派閥
午前のテストーーレビンは散々な思いをしたが、無事に終わった。今はシーナと購買に来ていた。
「さっき委員長が言ってた軋轢って何ですか? 事件でもあったんですか?」
購買の列に並んでいるとき、レビンは気になり訊いた。
「え~っと、何て言えば良いのかな?」
シーナは腕を組んで小首を傾げる。
「二十年以上前に世界大戦があったのは知ってる? 今のじゃない世界大戦」
「はい。知識程度ですけど」
第一次世界大戦。レビンたちが生まれる少し前のことだ。軍国がまだ帝国と呼ばれていた時代に世界を巻き込んだものだとレビンは孤児院で習った。そのときの戦火の傷が今の大戦を引き起こした原因の一つであることも。
「そのときに軍国、昔は帝国、何かややこしいね。まあ負けちゃって皇帝やたくさんの貴族が責任を取って居なくなっちゃったんだよ。この学校も影響を受けてね貴族の子が通う学校だから退学する子が多くて学校が経営出来なくなっちゃったんだ」
「でもありますよ?」
「そう! そこなんだよね!」
小首を傾げるレビンにシーナはビッシっと指差す。
「実は経営に困った学校は、ある人たちに目をつけた」
シーナが顔を寄せてきたのでレビンは耳を傾ける。
「前の大戦で活躍した平民出身の軍人さんや政治家が力を付けて貴族の人と対等の立場になった。学校はそれを見逃さなかった。本来なら貴族だけの学校に入学を許可。ううん、入学をしてほしいってお願いしたの。だから今も学校は経営できてる。でも、貴族の人たちは良く思わなかったから、今でも『貴族派』『軍閥派』『官僚派』で派閥争いが続いているんだよ」
順番が来たレビンとシーナは菓子パンを購入し、中庭へと向かう。
「『貴族派』が他と仲悪いのは分かりますけど『軍閥派』と『官僚派』も対立しているんですか?」
レビンの質問にシーナは苦笑する。
「皇帝が居なくなって、せっかく民主的な政治が出来るようになったのに軍人に仕事を口出しされたら気分は良くないよね」
それが今の軍国だった。戦争が強い、組織が強い、兵器が強いから軍国なのではない。軍人が党を率いて政治を我が物顔で支配しているから軍国なのだ。
これを何と言うか知っているだろうか?
軍国主義の独裁政治だ。
レビンはどうしても気になったことを訊く。
「シーナさんはどこの派閥なんですか?」
それに対してシーナは微笑んだ。
「私は『無派閥』だよ」
人物設定(仮)
シーナ・ミレイ
軍国出身
商家の娘
クラス 二年一組
部活 新聞部の副部長
先の世界大戦後、巨額の戦争賠償金と世界恐慌のハイパーインフレの中を生き抜いた家のためガッツがある。姉御肌で世話焼きな性格。先の理由があるため国を世界大戦に参戦させた貴族は好きではない。
親からもらったプレゼントのカメラと情報通の影響で新聞記者を志す。