第23話 雨と曇天と一人
「そういえば高校入って雨なの初めてじゃない?」
朝、重苦しい雲が空を覆っていたと思えば、午後から雨が降り出した。
結衣奈は窓から雨に打たれるグラウンドを見下ろしながら莉子に声をかけた。
「そうですねー。今年はなんか高気圧が結構勢力張ってて雨全然降らないらしいですよ。春は。」
「へーえ・・・。でもこれだとクラブできないよね・・・。」
ため息とともに吐き出された言葉に莉子の返しが乗っかる。
「例の熊田先輩が、雨の時は校舎とかでトレーニングするって言ってましたよ。なのでクラブがなくなることはないと思います。」
「と、トレーニングってなにするんだろ・・・。」
「そこまでは私も聞いてないのでやってからのお楽しみですね。」
「なんか嫌な予感がするよ・・・。」
結衣奈はもう一度ため息をつくと、机の中から次の授業の教科書を取り出し、机に突っ伏した。
莉子の言うとおり、部員が集まったのはグラウンドではなく、とある教室だった。
行ったときにはすでに教室の後ろ半分は埋まりかけていて、二人は教室の前の方に座らざるを得なかった。
前から回ってきたプリントを上から下まで軽く読み終えたあたりで前にたった顧問が口を開いた。
「今日から期末までの予定と、それから部報。一応親にも見せてちゃんと活動してるって見せてな?
で、予定表に書いてある通りなんやけど、今から一ヶ月後、やから5月の27くらいにこの地域の記録会があるんや。前に配ったやつには書いてないけどな。で、これのエントリーをこれから一週間受け付けるから、出たい人は一種目300円、リレーは一人100円持って俺のとこ来てくれ。それくらいやな。短いけど今日のミーティングはこれで終わり。メニュー取りに来てないやつは取りに来い。以上。」
一人で言葉をすべて言ってしまい、話が終わると教室のなかの部員はぞろぞろと教室を出ていった。