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長いファンレター

作者: 卵

それを見た時、僕の体は感動に震えた。

DRUMTAO…もっと早く出会えていればよかった。


2018年4月。僕は佐賀県の多久高校を卒業し、大分県日田市にあるとある企業へ就職した。なぜ一人暮らしをしてでもこの大分へ就職したのか。別にこの仕事がやりたかったわけでもない。大分が好きなわけでもない。家を出て行きたかったわけでもない。

太鼓をしやすい環境へ行きたかったのだ。


僕は高校1年生の頃から琉球太鼓をやっている。きっかけは母親からの紹介だった。当時僕は部活のメンバーとの意見の食い違いから、学校は不登校気味になり、LINEに登録していた友達全員をブロックしたり、父親と毎日喧嘩をしたりと散々な日々を送っていた。そんな時母から太鼓をやってみないかと誘われた。


小さい頃から地域の行事『浮立』が大好きで、自宅でも調理器具を使って太鼓の練習をしていたと母から聞いたことがある。そうだろう。僕は太鼓が大好きだ。


だから僕は琉球國祭り太鼓への入団を決意した。

初めて体験に行った日のことは昨日のように覚えている。ただ見学するつもりで行ったのだが、その場の流れで太鼓を打たせてもらえることになった。ドン、ドン、ドン、ドン。ただひたすら板打ちを行うだけ。ドン、ドン、ドン、ドン。メンバーは曲にあわせて体を動かしながら太鼓を打つ中、僕はその板打ちを行う。

とても楽しかった。心から太鼓を打つのが楽しいと思えた。気づけばもう1時間がたっていた。右手人差し指の付け根は皮がめくれ、血が出ていた。でも痛み等は感じなかった。その日入部届を出した。


帰り道、母にこう言った。

『すげぇ楽しかった。』

すると母は言った。

『ただ打ってただけじゃん笑』

確かに傍から見ればつまらないだろう。

しかしながら僕にとっては初めて本気でやりたいと思う事ができたのだ。


それからというもの、練習には毎回顔を出し、自分で言うのもなんだが支部長からはとても期待されるほどの成長を遂げた。




そして時は流れ高校三年生。

そろそろ就職先を見つけなければならないのだが、特にやりたい仕事もなかった。太鼓がやりやすい環境の整った職場ならどこでもよかった。しかし僕は成績はあまりいい方ではなかったので、県内のいわゆる大企業は殆ど同級生が先に取ってしまったのだ。そして大分へ行くことを決めた。太鼓のため。太鼓ができるなら独り暮らしも頑張れる。そう思った。




就職し、数日がたった頃。会社の玄関にとあるポスターが貼ってあった。DRUMTAO時空旅行記のポスターだった。僕は和太鼓には全く興味がなかった。面白くなさそう、つまらなそうだったからだ。だから特にこのポスターも気に留めていなかった。しかし毎日目にするにつれ、考えるようになった。種類は違っても彼らはプロなんだよな。見に行けば何か参考になるかもしれない。

そう思い、リハーサル公演のチケットを購入した。




リハーサル公演当日。

会場にはたくさんの人がいて、ロビーにはメンバーの旗のような物が飾られていた。

この人達が…

舞台には幕が降りており、白黒のビルの映像が投影されていた。この重低音の響くBGM。聴いていてとても気持ちが良かった。

TAOってなんだろう。どんな演奏をするんだろう。動画で見たことも無かったから想像が膨らんでいった。


BGMが大きくなった。来るぞ…

映像がより暗くなった。

席が舞台に近かったからか、幕の裏にうっすら人影が見えた。いよいよだ…


ドン!…………一人が力強く太鼓を打つ。

その瞬間全身に鳥肌がたつ。ひとり一人打つ毎に雷のような照明でメンバーが照らされる。

なんだこれは…こんな演出があるのか。

今まで自分がやってきた太鼓との差を知り、どんどん興味が湧いた。


『…えぇぇいっ!!…ドドン!!!………』


これがプロの迫力なのかと感心していた。

そしてリズムが変わる。

ドンドコドンドコドンドコ………………


幕が上がる。奥から太鼓を担いだメンバーが出てくる。


ドンドコドンドコドン『はっ!!』……………

ドンドコドンドコドン『はっ!!』……………

ドンドコドンドコドンドン『はっ!!』………


そして会場が静寂に包まれる。

と、その瞬間…


よっ!という掛け声と共にメンバーが一斉に太鼓を叩き始めた。


この時の感情をどう表せばいいのだろう。


演奏しているメンバーの顔は皆笑っており、中には後方を振り返り、微笑み合いながら叩いている人もいる。

とても楽しそうだなと感じた。とても楽しんでいるなと。それでいて見ているこちらもとても楽しくなった。


舞台をかけ巡るメンバー。華麗に舞うその姿は勇ましくもあり、綺麗でもあった。


時間がすぎるのはあっという間だった。今まで太鼓の音というのはドンドンだけであった。それが僕の中での太鼓の音だった。しかしバチバチ!っという音もあるのか…。こんなに強弱をつけることもできるのか…。全てが新鮮であり、自分の中の太鼓の概念をブチ壊した。それでいて今まで周りから褒められて良い気になっていた自分が恥ずかしくもなった。


終演後、あまりの感動にその場を動くことができなかった。アンケートを記入しているといつの間にか殆どの観客が会場から出ていた。

と、残っていた観客に目をやると、女性が3名ほどいた。その内の一人が泣いていた。周りの女性も、泣いている女性の肩を叩き、何も言わずに泣いていた。それを見た時胸が締め付けられるような感覚に襲われた。なぜ彼女たちは泣いているのだろう。太鼓で人が涙する程の感動を与えたということか…。これがプロ…。太鼓ってそんなにすごい楽器だったのか…。ここで僕は思った。


