コロンビア号2
「ウワアアアアアアッ」
コロンビア号は突如として、地獄と化した。
船が割れ、船首にいたものはみな海に飲み込まれた。
そして、残り半分の船も、まだ海の上残って入るものの、縦方向に残っている状態のため、デッキの上の人はみな海に投げ出されてしまったのだ。
投げ出された家康は緩やかに落ちていく中で思った。
「ゲーム、オーバー」
ロバートは海に投げ出され、低体温症で死んだのだろう。
海に投げ出されれば、もう引き合わせることは不可能。
いや、すでにこの世界に来たときから詰んだ状況だったのだ。
海にたたきつけられた浮遊体は、衝撃に耐えられずに破壊された。
「ワシとしたことがっ」
家康は現代に戻って来た。
「爺ちゃん!ダメだったの?ゴースト成仏してないよ」
ポテトは家康に向き直って、がっかりだよ、という顔をした。
「お前がやるか?ポテトよ」
しわがれたいつもの声で言った。
「もう一度トライじゃ。だが、実際に引き合わせるのは難しいという結論に達した」
家康は状況を説明した。
「それは、確かに難しいですね。私なら彼女に会えば一目で分かるけど、他人に容姿の特徴を説明しても、それを100パーセント伝えるのは難しい」
ゴーストは言った。
当時ロバートは泥酔していて、おそらく使い物にならない。
「1時間と言っても、実質30分じゃ、引き合わせるのは物理的に難しいのう。浮遊体を何度も形成はできん、次がラストチャンスになる。何度も過去にアクセスすれば、ひずみが生じてしまうのじゃ」
家康はそう言って、腕を組んだ。
「とりあえず、行ってみる?」
ポテトが能天気に言う。
「馬鹿者、話を聞いてなかったのか」
「そういえば、コロンビア号って映画で見たことあるよ。ロードショーでやってたけど、僕はほとんど見なかったけどね」
それを聞いた家康は、
「本当か!フィクションの世界だが、何かの役に立つか」
と言った。
家康は、映画を見た後に、情報を整理した。
まず、映画は実話をもとに作られているため、かなり正確な内容である。
事件は氷山の衝突によって引き起こされる。
これは1時間前では回避できないし、何より歴史を変えてしまうから、振れることはできない。
次に、映画に出てきた登場人物。
貴族と一般市民の恋を描いたもの。
どうやらこれも実話らしい。
一般市民は画家で、実力は相当に高いようだ。
家康はここでひらめいた。
引き合わせるのができないのなら、この画家に彼女の絵を書いてもらえばいい。
確か有名な女優に似ているとの話だった、
問題は、30分でそんな絵が描けるのか、そして、この男に会うことができるのか、だ。
ロバートはバーにいる。
絵は渡すことが可能だ。
だが、画家はどこにいる?
事件当時、画家がどこにいたのかを家康は探ることにした。
「無理じゃな」
家康は言った。
物理的に時間が足りない。
何とか見つけたところで、まず、画家も相当にテンパっている。
加えて、そんな状況で絵を書いてください、これはないだろう。
「だがゴールは見えた。泥酔してるロバートに、女優のちょっと幼くした感じの絵を見せればいい」
ゴーストは、
「それで、僕が納得すればいいですが……」
と言うも、
「贅沢を言うな!もはやそれしか手はないのだ!」
と家康は吠えた。
「爺ちゃん、でも、それってかなり現実離れしてない?」
「考えるのじゃ、30分で絵を準備する方法を」
「わしが書くしかないの」
まさかの結論に達した。
「画材はある。あとは、そのグラディスクーパーとやらの顔を覚え、それに若干脚色をし、おぬしに見せる」
……爺ちゃん、無理があるよ。
「無理だよ、他の方法を考えようよ!」
「いや、望みはある」
家康がゴーストの顔を覗き込んだ。
「確か、泥酔してるんじゃったな?」
「は、はい」
「そんな状況でまともに絵を評価できると思うか?」
家康を除く2人は、ウーン、と言った。
名案も出なかったため、その作戦でいくことになった。
家康は、再度浮遊体になり、時間を飛んだ。
タキシードに黒マントを羽織り、黒髪セミロングのテンパー野郎がコロンビア号に再度降り立った。
ダッシュで家康は1等客室に向かった。
113号室、映画ではそこで絵が描かれていた。
「あった!」
画材を発見し、即座に筆を執り始めた。
時間がない。
とにかく、下書きを済ませ、即座にキャンパスに絵具を塗りつけていく。
ザザザッ、ザザザッとはみ出してもいい、と言わんばかりの筆さばきだ。
そして、
「できた!」
懐中時計がさすタイムリミットまで、あと10分。
その勢いのまま、バーに向かう。
「うおおおおお」
家康は全力疾走し、バーにたどり着いた。
バーは1等客室の反対側にある。
「ロバアアアトオオオオ」
いきなり自分の名前を呼ばれ、釣銭の1セントを思わず落とす。
「だ、だれでしゅかあ?」
だいぶ飲んでいる様子だ。
「これを持っていろ!誰が何と言おうと、おぬしの彼女だ!いいな!」
「ひゃ、ひゃい~」
現実に戻って来た。
ポテトが家康に向かって親指を立てている。
「うまくいったみたいだね!」
続き書くかわからないですw
ロバートが納得したのかどうか、永遠にわかりませんw
さっき気づいたんですが、2等客室から1等客室に行くのは簡単なので、彼女はどうしてバーに行けなかったのか?
恐らく周りの客に促されて、デッキに上がったんでしょう。そして救助されたのかも