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お嬢様最前線  作者: mask
花園への転入編
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部活動紹介です! ④

「部員同士で張り合って後に退けなくなったと?」

 レビンは再び溜め息を吐く。

「そうなのです。第一訓練班と第二訓練班に分かれていて私は第一訓練班の監督なのですが。あまり成績が良くなくて」

 射撃競技部にはライフル射撃、ピストル射撃、クレー射撃があり、ミクリアはライフル射撃の監督を務めている。そしてライフル射撃には十人ほどの部員が居て第一訓練班と第二訓練班で活動を行っている。

 今日は定期的にある班対抗戦の日で、現在ミクリアの第一訓練班が負けているらしい。

「レビン殿には初心者ではなく、助っ人として頑張ってもらいたいのです!」

「そんな無茶なことを言わないでください!? あまり目立つと作戦に支障が出ちゃいます!」

「そのときはフォローしますから!」

「……分かりました」

 レビンはミクリアの必死さに折れた。

「ルールを教えてください」

「ありがとうございます!」

 

 今回の対決は距離五十メートル、ライフルはスモールボア(小口径)、姿勢は三種(立射・膝射・伏射)で各五発ずつ射撃を行い、一発最高十点、百五十点満点で競う。

 各班は五人。その合計点で勝敗を決める。だが第一訓練班は一人欠員が出ているらしい。

 そこで最後の射撃手としてレビンが参加することになった。


「実践経験があるからといって、あまり期待はしないでくださいね。戦場だと安全地帯で狙撃なんて滅多にやらないんですから」

「レビン殿なら大丈夫です!」

 レビンに期待の眼差しを向けるミクリア。

「今度はその方が撃つのですか、ミクリア大尉?」

 ミクリアの隣に立ったのは第二訓練班の監督である学園近衛の女性。

「そうです。こちらはまだ負けませんよ!」

「でも、点差は三十点以上。そして第二訓練班はエースのリネット様が最後です。諦めてトイレ掃除の準備をしては?」

「ぬぬぬ」

 明らかに小馬鹿にされているのに反論できないミクリア。どうやらリネットという部員はライフル射撃の腕が良いらしい。

「試し撃ちはして良いのですか?」

「いくらでもどうぞ。まずはスモールボアライフルに慣れてください」

 レビンは競技用ライフルを手に取り、感覚を確かめる。

 銃床を右肩に当て、左手は銃身を右手は引き金へ。右頬を銃床上部に付け、精密照準器と、その先にある的を睨む。

 引き金を引く。

 耳を貫くような銃声。

 発射される銃弾、反動で右肩に衝撃。

 ーーそして静寂。

「三点」

 審判役の近衛が双眼鏡を覗いて言った。

 その後もレビンは五発撃ったが四点を超えることはなかった。

「レビンど、レヴィ様、調子が悪いのですか?」

 ミクリアが不安げに訊く。

「まあ狙撃は得意ではないので」

 的を見つめたままレビンは返す。

「勝負になりませんね」

 相手の第二訓練班監督が言う。

「監督、もう撃って良いですか?」

 声の方を見ると、すでに一人の女生徒が立射で射撃位置についていた。

「試射は良いのですか?」

「必要ないです」

「では、始めてください」

 直後に銃声

 審判役の学園近衛が双眼鏡で的を確認する。

「九点」

 後ろで見学している部員たちがざわめく。

「ハンデをつけますか?」

 第二訓練班監督の提案はこうだった。

・第二訓練班は一つの姿勢で三発までにする。その代わり、それでも負けた場合はトイレ掃除を三ヶ月に延長する。

 女生徒は立射のまま残り二発を素早い動作で撃ち終える。全て、九点か十点だった。

「どうしますか?」

 改めて圧倒的な実力差を感じたミクリア。彼女の答えはーー

「私はレヴィ様を信じます!」

 レビンにはその言葉だけで十分だった。

「確かに狙撃は苦手ですけど」

 レビンは的を狙い、引き金を引く。

 弾丸は的を射抜く。

「は、八点です」

 慌てて的を確認した審判が言った。

「別に出来ないわけではないですよ」

 レビンは相手の監督に微笑んだ。

 彼の宣戦布告だった。

 


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