僕も太鼓で人を泣かせてみたい


帰宅後すぐにYouTubeでTAOを調べた。見ても見ても飽きなかった。


それからの毎日はTAOの事で頭がいっぱいだった。


またいつか見に行きたい。絶対見たい。




自分の演舞にTAOを取り込もう。今までは言われた事をただこなすだけだった。指摘されたら訂正し、手順通りに演舞する。これが自分の中での『上手』だと思っていた。しかし公演を見て変わった。彼らは自分らも楽しんでいたが、まず目の前の観客を楽しませようとしていた。この日太鼓に対する姿勢がガラリと変わったのだ。





毎日TAOの動画を見ていると自分も入団したいという気持ちがドンドン強くなっていった。あの感動を自分も与えられる人になりたい。


そして8月のオーディション。結果は2次審査で面接前に落選。正直悲しかった。それでいてTAOは甘くない事がよくわかった。

自分は体力、筋力には自信がない。だから面接で気持ちを伝えようと。しかしその面接すら受けれなかったのだ。


数日後の夏フェス。初めての夏フェス。

僕はとても楽しみにしていた。またTAOが見れるのも嬉しいが、なにより一番楽しみだったのが岸野さんである。動画を見てるうちに彼に憧れるようになった。でもリハーサル公演の時、彼の姿はなかったのだ。夏フェスなら見れる…。


そして12日。開場直後の握手で憧れの岸野さんを初めて見る事ができた。それだけでなく握手もできた。この日は一人での夏フェス参加だった。ずっと岸野さんと話したかった。サインも貰いたかった。でも周りにはファンの方がたくさんいて近づくことができなかった。せめて自分が明るい性格だったら。その日サインを貰うことも、話すこともできなかった。


赤兜ライブ。

またあのTAOが見れる。そして今回の時空旅行記で1番好きなオープニング。あのBGMから1人ずつ太鼓を打ち、後々出てくるメンバー。この構成がとても好きだ。

そして出てきたメンバーの先頭に岸野さんがいた。


やっと…やっと見れた…

この人が叩いている姿を見るために今日は来た…


Beat Beat

この最後の岸野さんの叩き方が好きだ。

顔をしかめて本気で叩いている!という感じがする。


江良さんの大漁旗演舞で屋根に当たった後の

『やっちまったぜえ!』


腹筋太鼓での煽りや、メンバーいじり


シンゴさんと清田さんの大太鼓のあと、熱そうに足をひくひくしながら退場する二人。


終始面白くて飽きなかった。


そして夏フェス12日が終わった。


翌日13日。この日は大太鼓のワークショップにも参加した。そして母親と二人での夏フェス参戦となった。

まずはワークショップ。

稽古場に入るのはオーディション依頼だ。

あの時とは全然見た目も違った。


そしてバチセットを購入した僕は新品のバチで太鼓を叩く。やはり普段やっている琉球太鼓と違うところの皮がむけた。血が出た。でも痛くなかった。あぁ。数千円のバチが血だらけに…。

そして本番。

想像以上の観客の多さに圧倒されたが、笑顔で演舞できた。

インタビューではTAOを目指すと言った。

このステージで叩いてみてわかった。僕にはここしかない。僕はここで輝きたい。


ワークショップのあと母親にバチを見られ、あのときと同じだね。と言われた。なんだか懐かしい気分になった。あの日から僕の太鼓人生が始まったのだから。


そしてこの日が僕の最後の夏フェスだった。どうしてもやりたい事があった。それは岸野さんとのツーショットとサインを貰うことだ。ワークショップのあと、江良さんと岸野さんが歩いていた。写真を求めてみたが、あまりの緊張でエラさんにしか話しかけれなかった。エラさんとの撮影が終わり、岸野さんも…と思ったが、ファンの方に捕まっていた。僕は諦めかけた。

しかしどうしても撮りたかった。だから勇気をだして声をかけた。


『き…岸野さん…写真いいですか?』


快くOKしてくれた。心臓はバクバクだった。

撮れた…撮れた!!!

心のそこから叫びたかった。


そして数時間後、岸野さんのお店にも並び、色紙とリュックにサインを貰うこともできた。一生の宝物だ。















あんな楽しかった夏フェスも終わり、時は流れ9月。

11月のオーディションに応募した。




結果は一次で落選。




一度落ちたらもう上がれないのだろうか。




いろいろな考えが頭をよぎった。




でも諦めるわけにはいかない。




俺は絶対TAOに入るんだ。

そう決めた。決意した。




何があっても屈しない。




来年。再来年。受かるまで応募し続ける。




僕はいつも自分にこう言い聞かせてます

『TAOは夢ではない。目標なのだ。』と。



あの日僕の太鼓に対する考えや気持ちを全て変えたTAOを僕がそう簡単に諦めきれるわけがない。



岸野さんと写真を撮り、サインを貰う。

この目標は達成できた。



次の目標は岸野さんと同じ舞台に立つこと。



それだけ。








〜終〜








あとがき


初めてこの様な長い文章を書きました。

これは僕がTAOに出会って感じた事をできるだけ細かく書きました。

とても長く、読みづらく、分かりにくい文章だと思います。

僕が言うのも何ですが、できればメンバーの方にも読んでほしいと思います。

TAOの皆様には心から感謝しています。

そしていつかメンバーとして皆さんと共に活動できることを目標にこれからも頑張ります。


メンバー、スタッフの皆様もお体に気をつけて頑張ってください。

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