T型フォード2
家康は爆発と共に、現世に戻って来た。
「これは……難儀じゃのう」
ゴーストに事の次第を伝えた。
「もし、ライターがガソリンに引火して爆発するということを告げたとしよう。当然、ライターに火をつけるのをやめる。そうなった場合、おぬしは助かり、歴史が変わってしまう。それではダメじゃ」
家康はヘンリーにそう告げる。
「それじゃ、僕が成仏するのは不可能じゃないですか!」
「うむ、どうするか……」
しばらく考え、家康は結論に達した。
「おぬしらにまずわしが説明する。その後、わしがジッポに火をつける。これしかない」
壮絶な回答に、思わずポテトまで飛び起きた。
「爺ちゃん!それ本気?」
「そうですよ、他に方法はあるはずだ!何も無理に殺す必要もない」
「だめじゃ、歴史を変えてはいかん」
そういって、家康は浮遊体となり、時間を飛んだ。
残された2人は唖然とし、「うちの爺ちゃん、事件を解決するってよりは、未練を解消する方に偏ってるからさ」
とポテトはヘンリーに言った。
時間を越えて、家康は再度街に降り立った。
そして、フォードを見つけ、あとをつける。
そのフォードが、例のガソリンスタンドまでやって来た。
一人の男がガソリンを入れている。
ヘンリーが煙草を口にくわえた。
そして、ジッポを取り出すべく、胸ポケットに手を突っ込んだ瞬間、家康がやって来てこう告げた。
「君!ガソリンは揮発性で、今ここでジッポに火をつけたら爆発して死ぬけど、分かっているのかな?」
突然そう言われ、ぎょっとしたヘンリーは思わずライターをひっこめた。
「す、すんません」
煙草をくわえながら、ヘンリーは言った。
「分かってないな!君みたいなのは、実践しなければ分からない」
家康は無理やりフォードに乗り込んで、ヘンリーのジッポを奪おうとした。
「あ、あんたなんなんだ!」
もみ合いになる。
家康はなんとかジッポを奪い取り、火をつけようとしたが、ヘンリーに殴られ、ジッポを落としてしまう。
「くっ、まずい!」
そのジッポを拾おうと、車から降りたが、同時にヘンリーも車から降り、走って逃げていく。
「まてっ!」
浮遊体の方が身軽なため、すぐにヘンリーに追いついた。
「うわっ、あんたなんなんだ!」
またしてももみ合いになる。
「うおおおおおお!」
後ろから棒を持った男が家康に殴り掛かった。
ヘンリーの同乗者である。
ドゴッと後頭部を強打された。
「うぐっ」
浮遊体にヒビが入った。
(まずい、最悪のことになるぞ!もしこの2人が生きてしまえば歴史が変わってしまい、そうしたら俺は罰として現世には戻れず成仏してしまう!)
「うおおおおおおっ」
男は振りかぶり、全力で殴って来た。
ドガアッ、と地面に棒がたたきつけられる。
「あ、あぶないっ」
家康はどうにかそこから抜け出し、そのまま逃げて行った。
「まずいことになった」
ヘンリーはまだ生きている。
そして、歴史が変わりつつある。
しかし、家康もまだこの時代にのこっていて、チャンスは残されていた。
ヘンリーを殺す。
でなければ、成仏してしまう。
まさかヘンリーをこの手で始末しなければならなくなるとは、思わぬ展開になってしまったが、やむおえない。
「どの道、死なねばならぬ運命なのだ」
その時、現世のポテトから連絡が入ってきた。
「じ、い、ちゃ……」
「どうした!」
向こうから聞こえてきたのはゴーストのヘンリーの声だった。
「そのまま逃がせ、さもなくば、この子供に憑りつき、殺す」
「な、なんだとお!」
家康は困惑した。
このままヘンリーを生かさなければポテトは殺される。
しかし、もしこのままヘンリーを生かせば、ルール違反で自分が成仏してしまう。
「なんて状況だあっ!」
家康はキレた。
物陰に隠れていたが、飛び出して車に乗ろうとしたヘンリーにとびかかった。
そして、渾身の力でヘンリーに襲い掛かり、首を絞めた。
「うっ、ぐうっ」
ヘンリーはそのままぐったりと倒れ込んだ。
「ヘンリー!きさまーーーっ」
同乗者に殴られ、浮遊体はもろくも崩れ去った。
ポテトは目を覚ました。
「爺ちゃん?」
そこに家康の姿はなく、ヘンリーの姿もなかった。
ヘンリーは自分の死因を知り、成仏した。
また家康も、死ぬはずだった同乗者を生かし、それによって歴史が変わってしまったことでルール違反とし、成仏したのだった。
夏休みは終わった。
自由研究のレポートを出し、またいつもの日常に戻った。
「爺ちゃん、また会おう」
そう言って、ポテトは倉庫の棚に銀の十字架をしまった。
終わり
終わったw
もうちょい広げられたとは思いますがw