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嘘斬り姫と不死の怪物  作者: Hiro
強欲の王
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第三章 二話b

「まさか、どうしておまえがどうしてその術を!」

「ははっ、我こそはドロス。国を奪われた哀れな王よ。だが今はワシは新たな力で世界を手にする真の王となる」

「ドロスだと、あのハゲ王か!?」

「誰がハゲじゃ! なにその腕輪は……まさか『愚者の黄金』か。貴様それをどこで手に入れた」

「こいつは一〇〇年前からオデ様のもんだぜ、嫌われ王!」

 トールは自らが奪った国の前王に言ってのける。

 ドロスはトールに王座を奪われたあと、その後も権力の一部を維持したままトールの側にいた。そして、トールの魔術の才に舌を巻きながらも、自らもその術を模倣し力を得ていた。そのことにトールも気づいていたが、自らの下についた者が力をつけるのを止めはしなかった。どちらにしろ、自分が相手を上回ってればよいと考えたのである。弱肉強食はトールの望むところであった。

 トールは魔術の塔崩壊後、臣下はみな魔物となり、知能を失なったと思っていたがそうではなかった。ドロスがハズーの王として君臨した詳細まではわからないが、かつてトールが王として成り上がったことを、黒森妖精ダークエルフとなったドロスが行ったとしても不思議ではない。

「考えてみりゃ、噂が外にでている時点で生き残りがいることは確定してたのか」

「はははっ、久しいな強奪者よ。聖騎士パラディンに討たれ死んだものと思っていたぞ」

「はっ、生憎とオデ様は不死身なんだよ。それよりズリーぞ、てめぇだけ格好いい姿に変わりやがって」

「貴様は相応の恰好に変貌したな。お似合いだぞ。されど、これ以上貴様に構っている暇はない。大人しく地獄にいけ!」

 トールを地獄へ送ろうと、両手のうちに魔力を集中させるハズー王。

「そうはさせん!」

 そこへ、スミが騎士の姿となりハズー王に斬りかかる。だが、無言のレーヴェストが半分に折れたままの『確殺カース』を用いてそれを阻む。

「ちぃ、じゃまだ!」

「『暗黒装衣ダーククロス』」

 レーヴェストは自らの秘奥義を惜しげもなく使い、スミの迎撃にあたる。彼女の身体を闇の触手が覆い、敵対者であるスミに襲いかかる。

「なんと貴様までいたとはな。聖騎士よ、いかなる理由があって自らが刃を向けた男と行動を共にする」

「貴様の知ったことではない」

 ハズー王を狙うスミであるが、レーヴェストの守りを突破することができない。

「遅いと言ったろう。すでに魔力供給は始まっている。いかに貴様といえど、いまのレーヴェストを倒すのは容易ではあるまい」

 レーヴェストから闇の触手が無数に伸び、スミに襲いかかる。触手はスミの剣で払われるとすぐに散るが、すぐに再生されてしまう。魔力を帯びたレーヴェストの動きは、以前よりも格段に向上していた。

「くくくっ、女相手に苦戦をしているようじゃな聖騎士よ。それともなにか、大義がなければ女は斬れぬか」

「だまれ外道が」

 言うもレーヴェストの攻勢をスミは押しかえすことができない。

 ドロスはスミからトールへと視線を移すと、手にしたコインをさらしてみせる。

「簒奪者よ、これがなんだかわかるか?」

「なんだそりゃ?」

 その手に掴まれたコインはトールの知識をもってしてもわからぬものだった。

「これが『真実の口』じゃよ。だが知らぬのも無理はない。これは魔具ではないのだからな」

「魔具じゃないだと。まさか?」

「そう、神の力を得る神具だ。長年、神具を宿したこの娘の身体には、異空間に封じたレーヴェストなど、比べものとならん魔力を蓄えられる。暴走する心配もなく、その身を魔に堕とすこともない。まさに選ばれし聖女よ。もっとも、その清らかすぎる身体に触れれば、並の人間はみな死に絶えるがな」

 種明かしをするようにドロスが語る。

「長年、神具を身体に封じていたせいで、魔力に対する容量が大きくなったのであろう。その娘の魔力は人の身としては大きすぎるほどだ。魔女と呼んでも差し支えがないだろう。だがそれでも神具を常時発動させるには魔力が不足になる」

「魔力の消費を抑えようと、無意識のうちに自分で目を封じてたっていうのか」

「それだけではない。足りぬ分を補うために身近な人間から頻繁に奪っていたのだ。無意識とはいえ罪なことだ。

 特に僅かでも身に危険を感じると、過剰に接触者から魔力を吸収する。例え魔術を使わぬ者でも魔力を奪われれば、勘も体調も悪くなる。必然的に運が悪くなると感じることじゃろうて。ただそれだけのことで普段起こらぬことが起こりやすくもなる」

「たかだか嘘を見抜くだけの道具にそんな魔力は必要じゃねーだろ」

 トールはドロスの説明を否定する。

「嘘を見抜くだけではない。その口は嘘を撤回し真実を吐かせることを要求する。無論強い意志をもてば逆らうことも出来よう。だが、並のものにはそれは敵わぬ」

「けっ、まるで趣味の悪い呪いだな」

「ああそのとおりだ。だが神の所業など、人間にとっては呪いも同じ。それは身をもって知っておろう?」

「はっ、テメーとはいらねー場所で気があうぜ」

「クククッ」

「だが、つまり神具を取り除いた今なら、あいつは上手いことハッピーエンドを迎えられるってんだ」

「それはおまえがワシに勝てたらの話だ。魔王の剣と接続され、多大なる魔力を得ているワシが、岩鬼人トロールとなった貴様ごときに負けるわけがあるまい!」

「はっ、そりゃこっちの台詞だ。

 てめーごときがラスボスとは肩すかしもいいとこだぜ。一瞬で捻ってやる!」

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