プロローグ
新連載です!!ぜひ楽しんでみてください。
「なあ結衣奈。」
「なに?おにいちゃん!」
小さかった頃、結衣奈はいつも兄の背中を見上げていた。彼女より10も上の達輝は結衣奈をよく抱き上げては夜空を指差していた。
「あれが小狐座。地味だけどなんかかわいいだろ?」
そう言って笑った彼の顔はいつまでも結衣奈の心に残っていた。そう。いつまでも。
「じゃあ行ってきます!」
「気をつけてね。」
「いってらっしゃーい!」
背広に身を包んだ玄関にたった達輝を結衣奈たちは見送った。パイロットになった彼は結衣奈の憧れだった。彼女は達輝が帰ってくると話をせがんだ。そんな兄を持つ結衣奈が飛行機を好きになるのは当然といえば当然だっただろう。
だが、いつも通り達輝を見送った結衣奈はこれが最後だとは思っていなかった。彼の乗った国際線の航空機が原因不明の事故により、海面へと激突。乗員乗客全員が亡くなった事故のとき、結衣奈はまだ小学生だった。彼女にはあまり大きな負担をかけないように、と彼女の両親はまだ達輝が亡くなったことをあえて告げなかった。
まだ何も知らない彼女はただひたすらに彼の帰りを待っていた。
達輝が亡くなったことを結衣奈が知ったのは小学校を卒業したときだった。彼女はそれを聞いて泣き崩れた。