軍閥過激派
そして現在、レビンは軍国の灰色ブレザーを着た追跡者たちに追われているというわけだった。
追われている中、チラリと後ろを見ると、最初の五人以外にも追跡者たちは増えて二十人ほどになっていた。
同業者に追われているみたいで焦りのようなものまでレビンは感じ始めていた。
「あっ!」
隣に敷かれていた線路を路面電車が走り、レビンを追い越していく。だが、すぐに停車する。学校にいくつかある駅に着いたからだ。
「あれに乗れば」
レビンは足を速めて路面電車に向かう。
しかしーー
「あいつがレヴィ・グリフィーナだ! 捕まえろ!」
停車した路面電車からも灰色ブレザーの追跡者たちが現れた。
レビンの足は急ブレーキ。捕まらないように進路を変えて、再び猛ダッシュ。
「路面電車も抑えられているとなると直接校舎に向かうしかない!?」
レビンは相手を甘く見すぎていた。お嬢様のコスプレ集団がここまで動けるとは思っていなかった。
「あれ? おーい、レヴィちゃーん!」
校舎への並木道。まだ朝早いせいか疎らに登校する女生徒たちの間を駆けていたとき、後ろから声がかかる。レビンは一度足を止めて相手に振り返る。
「シーナさん! おはようございます!」
「おはよう! どうしたのそんなに急いで? まだ時間余裕あるけど」
「少し厄介なことに巻き込まれまして。そういうシーナさんは?」
「私はこれから新聞部で用事があるんだ! それで厄介事って何? 助けたほうが良い?」
「でもシーナさんに迷惑をかけるわけには……」
「良いんだよ。レビンちゃんは友達だし……友達で良いんだよね? 少し図々しかったかな?」
シュンと落ち込むシーナ。
「いえ、いえいえいえ! 私はシーナさんを一番の友人だと思っています」
これは本音だった。
同年代の友達が居なかったレビンなので世間的な友達は分からないが、自分の中の友達の定義にシーナは当てはまった。
レビンにとっての友達の定義ーーそれは信じられるということ。
「待て、レヴィ!」
追跡者が近付いてくる。
「レヴィちゃん、まさか『軍閥過激派』に追われてるの?」
追跡者たちを見て顔をしかめるシーナ。
「確かに厄介事だね。でもごめん。私じゃ助けられないかも」
すまなそうに目を伏せたシーナ。だが、何かを感じて顔をあげると辺りを見渡し、それを見つけた。
「レヴィちゃん! あの馬車! あの馬車を追いかけて!」
シーナが必死に指差す方を見ると追跡者を追い抜いてレヴィたちのほうに向かってくる一台の馬車。平民が乗るような乗合馬車ではなく、貴族が使用する個人所有の馬車。
「でもどうしてですか?」
「抑止力だよ! 『無派閥』の私一人じゃ無理だけど、他の派閥なら『軍閥過激派』も手が出せない!」
シーナはレビンにとって友達だ。だから彼女を信じる。
「止まってください!」
レビンは二頭立ての馬車の前に飛び出す。すると、御者が反応して馬車はゆっくりと停止する。
「どうされましたかな?」
優しげな御者の老人がシルクハットの鍔を摘まんで微笑む。
「お止めして申し訳ありません。『軍閥過激派』に追われているので助けていただけないでしょうか?」
レビンの真剣さが伝わったのか御者は後ろの小窓から二、三会話する。
「少しお待ちを」
御者は降りると、段差のある足場を設置してレビンに手を差し出す。
「どうぞ中へ」
「ありがとうございます!」
レビンは御者に支えてもらい、馬車の中へ。
「…………」
「あら、やはり貴方でしたか」
中に居たのは一人のメイドさんと主であろう二人。
「お、おはようございます。グレーテルさん、リタさん」
グレーテルは優雅に微笑み、リタはレビンを睨み付ける。
「追われているんでしょ? 立っていないで座ったらどうです?」
「は、はい!」
レビンは緊張で一筋の汗を流し、空いている席に座る。横にはメイドさん、正面はリタ。
「出してください」
グレーテルが声をかけると御者が返事をして馬車が動き出す。
「さあ、平民。どんな面白いことを持ってきたのですか?」
グレーテルは悪戯っぽく笑った。




