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菜食主義

二話ぶりに久楽と翔の二人。美濃は塾で勉強中。

「なぁ久楽(くだら)、宇宙人ってほんとにいると思うか?」

「なんだ急に」

「昨日ネットでUFO映像まとめた動画見付けてさ、どれもこれも本物っぽくみえたんだよ」

「まぁ宇宙人からしたら俺らが宇宙人だし、居ないとは言い切れないよな。その映像が本当に本物かはさておき」

「たしかに!そっかぁ、居るとしたらどんな奴だろうな」

「さぁ」

「どんな味なんだろう……」

「発想が狂気に満ち過ぎだろ」



今日も今日とて、部室でダラダラする俺と(しょう)。空はどんより曇り空。雨は降りそうにないが、元々日当たりの悪いウチの部室はいつもに増して薄暗い。



「でも、生き物だったらとりあえず食ってみるのが人間ってもんじゃん」

「ナマコですら食うからな」



あんな見た目のグロいもんよく食おうと思ったよな、最初に食った人。でも一度食べたが、たしかに美味しかった。



「その点、菜食主義の人達ってすげーよな。逆に自分で食いもん制限してんだもん、俺には出来ねー」

「色んなベジタリアンの人とか、前に流行ったヴィーガンとかな」

「ヴィーガンは最近も聞くけど、あれってなんか違いあんの?」

「ベジタリアンって大きなくくりの1つがヴィーガンらしい」

「あ、そーなの?」

「ベジタリアンにも色んなスタイルがあるみたいだぞ。乳製品はオッケーとか、卵はオッケーとか。その中でもヴィーガンは動物由来の食べ物は一切食べない人を指す言葉なんだとさ」

「ほー、要は一番厳しい制限をかけてんのか」

「詳しくは知らないけど、そういうことなんだろうな。皮製品とかも使わならしいし」

「健康のためか知らんけど、そこまで情熱傾けられるんの凄いな」

「肉食った方が健康には良いって話もあるけどな」

「ありゃ」



動物由来の食べ物を摂取しないと、どうしても栄養は偏りがちになる。そこは色々工夫はしているんだろうが、そんな事するならそりゃあ適度に肉を食った方が話は早い。


例えば必須アミノ酸は動物由来の食物からは簡単に摂取出来るが、菜食のみで賄うのであれば十分な知識が必要だ。大豆さえ食べていればタンパク質は補える、なんて考えは実は大間違いなのだ。


漠然とした知識で健康やダイエットの為に無理な食事制限をするのは、実はかなり危険なことと言える。適度な運動をし、間食を控え、規則正しい食生活をする。または、きちんと食事制限について理解してから実行する。楽しようとせず、『急がば回れ』が結局一番なのではないだろうか。



「じゃあなんでヴィーガンって肉とか魚食わねーの?」

「動物が好きだったり、命を奪うことに抵抗があったり、色々あんだろたぶん」

「ピッ〇ロ大魔王みたいに肌を緑にしたいとか?」

「野菜食って緑になんなら今頃日本人は米のせいで真っ白になってるわ」

「味噌と醤油が米で薄まって肌色になってんだよ」

「食うもので体色が変わるシステムなんなんだよ」

「ついでに言うとみんな髪が黒いのはひじきのせい」

「味噌や醤油はともかく、ひじきをほぼ毎日大量に食ってるやつなんか居ねーわ」

「ここに」

「お前かよ」

「まぁ全部嘘なんだけど」

「分かってたけど1回殴っていい?」

「すいませんでした」



……しかしまぁ、たしかにヴィーガンがヴィーガンたる動機は、俺たちのように普通の食生活に満足している人からすれば理解しづらい部分もあるのは確かだ。


かく言う俺も、何故世の菜食主義者たちが菜食主義を掲げるに至ったのかは分からないしな。



「つーか動物が死ぬのが嫌って、その動物達は他の動物食って生きてるんじゃないの?」

「全部じゃないけど、そりゃそうだろうな」

「ふーん……」

「どうかしたか?」



苦笑いとしかめっ面の間のような、妙な表情になる翔。……なんとなく言いたい事は分かるけどな。



「それってさ、『動物が死ぬ』のが嫌なんじゃなくて、『動物の死に自分が関わる』のが嫌ってことだよな」

「……確かにあの活動は食用や動物実験、皮革に用いられる動物の数は減るだろうし。1人じゃ微々たるものだが」

「沢山そういう人が集まれば、もっと減るだろうと」

「そう。だからこそ、ヴィーガンの人には周りにヴィーガンになるよう勧める人もいる。勿論、一部の人たちだけど」

「いやでも肉も魚も美味いし、俺は無理だな」

「それは同感だな」

「トカゲが自分で切った尻尾とかな」

「普段何食ってんだお前」

「ヘビとか、カエルとか」

「お前ん家ほんとに日本?」

「ま、動物の幸せ考える前にまずは自分の幸せ考えねーとな。美味いと思うもんは食う、けど動物は大事にする。俺にできんのはそのくらいよ」

「おお……珍しく翔がまともなことを……」

「俺のことなんだと思ってんの?」

「宇宙人すら食おうとする『暴食』の権化」

「それはあれだから、宇宙人は動物じゃなくてヒトだから」

「言ってることが怖すぎるわ」



その晩、帰宅した後になんとなく見ていたテレビ番組で外国の人が「タコを食べるなんて信じられない!魚も生で!?クジラ!?日本人はクレイジーだ!」と言っていた。


……確かに案外、最初に宇宙人を食べるのはこの国かもしれないな。

面白いと思ってくれたら、評価やブックマークよろしくね。


※この作品は実際の主義・思想を批判するものではありません。

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