、鞘に納めた刃に気が満たされていく。
「限断流居合術!!」
「この銃口に、全ての祈りを。この一発に、全ての力を!」
踏み込むと同時、噴出した炎の勢いに身を委ねることで更なる加速を上乗せする。蓮のような身体能力を持たない自分にできる最高速度の一撃、突撃と共に繰り出す居合い。
対するマリアは、二丁拳銃に連続で弾丸を込めていく。色とりどりの七発が弾倉に装填され、眩く光る。重なる光がまるで虹のように鮮やかなグラデーションを描き出した。
「天火断舞麗ッ!」
「"絢爛怒濤"《ルクスリェスントドランク》!!」
爆発が巻き起こる。
自分自身を業火の球とし、その勢いでもって前に駆ける。そこに放たれたのは極彩色の極光。熱と光が弾け、ぶつかり合う。
拮抗したのは瞬き程度の時間だった。
「ッ」
「終わりよ」
一閃。
アタシの剣が、マリアの胴を薙いだ。手応えとしては浅いところを見ると、致命傷ではないだろう。それでいい。殺したいわけじゃなくて、己の意志を見せたかっただけだから。
荒い息を整えながら、膝をついて動かないマリアに、右手を差し出す。
「ほら…、さっさと立ちなさい。蓮たちの様子が、アンタも気になるでしょ」
「ったく。ムカつく女剣士だな、ホントによォ」
「はいはい。てか、アタシの名前は陽子よ。覚えときなさい、マリア」
そんな風に言いあいながら、二人でよろめきつつ観客席へ向かった。なぜなら、イリテュムが展開していたはずの暗黒が、いまだそこには残っていたからだ。
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「真耶ー!! どこにいるんだ? 返事をしてくれ!」
観客席から順路を戻って、建物内に入った俺は真耶を探し続けていた。だが、どこにも姿がない。
それどころか、他の人間もどこにも見当たらない。一体、なにがどうなってるんだ。
そしてさっきからポケットに入れていた指輪がとてつもなく熱くなっている。『管理者』から渡されたものだが、今までこんなことはなかった。理由はわからないが、よくない予感だけはする。
「あれ、王さま?」
「あぁ。君か」
暗い通路を進むと、VIP席にいたはずのアウレス王が佇んでいた。隣にリエスがいる様子でもないし、こんなところで何を。
「なあ、王さま。真耶を見なかったか?」
「妹君か。いや知らないな…それより、どうだい。決闘の結末、君は納得がいくものだったかな?」
「それも気になるけど、今は先に真耶を」
「いいや。そちらの方が重要だとも。『世界』の交わり、それこそが君の戦う目的だろう?」
「なにを言って―――」
どうして『管理者』からもたらされたその話を知っているのか、問いただそうとして体の異変に気付く。
(動かな、い…?)
「どうやら…。君は “嘘” をついているね、遠岸蓮君。自分にも、仲間にも」
「どういう意味だ。てか、まさかこの状況はアンタの仕業なのかよ。真耶をどこにやった!」
「ふむ。聞いていた話からは少し違う反応だが…。まあ、構わないさ。厄介な異世界の天使は消え、勝手に動き回る魔人も倒された。ここからは余の出番だ」
「!」
次の瞬間、世界を蝕む闇 ――終骸が備えるはずの瘴気が、アウレス王から放たれた。
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