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お嬢様最前線  作者: mask
花園への転入編
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洗礼

 チャイムが鳴ってホームルームも終わり、休み時間。いつもなら塹壕に込もって寝ているが、ここは敵兵も居ない砲撃もない平和な、お嬢様学校だ。やることもなく手持ち無沙汰を覚悟していたレビンだったが、その必要はなかった。

「ねえねえレヴィさんはどこから来たの?」

「前までは共学だった? 外の学校ってどんな感じ?」

「趣味は?」

「運動できる?」

「髪きれいだね。どこの石鹸?」

「兄弟いる?」

「誕生日は? 血液型は?」

「動物好き?」

「男性のタイプは? 好きな男性は居るの?」

 転校生の洗礼。それはクラスメイトからの質問攻めである。

「え、えっと。私はーー」

「ほらほらレヴィちゃん困ってるでしょ。今日、初日なんだからいじめちゃダメだよ」

 シーナに助けられてレビンは胸を撫で下ろす。

「シーナずるい! 私だってレヴィちゃんって呼びたい!」

「お人形さんみたい! 妹に欲しいよ!」

「お姉様って呼んで!」

 しかし、お嬢様たちの勢いは止まらなかった。

「退いてくださいません?」

 その声にレビンを囲っていた女生徒たちは静まり、それを割るように二人組がレビンの前に立つ。

「改めましてレヴィさん。私はグレーテル・コリアーテ。"コリアーテ家"の一人娘ですわ」

「は、はあ?」

 二人組の金の巻き髪でいかにも令嬢な女生徒に家の名前を強調されてもレビンには分からなかった。やはりお嬢様は家名にこだわりやプライドがあるのだろうか?

「グリフィーナという家名に覚えがないのだけれど。どこから来たのかしら?」

「ここから南のアウェイルです。グリフィーナは普通の家ですよ」

 まあ! とグレーテルはわざとらしく驚く。

「貴族でないどころか軍閥でも官僚でもない平民なのですか? ああ嘆かわしい」

 彼女の言葉にレビンではなく周りの女生徒が嫌悪感を示す。

「グレーテルさん、それは言い過ぎですよ」

「別に入学したって良いじゃない!」

「そうそう。ユーランシュテは昔とは違うんだから」

 反撃されるがグレーテルはどこ吹く風。

「陛下に仇なした者共が吼えるな」

 今まで黙っていた黒ポニーテールの片割れが静かに、だが皆を黙らせた。

 て言うか、なぜ帯剣しているんだ!?

「貴様らのような軟弱な成り上がりが居るから学園の風紀が乱れて廃れていくのだ」

 一貫して冷たい声音だが憤りを黒ポニーテールの女生徒から感じる。

「ホントにいつもグチグチ言ってくるわね」

 シーナが苛立ちを露に黒ポニーテールと顔を突き合わせる。

「いつまでも陛下陛下って。恥ずかしくないの? その陛下が戦争をしたから国がダメになったんじゃない!」

「何だと?」

 一触即発の二人。まさか、お嬢様学校で喧嘩を目の前にするとは思わなかった。レビンは困惑してしまって喧嘩を止めるべき両手が宙を泳いでしまう。

「リタ、そこまでにしておきなさい。席につきましょう」

 意外にも喧嘩を止めたのはグレーテルだった。リタと呼ばれた黒ポニーテールは大人しく退がる。

「良かったですよ。リタさんが剣を抜かなくて」

 二人と入れ替わるように来たのは最初にクラス代表で挨拶した女生徒だった。

「ありがとう委員長。助かったよ!」

 シーナは、ふう、と息を吐き肩の力を抜く。

「気にしないでください」

 シーナに向いていた顔がレビンに向く。

「ごめんなさいね。皆、仲の良いクラスって紹介したかったんだけど。少し軋轢があって」

 委員長が苦笑してしまう。彼女は悪くないのに。

「いえ! 大丈夫です! 助かりました」

「そう? それなら良かった」

 委員長が微笑んでくれたのでレビンから罪悪感が薄れていった。

「そろそろ時間ですね。では、また」

 チャイムが鳴り、教師が入室する。その頃には女生徒たちは着席していた。さすが、お嬢様だ。

「レヴィちゃん準備してきた?」

 隣のシーナがレビンに囁く。

「何をですか?」

「今日はテストだよ」

「う、、、、頑張ります」

 初日から地獄になりそうだ。

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