第27話 重い不安
高校に入って最初の憂鬱な行事、中間考査が迫ってきた。
「なんかさー、中間前にいろんなことがありすぎてまだ中間考査終わってないのかーってなったよー。」
「そうですね、本当にいろんなことがありましたね。」
「ってなんか終わりみたいじゃん!まだまだこれからなのに!」
「そうですねー。」
「莉子ちゃんの発言が棒ー!」
「棒読みじゃないですよ。でもちょっと疲れちゃって。」
「そっか、200メートル6本走ってその後5キロも走ったら疲れちゃうよね。」
そのまま結衣奈は水筒の水を大量に喉に流し込んだ。走ったあとに何度も流し込んだ水の味に彼女は少し飽きを感じた。
(明日からお茶にしてもらおうかな・・・)
「あの結衣奈さん、着替え忘れてます。」
「え?あ・・・。」
「もう結衣奈さんいつも忘れてません?忘れやさんですね。」
壁に寄りかかって結衣奈を眺める莉子の前で早着替えを済ませると、更衣室を出た。鍵を閉めてくれる先輩に挨拶をすると、靴を履き替えて学校を出る。
「明日から一週間前やからクラブはなしや。中間考査に向けてちゃんと勉強せえよ。」
クラブ終了前、顧問から伝えられた4文字に結衣奈の気は重かった。
「中間考査の勉強しなきゃなー・・・。」
「結衣奈さん勉強苦手ですか?」
「苦手ってわけじゃないんだけど、中学校のときは友達に勉強すごい見てもらってたかなー。」
「前言ってたお友達ですか?」
「うん。確かあの子女子校行ったんだけど大丈夫かな。ちゃんと女子やってるのかなぁ。」
「さすがにそれは女子校の人に失礼ですよ。」
「でも香菜から送られてくるラインの内容大体女子女子しすぎててなんか怖いんだよね。あ、友達って香菜って言うんだけど。」
「そうなんですか。あ、私勉強ある程度得意なので教えてあげますよ。」
「いざとなったら頼ろうかなー。」
「どうぞ。」
いつも通り、なにも変わらない日常。結衣奈の気持ちが重いのも、いずれいつものことになるのだろう。
「あーもう!全然わかんない!」
「そこは、とりあえず2つをまとめて一つの文字としておいて計算してあとから計算するやつですよ。」
「そうだったー!」
放課後の教室で、彼女たちは机を向かい合わせて数学の問題を解いていた。とは言え、専ら結衣奈が莉子に質問をぶつけることしかしていなかった。
結衣奈が数学系の科目が苦手なところは今も中学のときも変わらず、早くも高校分野の数学に不安を感じ始めていた。




