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嘘斬り姫と不死の怪物  作者: Hiro
偽りの救世主
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第二章 七話b

 しだいに時間が経過し日が落ちていく。あたりが暗くなるにつれ、死竜の力が活発化していく。トールも夜を好む岩鬼人の身体をもっているが、闇との相性は動く死体には及ばない。

 振り下ろされる死竜の前足をかわすトール。だが、その威力が大きすぎたために足元が崩れる。バランスを崩したトールに、太い尾による追撃が飛んでくる。

「ずびゃっがぁ!」

 竜の尾は近くの巨木もろともトールの身体を打ち付ける。

 全身を強打されたトールが大量の血を吐く。だが、それでも命に別状はなく、それどころかスミが回復魔法を使うよりも早く再生した。

「すご~い。それも魔法?」

 観戦していたピキがトールの回復力に驚きながらも感心する。

「トールの回復力も魔力の影響を受けているから、魔法の一種といえるだろうな。だが通常の魔法ほど自由に扱うことはできはしない」

「見てないで、おまえもちったぁ手伝え」

 隠れているだけのピキにトールが文句を言う。

「マスコットは戦闘には参加しないものなのだ~」

 もともと戦力になると期待してなかったので、すぐに死竜に意識を戻す。

「この腐れ竜め、頭きたぜ。こうなりゃとことん破壊してやんぜ。そんでもって、てめーの肉で素敵にステーキ祭りだ!」

 そう宣言すると、ズボンから鍵型の魔具を取り出し掲げる。

「鍵よ、虚空の封印を解け」

 鍵は命令語に従うように浮かび上がると空中に扉を出現させた。そして鍵穴にゆっくりさしこまれ、回転すると錠が開く音がし、両開きの扉が開かれる。

「王命に応えろ我が流血の騎士! 万槍を使いて敵を討ち滅ぼせ」

 トールが長い命令語を唱え終わると、扉から月光を反射する水晶クリスタルの騎士たちが現れる。

「喰らえっ『血まみれの騎士団(ブラッディーナイツ)』!」

 長槍に大盾と甲冑で身を固めた生命なき騎士たちが、一糸乱れぬ隊列を組み死竜に向かい突撃を開始する。

 勢いよく突き出された長槍が竜の鱗を突き破る。死竜の巨大からすればその傷は小さなものだった。だが、その数が多く、たちまち小さな傷が重なり合い、大きな傷へと押し広げていく。

 死竜は爪と尾を振るい、水晶の騎士たちを破壊する。破壊された騎士は粉々に砕けると光となって消えた。

 だが、際限なく現れる騎士たちに、さすがの死竜もついには押し切られる。鱗を剥がされ、肉をちぎられ、骨を砕かれる。そして、とうとう完全に動かなくなった。

「はははっ、みたかオデ様を怒らすとこうなるんだ」

 完全に活動停止した死竜を前にトールが勝ち誇る。

「岩鬼人のおじさん、すっごーい」

「あー、しかし疲れたな」

 召喚した水晶の騎士たちを消すとトールはその場に座り込む。

「あれ、魔具って魔力使わないんでしょ?」

「ほとんど使わないだけであって、まったく使わないわけじゃねー。でもって、オデ様の魔力でもこれをやるには疲れる。もうちょっと月が丸ければ別だけれどな」

「へー」

 ピキはそのことを聞きながら別のことを考えていた。

「(魔力が減ってるなら、ひょっとしておじさんの回復力も落ちてるのかな?)」

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