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パラレル∞ヒロインズ ーこれは世界《ヒロイン》を救う物語ー  作者: 藤平クレハル


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第十五章 開演

 二人と別れて列に並びながら、俺はふと顔を上げて、広がる青空に目を細めた。


 すごく穏やかな気持ちだ…。こんな平和な時間がずっと続けばいいのになぁ…。


「おぉいてめー、割り込むんじゃねえよ! 俺が先に並んでたろうが!」

「うるせェなァ。ひ弱な人間が騒ぐんじゃねェよ、この世は弱肉強食なんだヨ」

「なんだと!?」


 前言撤回だ。なんか物騒な怒鳴り声が手前の方から聞こえてきた。喧嘩か?


 列から顔を出して覗いてみると、店の軒先で、二人の男が言い合っている。一人はバカでかい大男でいつかの酒場で真耶に絡んだオーク(?)だ。もう一人は…。


「あいつこの前の。確か、ヴェリトだったっけ」


 革の鎧を身に着けた金髪の青年は、この前親子を襲っていた集団のリーダーだったはずだ。変な格好のおっさんの手下だったはずだが、どうしてクレープ屋に並んでんだよ。


「くっそが。てめー、俺はドミナス団長の率いる私兵団の隊長を任せられているヴェリト様だぞ! ケガしたくなけりゃ、そこをどきやがれくそオークが!!」

「はん、自分は大したことねエくせに大口叩くナ!」

「うーむ。これはオークの方が正論だなぁ…」

「なんだと!?」

「しまった」


 つい口に出していた。しかも、喧嘩に巻き込まれまいとみんな逃げたのか、列に並んでいるのはもう俺だけじゃないか。悪目立ちしてしまった。


「てめーは…、確かこの前邪魔しやがったガキじゃねえか!!」

「お前も大して年齢変わらないんじゃ? てか、店の前で喧嘩するなよな。迷惑だろ」

「げげッ。オマエあの女と一緒にいた…!! ひぃ、お助けェ!!」

「あ、おい」


 化け物みたいな面のオークの方は、逆に化け物を見たようなリアクションで逃げていった。失礼なヤツだなおい。


「チッ。口ほどにもねーのは自分じゃねえかくそオーク。まぁいい、ここで会ったが百年目だ。今日はてめーをブッ倒して、団長の前に引きずってくぜェ!」

「おいおい。蹴り一発でダウンしてただろお前」

「本気じゃなかったんだよ……! 起動しやがれ、魔鎧『ガルム』!!」


 ヴェリトが黒い石を懐から取り出して天に掲げる。薄紫の閃光が輝き、彼の体に鎧ともアーマーともつかない武具となって装着された。急になんだソレ!?


「ぶっ飛べクソガキ!!」


 五指の鋭い爪をぎらつかせ、ヴェリトが突っ込んでくる。


 俺はヴェリトの攻撃をいなし、街中を駆け抜けた。複雑な地形で振り切って疲れさせれば、前回同様すぐ決着がつくと思ったのだが。


「なんだこの動き…!」


 本気というだけあって、この前よりも動きがいい。爪の威力も高く、当たった壁や地面が抉り取られていく。俺の『異能リィンフォース』を使って上下左右に動き回っていれば、普通は振り切れるはずだが、ヴェリトは食らいついてくる。あの鎧のせいだろうが、鬱陶しすぎる。


 真耶や陽子に迷惑が掛かる前に、どうにかしないと。


『お困りのようだね』

「なんだよ『管理者』。頻繁に連絡とってくるけど、実は暇?」

『なんてぞんざいな扱い。泣いてしまっても構わないかな』

「勝手に泣いとけ。で、どうしたんだよ急に」

『いやなに、アドバイスをと思ってね。この前の戦いで、君はスキルを使えるようになったはずだ。指輪のような物を手に入れなかったかい?』


 今さらツッコんでも無駄だろうが、どうしてそんなことまで知っている。


 例の赤みがかった指輪を取り出すと、指輪がひとりでに右の中指へ収まった。


『あの空間でやったように、スキルを叫びたまえ。それで再現されるはずだよ』

「んなゲームみたいな……。いや仕方ないか。来い、―――『製界ノ剣(ソード・ターミナス)』!」


 指輪が強く輝き、からだった右手に、再び『剣』が具現化する。


「てめー、なんだそりゃ…!?」

「遊びは終わりだ。さっさと諦めろ!」

「ほざけ!!」


 突き出された爪の一突きを剣の柄で弾き、よろめいたところを連続で斬りつける。だが、体を覆う鎧に全て弾かれてしまう。嘘だろ。


『君の眼は節穴かい? 『超眼プリズム』が、スキルによって拡張されているはずだ。それを利用したまえ』

「次から次へと意味わからんことを。どうやるんだよ」

『意識を集中するのさ。そうすれば、見えないものが視えてくる。その感覚を君は知っているはずだよ』

「なにぼうっとしてんだぁ!? オラオラオラァ!!」

「くっ」


 こっちの事情などお構いなしにヴェリトが攻め立ててくる。このままやっていても拉致があかない。『管理者』に言われるがまま、スキルに意識を割いて、『超眼』を発動。ヴェリトと彼の鎧を “視る”。


「あぁ、そういうことか」


 トドメを刺せると踏んだのか、大振りな一撃が迫ってくる。しかしその動きはもう通用しない。


「なにッ!?」

「甘いぜヴェリト。これで終わりだ。――― 我流剣技、“深叢波ソードブレイク”」


 相手の動きを見切ることで、最短で弱点を突く為の剣技。今回は、ヴェリトと鎧を繋いでいる枠組みのようなモノを両断するに至った。本人には峰打ちのような威力でしかないが、特殊な武具を破壊するには最適の技だ。


 現れた時と同じ薄紫の粒子となって鎧のパーツが消滅し、ヴェリトはあっさりと倒れた。


「か、はっ…? なに、しやがった…、…?」

「鎧だけを斬って、繋がりを断ったんだ。さぁ、もういいだろ。これ以上俺たちに構わないでくれ」

「んなわけにゃ、いかねーんだよ……! ドミナス団長の命令なんだからな」

「どうしてあのおっさんは俺たちをそこまで…」


 目的がわからない。街を治めてるということ以外情報がないし、得体が知れなさすぎる。


「知りたければ、吾輩の下に来るといい。前にもそう言ったはずだがね」

「っ…」


 能面のような笑みに、煌びやかな衣装。噂をすれば影と言わんばかりに、倒れ込むヴェリトの傍にドミナスが現れた。毎度毎度どこから出てきているんだ?


「俺たちを招いてどうしたいんだよ」

「それは来てからのお楽しみだ。しかし、そうだなそろそろ待つのも飽きていることだし、ここは別の趣向を凝らすとしよう」

「なにを…」


 名案が浮かんだという様子でドミナスが、両手を打ち鳴らした。


 賭けてもいい。良くないことが起こる。


「蓮!」

「兄さん、何があったんですか」

「ッ、来るな二人とも!!」


 反対方向から駆けつけて来た陽子と真耶を制するが、遅かった。


 ニヤリ、と。ドミナスの口の端が釣り上がったのが見えた。


「諸君、開演の時間だ」

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