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短編集  作者: 双葉 はる
9/11

ワラビもち戦争

焼芋戦争の続編みたいなものです。

風浜 竜。夏には焼きトウモロコシ、秋冬には焼芋屋さんをやっているが良く考えたら春、梅雨の季節には売るものがねぇ!!どうするべ!?とおもっていた時先輩がいいました。


「そうだ。ワラビ餅を売ろう。あれ美味いし。」


そうだ京都に行こう!じゃ無いんだから…。そう思いながらも俺は行き詰まりを感じていた。


確かにワラビ餅は美味い。それにこの季節焼芋はいらねぇ…。


背に腹は変えられぬというやつか…。


「あ、でも豆腐売るってのもありか。あれ美味いし。」


豆腐か…。一見定番に見えて案外今はなくなってしまったあの豆腐屋さん!!


追いかけすぎてボール張った水…じゃねぇや水張ったボールをぶちまけちゃうあの豆腐屋さん!!


灯油と似ている豆腐屋さん!!


焼芋戦争の時の栄光(?)でご近所ではすっかり有名になってしまった俺は、今度はワラビ餅と新鮮な果物、あと何故か豆腐を売ることとなった。


「美味しい〜美味しいワラビ餅ですよ〜。」


駅前の近くにトラックを止めて。とりあえずここで出陣の時を待つ。


さっそく人がやってきたようだ。


朝のこの時間にこんなトラックの為に足を止めてくれる人は少ない。ただ幸いにも今日は晴れている。


俺は勢い良くトラックから飛び出して行った。


真っ先に目に入ったのは選挙演説をしているたすきを掛けたおっさんだ。


選挙権の無い俺には関係の無い話だか当選すれば財産相続の際の税を引き下げるとかなんとか良

いことをいっているようだ。


実際にそんな事してくれるかどうかなんてしったこっちゃないけど。


「ワラビ餅。いかがですか?一パック300円。なんと焼き芋の値段と同じなんですよ。」


おっさんはあからさまに嫌そうな顔をした。朝からお疲れなのは分かるがそれはないだろう。


「子供のお土産に一つどうですか?マジでうまいんすよ?」


おっさんは早足で立ち去ろうとしたが俺がしっかりとその肩をホールドした為に動けなくなってしまった。


「あのねぇ君何がしたいの?おじさんは今急いでるんだ。君にかまってる暇なんて・・・。」


「選挙権のある人間にそれはないんじゃないの?親に言えば大切な二票が変わるんですよ?」


おじさんの動きは止まった。俺はその瞬間神になったような気がした。


ふはははは貴様はすでにわが手に…なんて馬鹿なことを考えてしまった。







てへ☆


「てへじゃねぇよ。で、幾らですか…。」


おじさんは財布を取り出した。


「うっしゃああ!!」


俺は思わず叫んだ。アホだ…おじさんはそんな目で俺を見ていた。


「あ、300円です。でも…10個位買ってくれますよねぇ…???」


おじさんは目を即座に電柱へと向けた。こっちむけぇぇぇぇ!!!俺は念力を送りつつワラビ餅

のパックをひとつ手に取った。ぷるんとしたあのなんとも美味しそうなあれにおじさんは目をそらせなくなってい…たのだがこっちを向くわけにいかずチラ見していた。


(おじさぁぁぁぁん!!あんた…。)


おじさんは俺の事をアホだと思っただろうがあんたも充分あほだろぉおお!!


「…薔薇嬢に一個、葵ちゃんに一個…父ちゃんに一個…ママに一個…自分用で・・・。すんませんやっぱ五個で。」


(薔薇嬢って何!?)


薔薇嬢…月刊Asu○aで大ヒット独走中らしいやつの題名から取ったという昼キャバで働く北島奈津美さんの職業名です。


ママとは常連の飲み屋のママ。父ちゃんはマジに彼のお父様の事。


「一人2パックずつ位軽いですって!!ほら買ってけよ!!」


強引な押し売りを試みてみる。


それで客が買うかどうかは客しだいだ。が成功する事を期待したい。


「でも…今別に流行でもないワラビ餅なんて薔薇嬢よろこばないんですよ〜。彼女…流行には敏感な人ですから。今トルコ風アイスとか持ってくと超喜ばれるんですけどね〜最先端のお菓子だぁって。」


(いや…トルコ風アイスって…どこで売ってんの!?最近見ないけど…な)


「薔薇嬢さんって彼女さんですか?」


(きっと真っ赤な造花の薔薇を花瓶に生けて擬人化妄想してるんだろうなぁー。)


「いえいえ、大事なワイフですよ。」


おーい…市議会選挙のおじさーん 嘘はよくないですよー。


おじさんはふっと変な笑みを見せてくれた。額に光る汗が俺には少しだけ…不快だった。


「ワイフ?財布の一種ですか〜。さいですか〜。」


面倒くさげに見せているが頭の中ではワイフってどういう意味だっけ!?とマジに考えておりま

す。


風浜流解釈薔薇嬢=花瓶に入った赤薔薇の造花の柄の入った財布。


「ははは・・・。貴方は面白い事を言われるのですね。」


いやマジで英語わかんないだけなんで。金が無いからテレビもパソコンも新聞も無いから情報源ラジオOnrili(*正しくはonly)だからなぁ…。


ラジオ英会話もろくに聞かなかったし。


なんだかよくわからないが俺の必死の言葉をおじさんはおやじギャグと思ったらしい。


そんでなんだか上機嫌だ。まじで何でだかわかんねぇけど。


「俺はいつでもマジですが。あ、そういえば知ってます?風俗店とかで今ワラビ餅が流行らしくてもう持ってくだけで女の子が指名しなくても寄ってくるとか…。」


そんなことありません嘘八百です。っていうか公務員がキャバクラ通いしてていいんですかねぇ…。


おじさんはぴくりと肩を震わせた。すっかりおじさんとの会話に夢中になっていたが買い物のオ

バサン達が通る時間帯になってきた。


「お肌プルプル十歳は若返ると大好評のコラーゲンたっぷりワラビ餅がたったの一パック300円!!こんなお値打ち価格今だけですよ!!」


俺は外に向けて声を張り上げる。


「若返りのワラビ餅か…。」


おじさんはぶつぶつと呟いている。


首討ち取ったり。


気分は戦国武将だ。相手の生首を片手に雄たけびをあげるような…。


「気が変わった。やっぱワラビ餅20パック買ってくわ。」


「お買い上げありがとうございましたー。またのご来店を!!」


なんかよく知らんけどどっかの江戸風の女の人が描かれている5000円札と千円札をいとおしげに

握り締めていると近所の奥さんがやってきた。


彼女とは一回さしでやり合ってみたいと思っていた。前回は子連れで惨敗だったから。


今回の方がかなり難易度は上がったと思われる。ただ今回は論理的という強みがあるのだ。幾ら


あのおばさんでさえそう簡単に負ける気はしない。


俺の頭の中で勝負の始まりを告げるコングが鳴り響いた。




続く!!・・・よ?


2009.6.16


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