第12話 計算間違い
「まあ、受かってるんだからいいじゃん。」
「そうなんだけどさぁー。」
「計算間違いが多い結衣奈さんに計算問題100問作りましたー!やってみてねー。」
目の前にぽんと置かれた紙の束に目を見張る。
「さっきせっせとやっていたのってこれ?」
「うん。」
「テスト前なのにほんとよくやるよね、香菜は。」
「まあこれくらいちょちょいのちょいでできちゃうから。」
見ると至って簡単な計算問題で、大問1の一番目に出てきそうな計算だった。
「これくらい解けるよ―。」
「でもテストだとちょこちょこ間違えてるじゃん。」
「はう・・。」
「大問まるまる計算問題だったら結衣奈も気をつけるから間違えないの。でも図形の問題だったら間違えるでしょ?ってこれテスト前に言う話じゃないんだけど。」
「それくらいわかってるよ―!私だって適当に過去問解いてたわけじゃないんだからー!」
結衣奈は目の前に置かれた紙の束にペンを走らせる。
香菜はそれを見つつ本を読んでいた。計算に間違いがないか、一枚終わればそのページの一番上に戻って見直す。それを繰り返しながら、彼女は最後の問題に向かってひたすらにペンと頭を動かし続けた。
「で、解いた結果、まあ全問正解とまでは行かなかったけど87点ですね。」
香菜は赤ペンを置き、結衣奈に答案を返しながらそう言った。ページを繰ると、ところどころに赤ペンで直された箇所を見つけた。
「まあ、大体は普通の計算間違いだしいいとは思うんだけど本番で命取りになる可能性もあるから気をつけてね。」
「はーい。」
「返事が軽いわね。」
「でもさ、コレ以外になんて返事すればいいの?」
「まあ、気持ちがこもってるのならいいんだけど・・・。」
「気持ちが全て!ってことか!」
そう言うと彼女は胸の前でグーサインを作った。
それを見た香菜はそっと微笑むとグーサインで返してきた。
「さてと、結衣奈さん」
「はい・・?」
「今回の計算問題では一枚ごとに計算間違いがないから確認しておいででしたが、本番でもそれをやりましょう。」
「わかってるよー。これ言うの二回目くらいだけどー。」
「じゃあこの反省を活かして次の過去問行こー!」
「ねえ、香菜。」
「ん?お腹すいた?」
「なんでその答えが返ってくるのか皆目見当もつかないんだけど・・・。というかそろそろ下校時間だよ?」
「そっかーもうこんな時間かー。」
「続きは明日だね。」
「勉強熱心な結衣奈さんは明日学校に来るんですかー。」
結衣奈の言葉に対し、香菜は少し煽るような口調で返す。
一瞬の間の後、結衣奈は今日が金曜日であることを思い出した。