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序
私はグィネヴィア。
幽霊を意味します。
聖王国ストウベリの王の娘に生まれました。
しかし生まれつき魔力持ち。
それも最大規模の――魔王と言われる代物です。
ゆえに疎まれて、塔の中。
幽閉生活は長く単調でした。
私はただ静かに祈って暮らしておりました。
死をもたらす勇者のおとずれだけを待って。
名は体をあらわすと言いますけれど、まさしく。
私は幽霊のようなものでした。
けれど今日。16歳になり、思い出しました。
前世の断片的な記憶――今と同じように不自由で孤独な誕生日に死んだことを。最期にもっと生きたいと願ったことを。愛し愛されることを知りたいと望んだことを。
殺されてなどやるものですか。
何も知らず何もなさず死ねはしない。
恋のひとつくらいしてみたいものです。
そうと決まれば――出発です。
皆様、はじめまして。
時枝いざなと申します。