表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の海の管理人  作者: 椎谷弥生
第1章 2つをつなぐ星
9/41

第8話 曇時々笑い

「あけましておめでとー!」

「おめでとー。12月だけど!」




ある日、寒い教室に結衣奈の声が響いた。



その声を向けられた先は香菜。冬の朝、若干の曇り空を打ち砕くかのように叫んだ内容は、特に意味のないものだった。



「なんでいきなりそんな挨拶?」

「ん〜、寒いからテンション下がるからさ、だから上げていこーー!って思って。」

「それにしては・・・テンション上げ過ぎじゃない?」

「だって寒いじゃん。」

「まあ確かに寒いけどね。」



そう言うと香菜は、結衣奈の前でマフラーに顔を埋めた。口元を隠し、目だけで自分を見つめる香菜に、なんともいいようのない感情を覚え、結衣奈は彼女に抱きついた。



「ど、どうしたの?」

「ううん、なんとなく!」

「あ、でもちょっと暖かい。」

「でしょ?」

「重いけどね〜・・。」

香菜はそうつぶやくと、結衣奈を引き剥がし、カバンを机の上に置いた。




クラスの中にいた人たちはいつもよりも少なく、少し静かだった。そのせいか、結衣奈の声もいつもよりも響いた。





「それにしても人、少なくない?」

「うん・・・いつもだったらもう大半は来てるはずなのに来てない人の方が多い・・。」

「さすがに受験の影響、ってわけじゃないよね、まだ12月だし。」

「でももう12月よ?」

「早いな〜。」



「そろそろ本当にYouTubeばっかり見てたら落ちるよ?」

「大丈夫!ちゃんと勉強して今のところ模試もA判定だから!」

「ほんと結衣奈は賢いよね〜憧れるわ。」

「まあ女子だけの生活も今年で終わりだしさ、来年から楽園が待ってると思えば頑張れるよ!」

「あのね、結衣奈。必ずしもみんな共学に行くとは限らないのよ?」

「あ、そっか。香菜、品山高校志望だったっけ?あそこ女子校だもんね・・。」

「なんかね、共学より女子校のほうが落ち着くから・・・。」



「なんか不思議ちゃんだね〜。」

「そう?」





その日、電車の遅延が起きたことが、後に校内放送で知らされた。勉強できると喜んだものもいれば、帰るのが遅くなると文句を言うものもいた。




「あ、雨降ってきた。」

「え?うそ〜!傘持ってきてないよ〜どうしよ〜。」

「おい、永山!授業中だぞ。静かにしろ。」

「はい〜ごめんなさい・・。」

「あら〜結衣奈怒られた〜。」

「うるさいよ〜香菜が雨降ってきたとか言うからじゃん!」

「だって事実なんだもん。ちなみに私は傘持ってきてます!」




そう言うと彼女は、自慢げに折りたたみ傘を見せた。結衣奈はそれを頬を膨らませて見ているしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