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日常小話

それはよく晴れた日のこと

作者: くつぎ

 話したいことは、いろいろあるのです。

 それこそ、時間がいくらあっても足りないくらい、たくさんあるのです。

 いつも一緒にいても、聞きたいことや話したいことが、いくらでも湧いてくるのです。


「ねえ、ねえ」

「何」

「今日、すごくいい天気だね!」

「別に普通だろ」

「だってほら、雲一つない青空だよ!」

「そんなに珍しくもない」

「こういう日は洗濯物がよく乾きそうだよね!」

「感想が主婦だな」

「ええっ! じゃ、じゃあ! ひなたぼっこしたら気持ちよさそうだよね!」

「今度は猫か」

「うっ……だ、だったら! 君ならこういう天気だとなんて言う?」

「そうだなぁ」


 そう言うと、その人は窓から外をぼんやりと眺めて、やがて小さく口を開きました。


「……吸血鬼なら一発で昇天しそうだな」

「何そのちょっと切ない例え!」

「え、これ切ないのか?」


 きょとんとした顔で首をかしげながら、その人は私を見ました。

 目が合うと嬉しくなってしまって、思わずにまにまと笑ってしまいました。


「何笑ってんだよ」

「ん? やっぱり君と話してると、楽しいなぁって」

「わざわざ隣のクラスに来るほどかよ?」

「うん!」


 力強く返事をして見せたら、その人は少しだけ顔を赤くして、小さくため息をつきました。


「俺はお前といると調子が狂うよ」

「どうして?」

「なんかわかんねーけど、自分のペースが分からなくなる」

「それはきっと私のペースに合わせてくれてるからだね!」

「前向きか。振り回されてんだよ、どう考えても」


 その人はそう言ってから、もう一度窓の外を見ました。

 私も同じように窓の外を見てみたら、さっきまで雲一つなかった青空に、小さくて薄い雲が一つだけ浮かんでいました。


「あ、雲、出てきたね」

「そうだな」

「それでもまだまだひなたぼっこ日和だね」

「吸血鬼も昇天するな」


 いつもこうして、くだらないことばかり話してしまいます。

 けれど、いくら話しても飽きないのです。毎日、あの人と会うことで元気をもらっているのです。


「ねえ、ねえ」

「何だよ」

「好きだよ!」


 そう言ったら、その人は少しだけ顔を赤くして、小さくため息をつきました。


「……そんな毎日言わなくても、分かってるって」


 でもね、いくら言っても足りないのです。

 今日言っても、きっと明日も言いたくなるのです。

 君の顔を見ていると、話したいことや聞きたいことが溢れてしまうのです。

 

 だって、私は君のことが大好きなんだもの。



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