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T型フォード

「そういや爺ちゃんさ、1900年代ってどんなんだったん?」

ある日、ポテトが聞いた。

「そうじゃのお、日本では大政奉還後、明治に入り(1860年くらい)、それからしばらくして世界大戦に突入(1910年くらい)。世界経済の中心はアメリカで、リンカーンの奴隷解放宣言があり(1860年くらい)、労働者不足に陥ったアメリカは、世界から移民を受け入れ始めたのじゃ。この前のコロンビア号も、あれに乗ってアメリカンドリームをかなえるべく、期待を寄せて旅立ったものが多かったであろうよ。そして、力の根源が蒸気から電気に推移し、それによって生産性の向上、産業革命が起こるのじゃ。当時のモノクロ写真を見れば驚くじゃろうよ。街には自動車が走り、高層ビルが立ち並ぶ。今のアメリカの景観はすでにこの時代にはできあがっていたのじゃ。1900年代から1920年にかけてはまさに絶頂期だったのじゃが、1930年には世界恐慌に陥ってしまう」

「爺ちゃん、終わったら起こして」

「おいっ!」


ポテトは自由研究のテーマである、幽霊、についてのレポートをまとめていた。

1、うちのひい爺ちゃんは幽霊で、アンティークに取りついたゴーストを成仏させるのが仕事です。

2、爺ちゃんは、そのゴーストの生きていた1時間前に戻れます。そこで、未練を解決して、成仏させます。

3、爺ちゃんは浮遊体っていうのになって、時間を飛びます。浮遊体はモロいので、ナイフとかで刺したら破裂して、現世に戻ってしまいます。また、向こうに行けるのは2回だけって言いうルールがあります。


「できた!」

ポテトは仕上がったレポートを机の上に乗せて、ゲームを始めた。

「おい、そろそろアンティークショップに行くぞ」

爺ちゃんが急かしてくる。

「やだよ、もう自由研究終わったし、なんで行かなきゃいけないの」

今ポテトはドラ○エビルダーズという、最近出たゲームにはまっている。

「お前が行ってくれんと、どうにもならん!」

爺ちゃんはとうとうキレて、憑りついて殺そうとしてくる。

「ぐっ、ぐるじいよお……わがっだよお……」

やっと憑りつくのをやめた。

「ぷっは、はあ、はあ……こ、今回だけだよ?」

爺ちゃんは、

「分かればいいのじゃ。さあ、行くぞ!」

と言って、ポテトより先にショップに向かっていった。


「簡単そうな依頼にしてね?」

ポテトが聞くと、

「ちょっと待ってろ」

と言って、ショップ内を散策しまくる。

「見つけたぞ、ポテトよ。あれじゃ」

そこに指さしたのは、ジッポライターであった。

「高いよこれ、1万もするじゃん、買えないよ」

「そうか?では、こうするのじゃ」

爺ちゃんはポテトに耳打ちしてきた。


ポテトが店員にこう説明する。

「すいません、このライターに幽霊が取りついてるみたいなんで、ちょっとお祓いするので借りてもいいですか?」

店員がいぶかし気な視線をよこし、ポテトに向かってこう言った。

「君、あんまりおちょくったらいけないなあ、面白いとは思うけど、ここにあるものは商品だから、お金は払ってね」

「ちょっとこれ握ってみて」

ポテトは銀の十字架を渡す。

全く事情を飲み込めない店員だったが、渡された十字架を手にとってみる。

「で?これでどうなるのかな?」

すると、店員の目の前に、ジッポに宿ったゴーストが現れた。

「ハロー」

「っぎゃあああああああ」

店員はそのまま泡を吹いて気絶した。


2人は公園にやってきた。

「持ってきちゃったけど、いいのかな?」

ポテトがジッポをベンチに置いてつぶやく。

すでに何やらゴーストと爺ちゃんが話をしていた。

「分かったぞ、今回の依頼は自分が何で死んだのか、それを知りたいらしい」

どうやら、そのゴースト、自分がどうやって死んだのか分からないまま死んでしまったらしいのだ。

「なるほどね、じゃ、僕は待ってるから、よろしくね」

ポテトはベンチに寝転がって目をつぶった。

「ったく、まあいいわい」

家康はそのまま、ジッポに宿ったゴーストの生前1時間前に向かった。


時代はアメリカ。

どうやら街の中に降り立ったらしい。

高層ビル、そして街中を電車が走る。

「ゴーストの話では、確かT型フォードに乗っていて、記憶はそこまでしかない、とのことじゃったな」

この時代、そこまでたくさん車が通っているわけではない。

家康は身軽な体で、街中を飛び回った。

すると、向こうから車が一台やってきた。

中に乗っている人物は2人。

その助手席の男がまさにジッポのゴーストその人であった。

「しばらく後をつけよう」

そう言って、家康はフォードの後をつけて行った。

そして、フォードはスタンドに車をつけた。


その当時、フォードの普及により、街の数か所に簡易スタンドのようなものが置かれた。

使用者は金をそこの管理人に払い、決まった量のガソリンを貰い、自分で入れる、というセルフ方式である。


懐中時計を見やると、あと1分を切っていた。

家康がフォードに近づく。

すると、ガソリンを入れていた男が助手席にいた依頼人の男に声をかけた。

「おい、ヘンリー、ガソリンをくんでるときにたばこはやめろと言ったろう」

依頼人はヘンリーと言う名らしい。

「一本くらいいいだろ」

ヘンリーはジッポに火をつけた。

ドオオオオオオン、という音と共に、浮遊体は砕け散った。



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