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ヒューマノイド・バネッサ  作者: ふぉるて
第1章 再起動
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#1─③

「オールエラー。これで地上階は終了です」


 エリザはそう言うと、ケーブルを抜いて男二人と共に物言わぬ機体を部屋の隅へと運び、他の機体同様に壁にもたれさせる形で安置させた。

 そして、ガイアは改めて壁に一列に並べられたジャンク機体を見渡す。無表情な者、他機体のメンテナンスを手伝うために接続していた者、笑顔で談笑していたであろう者。それぞれが最期に気ままに過ごしていたのであろう格好や表情のまま稼働停止しており、その光景に何とも言えない異様さを覚えたガイアは、機体から目を逸らしてエリザに尋ねる。


「地下の方はどうなっているんですか?」


「連合軍の拠点を改装した地上部とは異なり、ヒューマノイドモデルの為に増設された空間となっています。

ただ、最下層のエネルギー生成炉は稼働していますが、経年劣化の影響か動作が不安定なようです」


「となると、各種施設の機器は?」


「ダウンしているか、稼働してもエネルギー不足で充分な働きは発揮できないものと思われます」


 イーシスの問いに対する答えを聞き、男二人は互いを一瞥して頷いた。




◇ ◇ ◇




「施設情報の分析が完了しました。

一言言わせていただくと、不可解です」


 薄暗い照明に照らされた地下一階──兵器開発フロアに倒れていた機体へ接続しようとしたエリザが施設の全貌を把握した旨を報告する。

 しかし、その後に続いた一言を聞いた男二人は首をかしげた。

 イーシスが説明を促すと、ヒューマノイドの機体にケーブルを繋いだエリザはデータサルベージを試みつつ、自らの中に沸いた疑問を述べる。


「事前に頂いた情報では、この辺りは連合軍がヒューマノイドの侵攻を食い止めるための要であり、ヒューマノイド側の手に落ちた後も主要拠点として使用されたとありました。

ですが、新たな機体を作り出すための製造プラントがありません」


 エリザの疑問に、二人は成る程と頷く。

 そこまで地理的に重要な要所であるのなら、直接兵力を増やせる手段がある方が効率がいいに決まっている。


「まだ地下空間を拡張する予定だったとか?」


「いえ、それらしき痕跡は確認できませんでした。

また、過去の別拠点の調査レポートにも製造プラントの報告は無く、ヒューマノイドモデルはどのように作られていたのかが研究の疑問点になっています。

……プログラムデータのサルベージに成功しました、ストレージ領域にコピーします」


 ガイアの予想をマップデータの解析結果から否定した直後、接続した機体に無事なデータがあることを知らせる信号を確認したエリザが報告する。


「お、また当たりか。ツキが来てるのかな」


「地下空間であるため、機能停止の原因となった現象の影響が軽減されたものと思われます」


「成る程、それなら地下に行けばもっと無事なデータが拾えるかもしれないね」


 地下一階の機体のデータサルベージは、ごくわずかではあるものの確かな成果が上がりつつあり、 イーシスの質問に対する返答に一行の不安がいくばくか和らぐ。


 しかし直後、薄暗かった光源が一気に暗くなり、辺り一面が暗闇に包まれる。


「何だ!? 灯りが──」


 だが、光源はイーシスが言葉を言い切る前に復活した。


(急いだほうがいいと言う事かな……)


 先程エリザが言った言葉を思い出したイーシスは、この階層の調査を切り上げて最下層の調査を提案しようとする。

 しかし──


「お二方に提案があります。最下層に向かいましょう」


その言葉は、過去数回行動を共にして一度も調査を急かさなかった人物──エリザの口から先に提案された。

 その言葉に驚く二人だったが、直後にエリザの口が動く。


「先程明かりが消える直前、最下層・修復プラントの座標から救難信号を検知しました。

先程の明滅は、救難システムの発動にエネルギーのリソースを割いた結果と思われます」


 二人に戦慄が走った。

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