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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あれ、これって死亡フラグ?人生激変フラグ?【BL】

作者: 香翼瑠斗

玄関にある窓から眺める景色は、外の温度差のせいで半分程曇っていて決して眺めが良いとは言い難い。

しかも生憎の雪。しんしん降ってくる雪は、一層外の寒さを伝えてくる。

あーやだやだ。絶対外なんか行きたくないよ。どっこにも行きたくないんだよ俺は。寒がりな俺をこんな日に連れ出すだなんて拷問だよ、拷問。俺殺されちゃうよ。


「…(じん)。独り言もいつも通り平常運転でしょ。大丈夫、迅なら行ける。だから早く靴履いて」

「行けない。絶対行けない」

「行けるから。じゃないともっと悪化しちゃうよ?病院まで5分もかからないんだからさ」


そう言いながら無理矢理、俺に靴を履かせようとしてくるのは俺の兄貴。遥斗(はると)

そして先程の会話でお分かりのように、只今俺、絶賛風邪引いちゃってます。いえーい。

…いや、いえーいじゃないよね。

頭ガンガンするし視界がフーラフラ。今立ってるのもやっとの状態で、多分あと30秒ぐらいしたらぶっ倒れるんじゃないかな。

こんなんになってんならさっさと病院行けよ、って話なんだけどさ。寒いから行きたくないんだよね。冗談抜きで、家から出た瞬間に寒さにやられてそれこそ三途の川見えちゃうかも、だし。本当に寒いの苦手なんです。てか俺30秒たったのに倒れてないや。


今、俺と兄貴は静かに見合っていて、どっちが先に折れるか勝負している最中。

兄貴の顔をジーっと見合ってさぁ折れろ、さっさと折れろ、と念力をかけてみたりする。もちろん効くはずもない。

そんなことをしながら約十分。ふと兄貴の目つきが変わって、なにか閃きましたって顔になった。


「そうだ迅、お兄ちゃんすっげぇこと思いついたぞ!」


兄貴が自分のことをお兄ちゃんって呼ぶのは昔から。物心つくころにはもう定着してしまったらしい。正直、俺はやめてほしいけど。

だって、なんか気にしちゃうじゃん?

俺と兄貴は双子。なのにそんな一人称だとなんだかすごく自分が子供に思えてしまう。


「なぁ迅、お兄ちゃんに風邪をうつせ」

「…は?」


なんだいきなり。どーした兄貴。俺が考え事してる最中に火星人に洗脳されたか。そーなのか。

意味不明、理解不能な兄貴の言葉に呆然としていると、兄貴はなにを勘違いしたのかペラペラと流暢に語り出した。


「いいか、古来から風邪は菌を持った人と直接接触すると治ると言われている。だから今でも小説やら漫画やらドラマやらに使われているだろう?信憑性のないものは使われない、そうだろ?だからさ、迅もお兄ちゃんにキスして風邪をうつせばいいんだよ!」

「ゴメン待って、なんで最後そこに行きつくの」


俺の反論を聞かずに兄貴はじりじり迫ってくる。

ちょっとまって、本当におかしい。さっきまで普通にどこにでもいる変哲のない兄弟だったじゃん。なんでそんないきなりアウトーな世界に入り込んじゃうわけ。兄貴の脳内で一体なにがあったってんだ。


そんな俺の心境を知るはずもない兄貴はどんどん近づいてくる。


「待って待って、本当に待って!!どしたの兄貴!何があったの!いいよ、俺病院行くよ!だからそんなに近づかないで!」

「病院より、お兄ちゃんにうつした方が速いだろ?」

「そーゆー問題じゃない!」


いや、兄貴本気でどうしちゃったの。冷静にどうしちゃったの。もう既に俺の風邪がうつって頭パンクしちゃったの。

じりじりじりと詰め寄ってくる兄貴。もう顔は目の前。あぁああもうだめだろうな。一生に一度のファーストキス!紺野(こんの)迅!そこまで好きじゃない兄貴にあげちゃいますっ!




「っていう展開だったよね。風邪うつすって名目だったよね。どーして俺はお姫様抱っこされてゴートゥーベッドされちゃったのかな。兄貴、プリーズアンサーミー」

「お答えしましょう。それはですね、愛する迅くんがすっごくキュートだったからです!」

「…うん、おかしい。流石の俺もこの答えにはノリで返せないや」


会話どおりの事がおこってしまったのです。

目の前に迫ってきた兄貴に折れて、とりあえずフレンチキス?したのはいいけども、調子にのった兄貴がまさかまさかの舌を入れてきたという、ね。

そして俺の力が抜けたところを見計らってお姫様抱っこされて兄貴の部屋に着ちゃったわけなのです。


どーしてこんな展開になってるのか。そんなの俺が一番知りたいわ。

あれおかしいな。俺の回想、最初はすごく真剣に始まったよね?ね?なんでこんな展開になってんの。俺の人生シナリオってこんなんだったの。神様って不公平!!


「ねぇ迅、この展開になっても独り言呟いちゃうの?脳内は別ワールドに飛んでっちゃってるの?」

「あ、なんかごめん」


独り言癖は残念ながらここ数年で定着してしまった俺の欠点。今更直そうとは思わない。めんどうだし。


はぁ、とため息をつく兄貴に少々困惑。でも俺ってなんか悪い事したっけ。してないよね。そんな、ここはそのままの流れでアウトーな世界に入れ、なんて指令ないよね。あったら鬼畜すぎるよ。平凡な高校生に対して鬼畜すぎるよ。


「まぁとりあえず、これでお兄ちゃんに風邪がうつっただろうな!一件落着だな!」

「あのさ、本当にうつっちゃったの?俺楽になっちゃったんだけど」


さっきのキスの影響だと思うけど、なんだか身体が軽くなった気がする。

兄貴に悪いよな。


「うつったんだよ。まぁ、気にしないで」

「……兄貴、明日ってテストじゃね?」

「あ」


思い出したかのように呆然とする兄貴。そして急におどおどしながら俺にしがみついてくる。

もう一回キスして迅に風邪を戻そう!って訴えてくが、自分から風邪になろうとするバカはいないだろう

。しかも、兄貴がテストということはつまるところ俺もテストなわけで。成績落とす真似はしたくないってのは誰しも同じ。断ると、じゃあ無理矢理にでも、と言って顎に手かけられる。ちょっとドキっとした。


って、あれ、これって俺死亡フラグ?いや、人生激変フラグ?

あれれれれー?俺はいけない世界に踏み入っちゃたのか?

にこにこと笑いながら覚悟しろよ、と呟く兄貴に、覚悟できてないからまって、という俺の返事は聞こえなかっただろう。その言葉はもう、兄貴の口で塞がれちゃってるから。


おしまい

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― 新着の感想 ―
[良い点] 個性的でなおかつ萌えるキャラ設定 話の進み方が面白い 最後の終わり方がすごく良かった! [一言] シュタタタ…! 素早い速さで月姫さんがやって来ましt((( お兄ちゃん可愛い、じんくん押…
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