第4話 繰り返し×繰り返し
「う〜ん。まさかそう返ってくるとは思わなかったなぁ。」
「私自身驚いたもん。」
「でもお母さんの言ってることもわかる気がするけどね〜。」
「え〜香菜までそんなこというの〜?」
「さすがに学校ではやってないけどさ、結衣奈ずっとゲームの話してるじゃない。どこどこがクリアできたとか。」
「うう・・・・。」
「とりあえずさ、自分でできることを示してみせたら?」
「っていうと?」
「たとえばさ、パソコンを自分で時間決めて使うとかさ。」
「でも飛行機とか星の動画見てたら時間経つの早いんだもん。」
「それがだめなんじゃない?」
「う〜ん・・どうすればいいの〜!」
クラスで突然声を上げた結衣奈にクラスの奇異の目が集まり、彼女は教室をそそくさと出ていった。
「一人で、かぁ。」
彼女は図書館で一人でつぶやきながら体を後ろにそらした。図書館の蛍光灯が目に入る。そして蛍光灯を遮るようにして一人の顔が覗いた。
「あ、香菜。」
「結衣奈何してるの?」
香菜の問いに結衣奈は体を起こすと体のむきを変えた。
「あーうん、英語の単語テストの直し。落ちちゃって。」
そう言うと彼女は机の上のプリン卜を示した。すでにそこには3つほど単語が何回も繰り返されていた。香菜は机に顔を近づけると、そのプリントをひっくり返した。
「あ、ちょっと。」
そう言って制したものの、すでに遅く、香菜はプリントをひっくり返してしまっていた。
「9点ですか〜・・・。」
「うん。だって朝気がついたんだもん。今日テストあるって。」
「私もそうだけど満点だったよ?」
「香菜は賢いもん!」
「暗記力って学力と関係ないと思うよ。」
「そうなの?」
「だって私数学できるけど社会からきしだめだもん。」
「その割には毎回学年一桁取ってない?」
「う〜んあのへん私得意だからさ〜。」
「いいなぁ。」
「それよりやらなくていいの?」
「あ。」
香菜に指摘され、結衣奈は慌ててペンを手に取り、書き始める。
一方香菜は結衣奈の隣で席を引き出すと座った。彼女は頬杖をつくとじっと結衣奈の顔を眺める。その目線にくすぐったくなり、彼女のほうを向くと彼女は目線をそらした。顔を戻すと香菜も顔を戻した。
結局その繰り返しを軽く3回くらいは繰り返しただろうか、結衣奈が英語のプリントを仕上げると同時に香菜は席を立った。
「帰る?」
「うん。香菜は?」
「別に学校にいる意味ないから帰るよ。」
「だよね〜!」
図書室の扉を開けて外に出た。暖房も何もついてない廊下はとても寒かった。