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底辺だけど、異世界であがき抜く  作者: ぽいど
第二十四章 甘味を求めて 編
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二十四章の2 巨大蜂ハント

前回のあらすじ


 探検者組合の直営酒場は、新メニューとしてスイーツを開発していた。メニューその物の出来は良かったのだが、砂糖は高価であることから、全体的に甘味が薄いものになってしまっていた。そこでアデーレは、木工組合から来ていた依頼があることを思い出す。林業の副産物としてメープルシロップも扱う木工組合に恩を売れば、あるいは甘味料を安く手に入れることができるのではないか……その提案に、一郎は乗ることにしたのだった。

 直営酒場の新メニュー、スイーツ開発のため甘味料が必要になり……その一案としてメープルシロップを手に入れるべく、木工組合の出したという依頼を見る。ニクシアンが主要構成員である木工組合は副産品としてメープルシロップも扱っており、それを安く手に入れることができれば、と言う目論見なのだが……



「こちらが依頼票です。まだ処理が済んでいないのですが、まあ構わないでしょう」



 応接室で見せられた依頼票によれば、目的地は『赤星の谷』を抜けた先にある製材所……以前蝙蝠の魔獣と戦った先だ。木工組合の管轄地で、原木の伐採、製材を行う。設備も大分整ってきているらしいが、ある日職員の1人が大きな蜂が止まっているのを目にし……弓矢で仕留めたという。その蜂だというものの頭が添えられているが……



「これは……本当に、本物ですか?」


「特に作り物であるという根拠はありません」



 その蜂の頭は、3~4cmほどある。大顎(おおあご)を除けばもう少し小さくはなるが、それでも地球のオオスズメバチが小さいと感じるサイズだ。刺された時の事はあまり想像したくない。



「蜂と言うことは、群れているのでしょうね……」


「依頼内容はこの蜂の調査と、脅威であるなら排除することです。群れと戦うことは前提としておくべきでしょう。流石に、無策で未知の相手に突っ込むほど無謀ではないでしょう?」


「そのつもりですが……」


「それなりに経験は積んでいるのですから、解決法は導き出せるものと考えます。報酬は金貨で10枚。また、この蜂は討伐奨励金の対象となることが決定していますので、さらに上乗せされるでしょう」


「内部情報を漏らしていいのですか?」


「情報を渡されるということは、こちらの裁量で使っても良いということです。それとも、私が人物眼のない女だと笑いものになる方がお望みでしょうか?」


「そうならないよう、努力はします。しかし……」



 虫の群れともなれば、相手は数百を超えるはず。まともに戦っては到底対処しきれまい。何かしら特殊な方法での対応が必要になるだろう……ひとまず依頼に関しては保留とし、知り合いに対処法の意見を聞いてまわることにした。



「うーむ、虫の巣でやすか……パッと思いつくのは燃やしちまうことですなあ。こんだけでけえなら巣も相応にでけえ。遠くからでも見つけられるはずでさあ」



 借りた虫の頭を手に、ひとまず最初に意見を聞いたのはウーベルト。直営酒場で飲んでいた彼からは、燃やすという単純明快な回答を得た……しかし場所が製材所であるというのが問題だ。



「延焼の危険があるとすれば?」


「まあ、それは場所次第でさあな。燃える物をどかすって手もありやすし、時間をかけて良いなら、周りに土か何かで壁を作るってのもありでやすが……巣そのものを見てみない限りはなんとも言い難いですなあ」


「偵察して準備を整えては二度手間なので、出来れば一度で決めたいのですが……」


「まあ、手間を省くに越したことはねえですが、手間を惜しむべきでないって所もありまさあ。ところでそう言う話が来てるんなら、あっしの事も忘れねえで下せえよ? 息子に探検土産をねだられてるんでさあ」


「まだ検討中の段階なので……請けるなら声はかけますよ」



 ウーベルトの家庭再構築はうまく進んでいるらしい……だがそれはそれとして。彼の案を実行にするには人手が必要になるだろう。場合によっては木工組合の人員を借りられるかもしれないが、戦闘に巻き込まれる危険もはらんでいる。ひとまずウーベルトに奢った酒の代金を支払い。次の知り合いの所へ向かった。



出費


ウーベルトの酒代 銀貨1





「え、これ本物の蜂なんですか……? 何これ怖いです……」


「私も怖いです。なのでどう対応したものかと」



 訪れたのはイルヴァの家。以前火炎の魔法を使っていたこともあり、戦力として期待できるのではないかと考えたのだが……



「うーん、蜂……普通の蜂と同じなら、女王を殺せば後は勝手に全滅するんですけど……」


「そこに行くまでに無数の蜂を突破しないといけないのが……」


「どうでしょう。もしかしたら女王1匹だけかも……」


「そうなんですか?」


「この時期は女王だけが冬眠から覚めて、巣作りを始めるんです……まだ卵を産み始めたばかりだから、巣の守りも……」



 イルヴァの言う通りだとすれば、既に仕留められた一匹が女王だったという可能性もある。もしそうならば、今回の依頼は既に目標が倒されている楽な仕事と言うことになるかもしれない。



「あ、駆除に行くんなら私も行きたいです……なんか楽そうですし……」


「はあ……」



 確かに戦力として連れて行こうかと考えてはいたが、向こうから言いだしてくるとは思わなかった。彼女はどちらかと言うと家でゆっくりしていたいタイプの人間だと思っていたが……



「……また何かやらかして金欠ですか?」


「ええっと、その……どうしても見たい劇がありまして……」


「劇」


「それで、ちょっとダフ屋さんを……」


「ダフ屋」


「『放浪者ポルフィリオ』の最新作ですよ!? 毎回演出に一切の妥協無く、観客を舞台に引き込むそのこだわり! 40年間続く大人気作で、前作で監督交代による不安をもたれながらも見事それを払しょくした……」


「はい、はい……ではとにかく行くということで……」



 経緯はどうあれ、イルヴァも行くということで話はまとまった。これで放火手段に関しては心配しなくて良いだろう。後は当然、アルフィリアにも話をしておく……



「殺虫剤かぁ……」


「ええ、作れるのではないかと」


「うーん、虫を遠ざけるのなら作れるんだけど」



 地下の錬金術工房。テーブル大の板に掘られた溝へ水銀を流し、そこにオドを通すことで作られた式に沿って、草や鉱石、大気がマテリアに分解され、薬に再構築されていく。それらを小分けし、瓶詰や袋詰め、届け先ごとに分別……そんな薬の製造作業を手伝いながら、虫を倒す薬について尋ねてみた。イルヴァは女王しかいないかもと言っていたが、備えをしておくに越したことはない……



「遠ざけるだけで、死ぬわけじゃあないから……巣とか攻撃して襲ってきてるような状態だと意味ないかも。あ、でも濃度上げれば行けるかな?」


「巨人の時使った、発煙弾はどうでしょうか」


「確かに虫退治に煙でいぶすって聞くけど……あの煙は殆ど無害よ? だから気軽に使えるの。あと作るなら、刺された時用の薬かな」


「作れますか?」


「基本的に解毒剤は無いんだけど、痛みとか痒みとかに対処する薬と……あとは普通の傷薬で行けるかな。一応発煙弾も持ってって……他には何か要りそう?」


「森の中に入ると思うので、獣よけを」


「わかった、用意しておくわね。殺虫剤も何か考えてみる」



 一通り、話すべき相手とは話しただろうか。依頼を請け、日程調整をして買い出しを行い……後は出発の日を待つばかりとなった。



買い物


矢17本 銀貨17枚


今週も最後までお読みくださり、ありがとうございます。

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