プロローグ
物語の主人公、雨衣 歩手都は、中学3年生。
夏休みの自由研究で、「幽霊」の研究をすることにした。
ポテトの実家は、代々伝わるエクソシストの家系だった。
しかし、その歴史は途絶え、ポテトの親父は公務員をしている。
実家にはでかい蔵があり、ポテトはそのエクソシストにまつわるアイテムを探していた。
「どっかに、それっぽいものねえかな~」
出てくるのは昔の本や、もう絶対使わないであろうテーブルやら、タンスだ。
しかもかなりホコリっぽい。
「物置みたいになってるなぁ」
そう言って、試しにタンスを開けてみる。
「お、なんかそれっぽいもの、見っけ」
中から出てきたのは銀色の十字架である。
ポテトはそれを手に取った。
「へえ、これでじいちゃんはドラキュラでも退治してたんかな?」
「馬鹿言え」
背後から声がした。
ポテトが振り向くと、そこには見たこともないジジイがいた。
「だ、誰だおめえ!」
「口の悪い小僧だな、わしは雨衣家康、おぬしのじいさんの、更にその親父じゃ」
要するに、ひい爺さんか。
よく見ると、なんか透けてる。
「ひい爺さんの幽霊?」
あ、これ夢だ、ポテトはそう思い、
どうせ夢なら適当に話を合わせるか、と思った。
「そうじゃ、お前の親父がエクソシストを継ぐのを放棄したせいで、退屈な日々を30年以上も続ける羽目になったが、小僧、よく見つけてくれた。これで退屈せずに済む」
「じゃ、ひいじいちゃん、俺の自由研究に協力してくれよ」
ポテトは概要を説明した。
「はっはっは、それは都合がいいわい、わしの仕事がそのまま自由研究にもなるから、一石二鳥じゃな」
「じゃあさ、何したらいいの?エクソシストってやつは、一体何をするの?」
「わしの仕事はそこいらのエクソシストとはまた違うのじゃ、アンティーク専門のエクソシストをしている」
爺さんは何やら説明し始めた。
「アンティークには100年単位も昔から取りついてるゴーストがいて、こういうゴーストどもは中々成仏してくれないのじゃ。わしらがどうやってそれを成仏させるかと言うと、そのゴーストの死ぬ1時間前に戻る、つまりは過去にタイムスリップし、ゴーストの未練を解消してやるのじゃ」
ポテトは、こらえ切れずあくびをした。
「おい、貴様」
「だって、何言ってるか分かんないんだもん」
爺さんは額に手を当てて呆れた様子だ。
「なら物は試しじゃ、アンティークショップに行くぞ」
「えー、ここら辺にあるかなあ」
「母親にでも聞いてみろ、とにかくその十字架を首から下げろ」
そう言われ、しぶしぶ首に下げた。
フワフワとポテトの背後を爺さんがついてくる。
道路を歩いているが、周りの人間には見えないようだ。
「母さんに聞いたら、ここら辺にあるって話なんだけど……」
ポテトは駅前の近くの商店街に来ていた。
「あれかも」
アンティークの家具や雑貨を置いてある、ショップを発見した。
「ワクワクするのお、ゴーストども、首を洗って待ってろ」
爺さんはそう言って、刀で斬るそぶりを見せた。
中に入ると、家具をはじめ、いろいろな雑貨が置いてある。
「ひい爺ちゃん、俺、霊感ってあんまないから、ちょっと選んでよ」
爺さんは、ちょっと待ってろ、と言って棚を通り抜けて向こうを見に行った。
そして、しばらくすると戻って来た。
「見つけたぞ、1セント硬貨があそこに置いてある。それを買って来い」
ポテトは1セント硬貨の置かれた机にやって来た。
「これって売り物なの?」
「知らん、だが、その硬貨にゴーストが取りついている」
え?どこどこ?と振り向くが、全く何も見えない。
「エクソシストの末裔が、情けない」
また額に手を当てている。
ポテトは店員に言って、その硬貨を貰ってきた。
売り物ではなかったが、そんなに欲しいなら、ということで貰ってきた。
公園で、
「どうしたらいいの?」
と聞いてみた。
「その十字架を握ってみろ、お前の霊感にわしの霊感が上乗せされる。それでゴーストが見えるはずじゃ」
ポテトは十字架を握った。
すると、靄のようなものが見え、それがはっきりと形になり、ゴーストらしきものが見え始めた。
「うわっ」
ポテトは驚いてしりもちをついた。
ゴーストが話しかけてきた。
「あなたは?」
「わしは、エクソシストじゃ、おぬしの未練を断ち切るのが仕事じゃ。まずは、何で亡くなったのかを聞かせてもらおう」
ゴーストはいきさつを説明し始めた。
そのゴーストは、1913年に、コロンビア号と言う豪華客船に乗っていたらしい。
その船の処女航海で、沈没し、亡くなったとのことだ。
名前はロバートと言う男だった。
「じゃあ、ロバート、おぬしはなんで成仏できなかったのじゃ?」
「僕は、ある女性と一緒に来ていたんですが、死ぬ間際に彼女の顔を見たかった」
そう言った。
爺さんは耳打ちしてきた。
「わしが過去に戻る際に、浮遊体、という状態になるが、その体は1時間しか過去ではもたんのじゃ。その1時間で、男の望みをかなえてやらねばならん。ちなみに、大きく歴史を変えたり、本人が死ぬはずだったのに、その行動のせいで死ななかった、ということはあってはならん」
ポテトは、
「え?なんでダメなの?」
と聞いたが、それがルールなのだ、と言われた。
「じゃあ、わしは浮遊体になって過去に向かう、それまで待っておれ」
と言われたので、ポテトはおとなしく待っていた。
爺さんはどこかに消えた。
爺さんこと家康は、1913年のコロンビア号にタイムスリップしてきた。
「久しぶりの浮遊体だな」
そこには、見た目は20代半ば、と思われる若者がいた。
浮遊体は、自分の意思で好きなように形作ることができる。。
「早くロバートを探さないとな」
ゆるーく行きます