1Iwonder what you see. ①
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拝啓、
セヴィロッテ・セーラン公爵令嬢様。
様々な出会いの多き季節となりましたがお元気でしょうか。
この間の舞踏会で初めてお姿を拝見しましたが、まるで花の精霊の様に凛と美しく煌めいており、目を奪われてしまいました。
まだ、婚約者の席が空席だと聞いていますが、それは本当なのでしょうか。
初めて会ったあの日から、あまり時が経っていませんが、貴方をお慕いしております。
一目惚れなのです。
この気持ちは決して偽りではないと神に誓いましょう。
どうか、お考えください。
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「あら。」
真っ白な手を口元に当て、少女は呟いた。
それと同時に丸眼鏡をかけたメイドが、ポトトトと光に反射して琥珀色に輝く紅茶をティーカップに注いでいる。
少女は読んでいた手紙を机に置いた。
「まぁ、嬉しいお手紙だわ。けれど、今は誰とも婚約するつもりは‥‥‥?いえ、メリンダ。この方は‥‥‥。」
言葉を一旦止め、紅茶が注がれたカップを少し傾けて飲んだ。
「はい。」
その先の言いたいことを感じ取り、メイドのメリンダがその疑問の答えを話し始めた。
「その方はミクエンス伯爵の次男であるジャスパー・ミクエンス様です。何でも学園の騎士学科に入っており、1位、2位を争う強さなのだとかーー」
「そこは知っていてよ、表じゃないわ。裏は?」
しかし、その言葉を待っていなかった彼女は不機嫌そうにメリンダの話を遮る。
「えぇ。」
その言葉を待っていましたとばかりに、メイドは丸眼鏡の奥を輝かせた。
まるで、目の前に獲物がある虎の様だ。
「このように。」
スッと自分の主人である少女の前に写真を数枚並べた。
「なぁるほど。」
持っていたカップの中の紅茶にわずかながら波がたった。
そして少女は写真の上でゆっくりとカップを傾かせる。
ビヂョヂョヂョヂョヂョ
写真はあっという間に茶色く色付き、それと同時に写真を置いていた白い大理石の机にも赤茶色の液体が広がった。
薄ピンクの唇が弧を描く。
「面白くなりそうだわ。」
濡れた写真はインクが滲み、何が写っていたかわからなくなっていた。
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