学園長の性癖
レビンはベルーナと共に学園長室を訪ねる。
「失礼しま――」
「きゃあ! かわいいいい!」
いきなりレビンは女性に抱き着かれた。
「く、くるじい」
レビンの顔は豊かな胸に包まれる。男なら普通喜ぶシチュエーションだが、それどころではない。
窒息するーー!?
「学園長、そこまでにしてください」
ベルーナが諌める。
「転入初日の生徒にトラウマを与える気ですか?」
レビンは解放されて空気を吸う。
「し、死ぬかと思いました」
「あらあらごめんなさい!」
学園長と呼ばれた栗色長髪の女性はレビンを解放するとベージュ色のスーツを整える。
「急に抱きついてごめんなさい」
学園長は背筋を伸ばして微笑む。その姿は学園長という年齢には思えず、大学生と言っても過言ではないかもしれない肌艶と顔立ちだった。背はレビンよりは高く、ベルーナよりは低いスラリとした体型だ。
「私はユーランシュテ学園の学園長ーールクシア・バーハード。お二人を心より歓迎いたします」
「ありがとうございます」
レビンとベルーナは学園長と握手を交わす。
「それで、お二人はどんなご関係なんですか?」
「? 先に情報が伝わっていると思いますが、私と中尉殿は今作戦では上官と部下です」
「い、いえ。プライベートの方で」
何かソワソワしている学園長。レビンは小首を傾げるしかない。
「学園長、残念ながら私と一等兵はあなたの望むような関係ではありません」
「そんな~! 久し振りのベストカップリングだと思ったのに!!」
ベルーナの言葉に涙目で肩を落とす学園長。いよいよレビンには訳がわからない。
「あ、あの中尉殿。先程から何の話をされているんですか?」
「百合です」
「………………は?」
「女性同士の恋愛を示す言葉です」
「……それは私たち軍国が取り締まるべきものでは?」
「男性同士ではそうですが、百合は未だに対象外です。安心してください」
「そうですか……?」
殺気だっていたレビンが呆ける。
「私、男ですけど」
「先生はおねショタもストライクゾーンです!」
とても良い笑顔で親指を立てる学園長からはドルトムント准将と同じ匂いがすると思ったレビンだった。