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嘘斬り姫と不死の怪物  作者: Hiro
偽りの救世主
30/50

第二章 五話a

「死ねよ」

「死になさい」

「死・ん・で♪」

 見事、街に侵入したトールだったが、情報収集の結果は散々だった。

 スミと別れ、女性相手にナンパまがいの情報収集を行ったのだが、痛烈な言葉はトールの強靱な生命力すらも尽きさせようとしていた。

「女こえー、女こえー」

 情報収集を早々に切り上げると、トールは待ち合わせの酒場で酒をあおっていた。

「やっぱり人間顔だな」

 今は借り物の姿とはいえ、岩巨人に戻ったところで醜悪な姿なのは変わりない。むしろ、普通の人間にとっては今の姿の方がマシであろう。目の不自由なアヴェニールや屈強な戦士であるスミと一緒だったために、その事を完全に失念していた。

「ブ男が生きる場所は、やっぱり灰色の森(グレイ・フォレスト)しかない」

 そんな風に考えるほどトールの精神は追い詰められていた。

「そうだな、あの男女は捕まえたら、目潰して飼うのがいいな、うん、そうしよう。そんでもって、逃げられないようにしっかり鎖でつないでおけば万全だ」

 泥酔しながら呟く。そこへやってきたスミが声をかける。

「何を危険な発言をしてるんだ、貴様は」

「おうスミ、戻ったか……って、この裏切りもの!」

 トールは腕輪を星形槌モーニングスターに変形させ殴りかかる。スミがトールの攻撃を回避したために、近くの机が砕け散った。

「いきなり何をする」

 トールがスミの襟首を掴み締め付ける。

「このロリコーン、裏切りやがって、なんだそのロリロリした幼女は! そんなにツルペタが好きか、通報されたらどうするつもりだ!」

 酒場にやってきたスミの横には、ピンクの衣装を着た十歳前後の子どもが立っていた。スカートは細い太ももが丸見えになるほど短く、淡い色の長い髪を高い位置で二つに結わいている。

「おちつけ、錯乱して言ってることが意味不明だぞ」

「その角であれか、紙上で言えない場所を貫くつもりだな。そんでもって、泣き叫ぶ子どもの傷を癒やして何度も何度も貫くとは、まさに鬼畜だなおまえは!」

「誰がそんなことをするか! そもそもだなぁ……」

 スミは餌にありつけない狼のような目をしたトールを、なんとか落ち着かせようとする。

 しかし、それはその子の口から出た言葉であらぬ方向へそれた。

「まあまあ、一角獣ユニコーンのお兄さんも岩鬼人トロールのおっちゃんも落ち着いてよ」

 その言葉に驚く。スミは自らの正体を明らかにしてない。なのにふたりは正体を言い当てられたのだ。

 驚くふたりを余所に子どもは自らの話を続ける。

「おじちゃんの心配は無用だよ。だってピキ、女の子じゃなくて男の娘(おとこのこ)だもん」

 その言葉の意味を解するまでの間、ふたりの時が止まった。

 しばしの沈黙を経て、言葉の意味を理解したトールが確認する。

「えっ、なにおまえ。男のクセにスカート履いてるの?」

 ピンクのひらひらした衣装を指して尋ねる。

「そうだよ。だって、ピキは魔女だから♪」

 どこからともなく取り出したステッキを手に、ポーズを決めるとウィンクをする。

「(オデ様が森に籠もってる間に、世界は変わったんだなぁ)」

 経過した時の長さをシミジミと感じるトールであった。

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